第112話 空色の少女
「たぶん、止まるから」
◇◇◇
静寂。
◇◇◇
「……何言ってるの」
ヒオリがセラの腕を掴む。
◇◇◇
セラは、小さく笑った。
どこか諦めたみたいな笑顔だった。
◇◇◇
「昔も、そうだったから」
◇◇◇
「昔?」
アイリスが眉を寄せる。
◇◇◇
セラは空を見上げたまま、ぽつりと呟いた。
◇◇◇
「私、“鍵”なの」
◇◇◇
その瞬間。
アステリアの表情が変わった。
◇◇◇
「……まさか」
◇◇◇
「知ってるの?」
レートが振り返る。
◇◇◇
アステリアは苦しそうに息を吐いた。
◇◇◇
「星録時代の封印術式には、“核”が必要だった」
「核……?」
「空門そのものと同調できる存在」
◇◇◇
アステリアの視線が、セラへ向く。
◇◇◇
「生きた封印鍵よ」
◇◇◇
空気が凍る。
◇◇◇
「……は?」
ガブが引きつった声を漏らす。
◇◇◇
「じゃあ何」
アマカーラの顔が歪む。
「その子を門に使うってことか?」
◇◇◇
アステリアは答えられなかった。
◇◇◇
その沈黙だけで十分だった。
◇◇◇
「嫌だよ……そんなの」
ヒオリの声が震える。
◇◇◇
セラは、静かにヒオリを見た。
◇◇◇
「でもね」
「このままだと、もっといっぱい死んじゃう」
◇◇◇
「だからって!!」
ヒオリが叫ぶ。
◇◇◇
「セラちゃんが居なくなる理由にならない!!」
◇◇◇
その瞬間。
セラの瞳が、大きく揺れた。
◇◇◇
まるで。
そんな言葉を言われたことがないみたいに。
◇◇◇
「……私」
小さな声。
「居ても、いいの?」
◇◇◇
ヒオリは迷わなかった。
◇◇◇
「当たり前だよ!!」
◇◇◇
蒼銀光が揺れる。
◇◇◇
「まだ会ったばっかりだけど!」
「怖い思いして!」
「泣いて!」
「やっと助かったのに!」
◇◇◇
ヒオリの瞳から涙が零れた。
◇◇◇
「そんな簡単に、自分を諦めないでよ……!」
◇◇◇
その声に。
セラの目から、ぽろりと涙が落ちた。
◇◇◇
だが。
空は待ってくれない。
◇◇◇
ゴォォォォ――――……
◇◇◇
ゼルヴァリオンの圧が増していく。
空門がさらに開いていた。
◇◇◇
『第二封鎖域突破率七四%』
『現界まで残り九〇秒』
◇◇◇
「くそっ……!」
レートが歯を食いしばる。
◇◇◇
その時だった。
◇◇◇
ペケが前へ出る。
◇◇◇
「ノア」
『はい』
「空門固定は可能か」
◇◇◇
『限定時間なら可能』
『ただし、拘束には膨大な魔力を使用します』
◇◇◇
「どれくらい持つ」
『現在戦力で換算』
『最大四七秒』
◇◇◇
「足りねぇ……」
アマカーラが顔をしかめる。
◇◇◇
だが。
ペケの表情は変わらなかった。
◇◇◇
「四七秒あれば十分だ」
◇◇◇
「え?」
ヒオリが顔を上げる。
◇◇◇
ペケは静かに空を見上げた。
◇◇◇
「門ごと斬る」
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全員が固まった。
◇◇◇
「……はい?」
レートが真顔になる。
◇◇◇
「いや待って」
アイリスも引きつる。
「空間だよ?」
◇◇◇
「知ってる」
◇◇◇
「いや知ってるじゃなくて!?」
◇◇◇
ガブが全力で叫んだ。
◇◇◇
「最近のぺけ兄、斬る対象おかしくない!? 海とか空とか!!」
「同意です!!」
ミーチーまで頷いた。
◇◇◇
だが。
ペケは冗談を言っている顔じゃない。
◇◇◇
灰銀魔力が、静かに膨れ上がっていく。
◇◇◇
『……灰銀』
ゼルヴァリオンの瞳が細まる。
◇◇◇
『そこまで到達しているのか』
◇◇◇
その言葉と同時に。
ペケの背後へ、巨大な灰銀魔法陣が展開された。




