第114話 空断
空が、斬れた。
◇◇◇
一瞬。
誰も理解できなかった。
◇◇◇
黒く裂けていた空門中央。
そのど真ん中へ。
一本の灰銀線が走っていた。
◇◇◇
そして。
◇◇◇
ピシ――――ッ。
◇◇◇
空間が割れ始める。
◇◇◇
『……ぁ』
ゼルヴァリオンの瞳が揺れた。
◇◇◇
次の瞬間。
空門そのものが、真っ二つに裂けた。
◇◇◇
ドォォォォォォォォォン!!!!!!
◇◇◇
世界が震える。
黒空間が崩壊していく。
巨大な黒腕が千切れ飛び、空間断層へ呑まれていった。
◇◇◇
『馬鹿なァァァァァァァァ!!!!』
ゼルヴァリオンの咆哮。
◇◇◇
その声だけで雲海が吹き飛ぶ。
空が荒れ狂う。
◇◇◇
『人類が!!』
『空界へ届くなど!!』
◇◇◇
だが。
ペケは止まらない。
◇◇◇
灰銀光を纏ったまま。
さらに剣を振る。
◇◇◇
轟ッ――――!!
◇◇◇
二撃目。
空間断層ごと、空門を削り飛ばした。
◇◇◇
『っ――――!!』
◇◇◇
『第二封鎖域再構築開始』
ノアが告げる。
『侵食率急速低下』
◇◇◇
「戻ってる……!」
アイリスが目を見開く。
◇◇◇
黒空間が閉じ始めていた。
裂けた空が、ゆっくり修復されていく。
◇◇◇
『ゼルヴァリオン現界率四〇%』
『三二%』
『一九%』
◇◇◇
「勝てる……!?」
ガブが叫ぶ。
◇◇◇
だが。
アステリアだけは顔色が悪かった。
◇◇◇
「……違う」
◇◇◇
「え?」
◇◇◇
「あれ、“押し返されてる”だけ」
震える声。
◇◇◇
「完全には、死んでない」
◇◇◇
その瞬間。
ゼルヴァリオンの巨大な瞳が、静かに細められた。
◇◇◇
『……灰銀』
◇◇◇
怒りではない。
今度は、別の感情だった。
◇◇◇
『ようやく見つけた』
◇◇◇
静寂。
◇◇◇
ペケの目が僅かに細まる。
◇◇◇
『継承者』
◇◇◇
空気が止まった。
◇◇◇
「……は?」
レートが固まる。
◇◇◇
だが。
ゼルヴァリオンは続ける。
◇◇◇
『灰銀の王』
『最後の断界』
◇◇◇
ヒオリの瞳が揺れた。
◇◇◇
「ぺけ……?」
◇◇◇
しかし。
その瞬間だった。
◇◇◇
バキッ――。
◇◇◇
嫌な音。
◇◇◇
「……え」
ヒオリが息を呑む。
◇◇◇
ペケの右腕。
そこへ、黒い亀裂みたいなものが走っていた。
◇◇◇
「っ……」
◇◇◇
銀雷が乱れる。
◇◇◇
界断の反動。
空間へ干渉した代償。
◇◇◇
『侵食確認』
ノアの声が響く。
『空間断層汚染』
『灰銀魔力浸食率一三%』
◇◇◇
「侵食……?」
アイリスの顔が青ざめる。
◇◇◇
その時。
ゼルヴァリオンが、低く笑った。
◇◇◇
『なるほど』
『未完成か』
◇◇◇
巨大な瞳が、愉しげに細まる。
◇◇◇
『ならば次は奪える』
◇◇◇
その瞬間。
崩壊する空間の奥から。
無数の蒼黒瞳が、こちらを見返した。
◇◇◇
ぞわっ――。
◇◇◇
全員の背筋に悪寒が走る。
◇◇◇
『覚えておけ』
ゼルヴァリオンの声が響く。
◇◇◇
『星霊も』
『灰銀も』
『次は逃がさない』
◇◇◇
直後。
空門が完全崩壊した。
◇◇◇
轟音。
白光。
暴風。
◇◇◇
そして。
空から、“何か”が落ちる。
◇◇◇
「ぺけ!!」
ヒオリが叫んだ。
◇◇◇
灰銀光が、空中で途切れていた。




