第46話 星霊共鳴
黒い閃光。
第四層全域を呑み込む破壊の奔流。
「っ――!!」
空気が裂ける。
地面が消し飛ぶ。
逃げ場はない。
「全員防御!!」
ガルドが怒鳴る。
だが。
誰も理解していた。
間に合わない。
あの一撃は、第四層そのものを消し飛ばす。
その瞬間。
「――星よ」
ヒオリの身体が、自然に前へ出ていた。
「ヒオリ!?」
ペケが目を見開く。
蒼銀の魔法陣が展開される。
今までで最大規模。
夜空そのものみたいな巨大術式。
そして。
星々が、一斉に輝いた。
轟!!
蒼銀と黒光が正面衝突する。
世界が揺れた。
「うそだろ……!」
レートが叫ぶ。
「止めてる!?」
だが。
ヒオリの表情は苦しそうだった。
「っ……!」
黒い光が強すぎる。
押し切られる。
その時だった。
背後から、暖かい魔力が重なる。
灰銀。
「……ぺけ」
「一人でやるな」
低い声。
灰銀魔法陣が蒼銀へ重なった。
瞬間。
二つの魔力が共鳴する。
蒼銀。
灰銀。
光が混ざる。
その瞬間。
第四層全域へ、巨大な星空が広がった。
「なっ……!?」
アステリアが目を見開く。
「完全共鳴……!」
世界が静止する。
時間すら止まったみたいだった。
そして。
蒼銀と灰銀が重なった瞬間。
黒い破壊光線が、静かに消滅した。
轟音。
衝撃波だけが周囲を吹き飛ばす。
だが。
遠征隊は無事だった。
「……防いだ」
セレスティアが呆然と呟く。
「災厄級ブレスを……」
黒竜ですら、黄金眼を見開いていた。
『また……』
低い唸り。
『また繋がるのか』
憎悪。
怒り。
それが黒霧となって溢れ出す。
だが。
ヒオリは気付いてしまった。
今の共鳴。
あれは。
ただ力を合わせただけじゃない。
もっと深い。
もっと根源的な“何か”。
「ぺけ……」
視線が重なる。
灰銀の瞳。
その奥に、同じ感覚があった。
すると。
頭の奥へ、知らない景色が流れ込む。
星空。
白銀世界。
泣いている少女。
血塗れの灰銀剣。
そして。
自分とペケが、誰かの前で手を繋いでいる光景。
『――今度こそ』
知らない声。
『二人で、生きて』
「っ――!」
ヒオリが息を呑む。
隣で、ペケも同じように顔を歪めていた。
「見えたか」
「……うん」
何なのか分からない。
でも。
これはきっと、昔の記憶。
灰銀と星霊の。
「まずい!」
セオドアが叫ぶ。
全員が現実へ引き戻される。
第四層が崩れていた。
空間断裂。
黒霧。
地面が次々消えていく。
「層崩壊限界です!!」
「撤退するか!?」
ガルドが怒鳴る。
だが。
『だめ……!』
フィアが叫んだ。
『ここで止まったら、“核”が完全に目覚める!!』
「ならどうする!」
『最深層へ行って!!』
白銀髪の少女が泣きそうな顔で叫ぶ。
『“星核”を止めないと、黒冠そのものが開く!!』
その瞬間。
黒竜が咆哮した。
巨大な翼が広がる。
第四層全域へ黒霧が溢れ出す。
『誰も通さぬ』
黄金眼が憎悪に染まる。
『星喰い様の復活まで』
次の瞬間。
黒竜の周囲へ、無数の魔法陣が展開された。
「……嘘だろ」
レートの顔が青ざめる。
「まだ何かあるのかよ」
すると。
黒い空が裂けた。
その奥から。
巨大な“鎖”が、何十本も降り注ぐ。
空間を縫い止めるような黒鎖。
そして。
その中心に。
ゆっくりと、“巨大な棺”が姿を現した。
ヒオリの胸元が激しく脈打つ。
『――来ないで』
フィアが震える声で呟く。
蒼い瞳から涙が零れる。
『それだけは、開けちゃだめ……』




