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第23話 交わる星

 蒼銀の光。


 灰銀の光。


 二つの魔力が、学院上空で絡み合う。


 まるで夜空へ描かれた流星のようだった。


「……綺麗」


 誰かが呟く。


 だがその光景は、美しいだけではない。


 圧倒的だった。


 学院全域を揺らすほどの魔力波動。


 星霊魔法と灰銀魔力。


 本来なら決して交わらないはずの二つが、自然に共鳴している。


「あり得ない……」


 学院長が絶句する。


「古代文献ですら、こんな反応は――」


 アステリアだけが静かに目を閉じていた。


 星録の民。


 古代を知る種族。


 だからこそ理解してしまう。


 これは偶然ではない。


「“星を導く灰銀”……」


 小さな呟き。


 その瞬間。


 空間断裂の奥で、“星喰い”が激しく咆哮した。


『忌々しい……!!』


 黒霧が荒れ狂う。


 無数の黒腕が学院へ降り注ぐ。


「来るぞ!!」


 フィリップが黄金剣を構えた。


「全員迎撃!!」


 その瞬間。


 戦場が動く。


 レオンハルトが白銀剣を振り抜き、黒腕を断つ。


 セレスティアの巨大水壁が学院棟を守り。


 アイリスが笑いながら魔物を斬り裂く。


「うわぁ、数多すぎだろ!」


「文句を言う暇があるなら手を動かせ」


 アルトが大剣を叩き込む。


 レートも騎士剣を抜き、前線へ飛び込んだ。


「学院守るぞお前らぁ!!」


 騎士科生徒たちが続く。


 だが。


 それでも押されていた。


 黒霧から溢れる魔物の数が異常すぎる。


「キリがない……!」


 セオドアが歯を食いしばる。


 その時。


 空間断裂の奥で、黄金の瞳が再び笑った。


『滅びよ』


 次の瞬間。


 巨大な黒槍が空から降ってくる。


 狙いは学院中央塔。


 結界核だ。


「まずい!!」


 学院長が叫ぶ。


「あれを通せば学院結界が崩壊する!」


 誰も届かない。


 速すぎる。


 その時だった。


 ペケが動く。


「……ペケ!」


 ヒオリが思わず叫ぶ。


 灰銀の魔力が爆発する。


 彼は空中へ跳び上がった。


 まるで重力すら無視するように。


「殿下!!」


 アルトの声。


 だがペケは止まらない。


 黒槍へ真正面から突っ込む。


「馬鹿か!?」


 レートが絶叫した。


 SS級災厄の一撃。


 直撃すればSランク探索者ですら消し飛ぶ。


 だが。


 ペケは剣を振り抜いた。


 ――斬。


 静かな一閃。


 次の瞬間。


 巨大黒槍が、真っ二つに裂けた。


「……は?」


 全員の思考が止まる。


 斬った。


 今。


 SS級災厄の攻撃を。


 たった一人で。


 しかし。


「っ……!」


 ペケの口から大量の血が零れる。


 空中で体勢が崩れた。


「ペケ!!」


 ヒオリの胸が締め付けられる。


 まただ。


 この人は。


 いつも自分を壊す。


 誰かを守るために。


「……なんで」


 涙が零れそうになる。


 その瞬間。


 ヒオリの星霊魔法が再び反応した。


 蒼銀の星光が、彼女の周囲へ舞い上がる。


『――繋げ』


 声。


 優しく。


 懐かしい声。


『孤独を終わらせよ』


「……え」


 ヒオリが目を見開く。


 すると自然に、身体が動いた。


 彼女は空へ手を伸ばす。


「星よ――」


 蒼銀の光が、一直線にペケへ届く。


 次の瞬間。


 ペケの身体を包む灰銀魔力が、さらに強く輝いた。


「なっ……!?」


 学院長が息を呑む。


 傷が塞がっていく。


 いや、違う。


 星霊魔法が、彼の魔力を支えている。


「魔力共有……?」


 アステリアが震える声を漏らす。


「そんな……この二人、どこまで繋がって……」


 空中で。


 ペケがゆっくり目を開く。


 灰銀の瞳。


 その奥へ、蒼銀の光が混ざっていた。


「……ヒオリ」


 初めてだった。


 彼が、こんな声で名前を呼ぶのは。


 大切なものへ触れるみたいに。


 優しく。


 苦しそうに。


 その瞬間。


 黄金の瞳が、明確な憎悪を浮かべた。


『やめろ』


 空が震える。


『また、繋がるな』


 その言葉に。


 アステリアの顔色が変わる。


「まさか……」


 星喰いは知っている。


 この二人を。


 遥か昔。


 古代災厄戦争で。


 同じ光景が、存在していたことを。


 その時だった。


 空間断裂のさらに奥。


 黒い闇の中で。


 “巨大な門”が、ゆっくり開き始めた。


 学院全員の背筋が凍る。


 あれが完全に開けば。


 本当に世界が終わる。


 そして。


 ペケは静かに剣を握り直した。


 ヒオリの星光を纏いながら。


 まるで。


 二人で戦うのが当然だと言うみたいに。

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