第53話 星灰連理
世界が光に染まる。
蒼銀。
灰銀。
二つの輝きが混ざり合い、第四層全域を覆い尽くしていた。
「――《星灰連理》」
その名が響いた瞬間。
空間そのものが震えた。
星空が広がる。
崩壊しかけていた第四層が、一瞬だけ静止する。
「っ……!」
星喰いの巨大な黄金眼が細まった。
『その術式……』
低い声。
そこへ、初めて“焦り”が混ざる。
『なぜ今代で再現できる』
ヒオリの身体を、星光が包んでいた。
背後には巨大な星輪。
そして。
隣には、灰銀魔力を纏うペケ。
二人の魔力は完全に一つになっている。
不思議だった。
まるで。
最初から、こうなることを知っていたみたいに。
「ぺけ」
「ああ」
視線が重なる。
言葉はいらない。
互いが何を考えているか、自然に分かる。
その瞬間。
星喰いが咆哮した。
『認めぬ』
巨大な闇が膨れ上がる。
『その結末だけは!!』
門の奥から、無数の黒腕が溢れ出した。
第四層を埋め尽くすほどの数。
「来るぞ!!」
ガルドが怒鳴る。
だが。
ヒオリは静かだった。
蒼い瞳。
その奥で、無数の星が瞬いている。
「――星よ」
蒼銀の魔法陣が広がる。
すると。
歴代封星巫女たちの残滓が、一斉に光へ変わった。
『お願い』
『終わらせて』
『自由にして』
涙みたいな声。
ヒオリの胸が締め付けられる。
「……うん」
小さく頷く。
「絶対、終わらせる」
その瞬間。
星光が解き放たれた。
轟!!
第四層全域へ、無数の星槍が降り注ぐ。
黒腕が次々と消滅していく。
『――ッ!!』
星喰いが苦悶の咆哮を上げた。
「まだだ」
低い声。
ペケが前へ出る。
灰銀魔力が、星光へ絡み付く。
そして。
巨大な“剣”が形を成した。
「うそ……」
セレスティアが目を見開く。
それはもう、人間の術式じゃなかった。
空を貫くほど巨大な星剣。
蒼銀と灰銀で編まれた、神話級の武装。
「これが……」
アステリアが震える声で呟く。
「古代最終術式……」
◇◇◇
星喰いの黄金眼が、ゆっくり歪む。
『何故だ』
『何故、そこまで繋がれる』
その声は。
怒りだけじゃなかった。
理解できないものを見る声。
すると。
ペケが静かに剣を構えた。
「簡単だ」
『……』
「今回は、一人じゃない」
ヒオリの胸が熱くなる。
その瞬間。
星喰いの周囲空間が歪んだ。
『ならば、共に壊せばいい』
巨大な闇が再び膨れ上がる。
門の奥。
さらに深い“本体”が動き出す。
第四層が耐え切れない。
「まずい!」
セオドアが叫ぶ。
「このままだと階層ごと消滅します!!」
だが。
フィアが静かに前へ出た。
『……今しかない』
白銀髪の少女が、ヒオリを見る。
『星核を斬って』
「星核……?」
『黒竜の中にあった核は、“外殻”』
フィアの蒼い瞳が門の奥を見つめる。
『本当の核は、あの奥にある』
その瞬間。
巨大な黄金眼のさらに奥。
闇の中心で。
“黒い星”が脈動しているのが見えた。
ドクン。
ドクン。
まるで心臓。
「……あれが」
ヒオリが息を呑む。
『星喰いの心臓』
フィアが震える声で言う。
『あれを壊さない限り、何度でも復活する』
静寂。
そして。
ペケが静かにヒオリを見る。
「行けるか」
ヒオリは少しだけ怖そうに笑った。
「ぺけは?」
「当然行く」
「なら」
蒼い瞳が真っ直ぐ彼を見る。
「大丈夫」
その瞬間。
灰銀と蒼銀。
二つの光が、さらに強く共鳴した。
星喰いが初めて、明確な殺意を放つ。
『……許さぬ』
巨大な口が開く。
世界そのものを喰らう深淵。
だが。
ペケとヒオリは止まらない。
二人は同時に踏み込む。
星剣を構え。
“星喰いの心臓”へ向かって。
そして。
門の奥から、無数の黄金眼が一斉に開いた。




