第118話 王都アルディア
巨大方舟が、雲海を抜ける。
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遥か前方。
白銀の城壁都市が見えてきた。
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「……王都」
ヒオリが小さく呟く。
◇◇◇
王都アルディア。
大陸最大級の学術都市にして、王立アルカディア学院の中核都市。
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白い外壁。
幾重もの魔導塔。
中央には、天へ届くような巨大時計塔。
◇◇◇
だが。
今日は様子が違った。
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「なんか……騒がしくない?」
ガブが眉を寄せる。
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都市上空。
大量の飛空騎士。
魔導探査光。
警戒態勢。
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『王都全域にて緊急防衛体制を確認』
ノアが静かに告げる。
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「そりゃそうだろうな……」
レートが苦い顔をする。
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空が裂けた。
王級災厄が出現した。
しかもアルカディア主砲まで使用。
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隠せる規模じゃない。
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「面倒なことになりそう……」
アイリスがため息を吐く。
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その時。
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『アルカディアへ通達』
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空中へ光陣が展開される。
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『こちら王都中央管理局』
『帰還確認』
『至急、中央浮遊港へ着艦されたし』
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「うわぁ絶対怒られるやつ」
アマカーラが顔をしかめた。
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「いやでも今回は仕方なくない!?」
ガブが抗議する。
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「空裂けたんだよ!?」
「事実だけ聞くと余計怒られそうですね」
ミーチーが真顔で返した。
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だが。
ヒオリは、それどころじゃなかった。
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医療室。
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簡易治療台へ寝かされたペケは、まだ目を覚まさない。
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右腕の侵食痕。
黒い亀裂は固定されている。
だが、完全に消えてはいない。
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「……ぺけ」
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ヒオリがそっと手を握る。
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すると。
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「まだ起きないのか」
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低い声。
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振り返ると、アステリアが立っていた。
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「うん……」
ヒオリが俯く。
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アステリアは静かにペケを見る。
その瞳は、どこか複雑だった。
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「界断を使った時点で異常なのよ」
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「……そんなに危ない術式なの?」
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数秒の沈黙。
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「本来、“世界側”へ干渉する術式は、人が使うものじゃない」
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アステリアが静かに言う。
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「空間を斬るっていうのはね」
「世界の境界へ刃を入れるってこと」
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ヒオリの顔が青ざめる。
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「じゃあ……」
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「生きてるだけでも、おかしい」
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静寂。
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ヒオリの指が、ぎゅっと強くなる。
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その時だった。
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コンコン。
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医療室の扉が叩かれる。
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『失礼します』
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入ってきたのは、学院騎士だった。
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「ヒオリ・リュミエール様」
「……はい」
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「学院長代理、および中央評議会より召集命令です」
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「今?」
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「至急とのことです」
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空気が少し重くなる。
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中央評議会。
王都アルディアの実質最高権力機関。
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つまり。
今回の件が、“国家案件”になったということだった。
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「……分かりました」
ヒオリが静かに立ち上がる。
◇◇◇
だが。
その瞬間。
◇◇◇
ペケの指先が、僅かに動いた。




