第115話 落ちる灰銀
灰銀光が、空中で途切れていた。
◇◇◇
「ぺけ!!」
ヒオリが駆け出す。
◇◇◇
落ちている。
空の遥か上。
銀雷を散らしながら。
ペケの身体が、真っ逆さまに。
◇◇◇
「ノア!!」
ヒオリが叫ぶ。
「高度下げて!!」
◇◇◇
『了解』
『《アルカディア》緊急降下開始』
◇◇◇
巨大方舟が急速旋回する。
空気が震えた。
◇◇◇
「レート!!」
「分かってる!!」
◇◇◇
レートが飛び出す。
風魔法を纏い、一気に空中へ。
◇◇◇
だが。
◇◇◇
「っ……!?」
◇◇◇
近付いた瞬間。
レートの顔色が変わった。
◇◇◇
「なんだこれ……!」
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ペケの周囲。
空間そのものが歪んでいた。
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黒い亀裂。
ノイズみたいな断層。
近づくだけで身体が裂けそうになる。
◇◇◇
『危険』
ノアが即座に警告する。
『空間断層汚染拡大中』
『接触時、高確率で身体欠損が発生します』
◇◇◇
「はぁ!?」
ガブの顔が青ざめる。
◇◇◇
「じゃあどうすんだよ!!」
◇◇◇
その瞬間。
ヒオリが飛び出した。
◇◇◇
「ヒオリ!?」
アイリスが叫ぶ。
◇◇◇
蒼銀光。
星霊魔法を纏い、一気に空へ駆ける。
◇◇◇
「待て!!」
レートが叫ぶ。
「近づくな!!」
◇◇◇
だが。
ヒオリは止まらない。
◇◇◇
「届いて……!!」
◇◇◇
手を伸ばす。
◇◇◇
ペケの顔が見えた。
意識がない。
右腕の黒侵食が、肩まで広がっている。
◇◇◇
「ぺけ……!」
◇◇◇
次の瞬間。
ヒオリの蒼銀光と。
ペケの灰銀光が触れた。
◇◇◇
バチィッ――――!!
◇◇◇
空間が震える。
◇◇◇
「っぁ……!」
ヒオリの身体へ激痛が走った。
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黒い侵食が、腕へ這い上がってくる。
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「ヒオリ!!」
アイリスが悲鳴を上げる。
◇◇◇
だが。
ヒオリは、離さなかった。
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「……やだ」
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小さな声。
◇◇◇
「置いてかないで……」
◇◇◇
その瞬間。
ペケの瞳が、僅かに開く。
◇◇◇
「……ヒオ、リ」
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掠れた声。
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「喋らないで!!」
ヒオリが泣きそうな声を上げる。
◇◇◇
だが。
ペケは弱々しく笑った。
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「無茶……するなって……言っただろ」
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「今それ言う!?」
◇◇◇
涙声だった。
◇◇◇
「馬鹿……!」
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その時。
黒侵食が、一気に脈動した。
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ドクン――。
◇◇◇
「っ!!」
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ペケの身体から、黒い空間亀裂が溢れ出す。
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『侵食率二四%』
『これ以上の接触は危険です』
◇◇◇
「そんなの知らない!!」
ヒオリが叫ぶ。
◇◇◇
蒼銀光が強くなる。
◇◇◇
「返して!!」
「ぺけを返してよ……!!」
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その瞬間だった。
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ヒオリの星痕が、今までにない輝きを放つ。
◇◇◇
蒼銀。
そして。
その奥に、淡い“金色”が混ざった。
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『……!?』
初めて。
ノアの声が驚愕を帯びる。
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『観測不能反応』
『星霊出力急上昇』
◇◇◇
空気が震える。
◇◇◇
次の瞬間。
ヒオリの光が、ペケの侵食へ触れた。
◇◇◇
すると。
◇◇◇
黒侵食が、僅かに止まった。




