表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/121

第22話 星霊覚醒

 闇が空を覆う。


 学院全域へ広がる黒霧。


 まるで世界そのものが夜へ呑み込まれていくようだった。


『――見つけた』


 空間断裂の奥。


 黄金の瞳が、ゆっくり細められる。


 その視線は一直線にヒオリを捉えていた。


「っ……」


 アルトの腕の中で、ヒオリの身体が震える。


 苦しい。


 星霊魔法が暴走寸前だった。


 胸元の痣が焼けるように熱い。


『星の器』


 声が響くたび、心臓が握り潰される感覚。


『封印の楔』


『最後の継承者』


「や、め……」


 ヒオリが震える声を漏らす。


 頭の奥へ、知らない記憶が流れ込んでくる。


 崩れる世界。


 泣き叫ぶ人々。


 燃える森。


 そして。


 星空の下で戦う、銀髪の誰か。


「……っ!」


 ヒオリの魔力が爆発した。


 蒼銀の光が学院中へ広がる。


「ヒオリ様!?」


 ミリアが叫ぶ。


 だがもう止められない。


 星霊魔法が“目覚め”始めている。


「まずい……!」


 学院長の顔色が変わる。


「このままでは星霊が完全共鳴する!」


「何が起きる」


 フィリップが低く問う。


 学院長は苦々しく答えた。


「最悪、“封印”が開く」


 空気が凍る。


 その時だった。


 ペケが振り返る。


 灰銀の瞳。


 その視線がヒオリを捉えた瞬間。


 彼の魔力が、静かに変わった。


「……?」


 アステリアが目を見開く。


「まさか」


 ペケの周囲へ、灰銀の魔力陣が浮かび上がる。


 複雑な古代文字。


 誰も見たことのない術式。


「それは……!」


 学院長が絶句する。


「古代封星術式……!?」


 フィリップですら目を見開いた。


「お前、そこまで継承していたのか」


 ペケは答えない。


 ただ。


 真っ直ぐヒオリへ歩いていく。


 黒霧。


 魔物。


 空間断裂。


 全部無視して。


「ペケ!」


 レオンハルトが叫ぶ。


「近付くな! 今のヒオリは危険だ!」


 だがペケは止まらない。


 ヒオリの周囲では星光が荒れ狂っていた。


 普通の人間なら触れた瞬間、魔力を焼かれる。


 それでも。


 ペケは迷わず手を伸ばした。


「……落ち着け」


 低い声。


 その瞬間。


 暴走していた星光が、僅かに静まる。


「なっ……!?」


 学院長が息を呑む。


 星霊魔法が。


 ペケに反発していない。


 むしろ。


 呼応している。


『――灰銀』


 頭の奥へ、また声が響く。


 今度はヒオリだけではない。


 アステリアも。


 学院長も。


 一部の高位魔力保持者たちも、その声を聞いていた。


『星を断つ刃』


 その瞬間。


 ペケの灰銀魔力が、一気に膨れ上がる。


 学院全体が震えた。


「っ……!」


 レートが思わず膝をつく。


「なんだよ……これ……」


 重い。


 圧倒的。


 だが不思議と、ヒオリには怖くなかった。


 むしろ。


 安心する。


 星霊魔法の痛みが、少しずつ消えていく。


「……ぺけ」


 ヒオリが掠れた声で名前を呼ぶ。


 すると。


 ペケはほんの少しだけ目を細めた。


「大丈夫だ」


 静かな声。


「お前は俺が守る」


 その瞬間。


 空間断裂の奥で、“星喰い”が怒り狂った。


『灰銀……!!』


 黄金の瞳が憎悪に染まる。


『また貴様か!!』


 全員の背筋が凍る。


 また。


 今、“また”と言った。


 つまり。


 星喰いは、ペケを知っている。


「どういうことだ……?」


 フィリップが呟く。


 アステリアは静かに目を見開いていた。


「まさか……」


 そして。


 彼女はようやく理解してしまう。


 灰銀の王子。


 星霊の継承者。


 この二人は。


 偶然出会ったのではない。


 ずっと昔から。


 遥か古代から。


 運命に組み込まれていたのだと。


 次の瞬間。


 空間断裂から、無数の黒い腕が溢れ出した。


 学院へ降り注ぐ災厄。


 だが。


 ペケは静かに剣を構える。


 その背後で。


 ヒオリの星光が、彼の灰銀魔力へ重なっていく。


 蒼銀と灰銀。


 二つの光が交わる。


 まるで。


 最初から一つだったみたいに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ