第111話 星喰い
『見つけた』
◇◇◇
その声が響いた瞬間。
ヒオリの星痕が暴走した。
◇◇◇
「っぁぁ……!!」
蒼銀光が弾ける。
方舟内部へ衝撃波が走った。
◇◇◇
「ヒオリ!!」
ペケが即座に抱き寄せる。
だが。
ヒオリの瞳は焦点が合っていなかった。
◇◇◇
「寒い……」
小さな声。
「空が、冷たい……」
◇◇◇
その瞬間。
ゼルヴァリオンの周囲に、無数の蒼黒魔法陣が展開された。
◇◇◇
『星霊波長確認』
『捕食対象認識完了』
◇◇◇
「……捕食?」
アイリスの顔が引きつる。
◇◇◇
直後だった。
空間から、黒い“糸”みたいなものが伸びる。
一直線に。
ヒオリへ向かって。
◇◇◇
「っ!?」
◇◇◇
だが。
その糸が届く前に。
銀雷が空を裂いた。
◇◇◇
轟ッ――――!!
◇◇◇
灰銀剣。
ペケの一撃が、黒糸ごと空間を断ち切る。
◇◇◇
『……灰銀』
ゼルヴァリオンの瞳が細まる。
◇◇◇
「触るな」
低い声だった。
静かなのに。
全身から凄まじい圧が溢れている。
◇◇◇
その姿に。
アズラエルですら、一瞬押し黙った。
◇◇◇
『お前は理解しているはずだ』
ゼルヴァリオンの声が響く。
『星霊は世界を滅ぼす』
◇◇◇
「だから喰うのか」
ペケの声は冷えていた。
◇◇◇
『循環だ』
『星は巡る』
『壊れた世界は喰らい、新たな星へ変える』
◇◇◇
「……最低」
ヒオリが小さく呟く。
◇◇◇
ゼルヴァリオンの巨大な瞳が、ゆっくりヒオリを見た。
◇◇◇
『何故拒絶する』
『お前達星霊は、最後には孤独になる』
◇◇◇
その言葉に。
ヒオリの瞳が揺れた。
◇◇◇
星霊魔法。
禁忌。
命を削る力。
誰にも理解されなかった。
怖がられてきた。
◇◇◇
まるで。
全部知っているみたいに。
◇◇◇
『来い』
『こちらへ』
◇◇◇
ヒオリの身体が、僅かに前へ引かれる。
◇◇◇
「ヒオリ!」
レートが叫ぶ。
◇◇◇
だが。
その瞬間。
ペケの手が、ヒオリの肩を掴んだ。
◇◇◇
「行くな」
◇◇◇
短い言葉。
でも。
その声だけで、ヒオリの意識が戻る。
◇◇◇
「……ぺけ」
◇◇◇
灰銀の瞳が、真っ直ぐヒオリを見ていた。
◇◇◇
「お前は、お前だ」
◇◇◇
静寂。
◇◇◇
「誰が何と言おうと」
「化け物でも」
「星霊でも」
◇◇◇
ペケの声は、一切揺れなかった。
◇◇◇
「俺は、お前を渡さない」
◇◇◇
ヒオリの瞳が、大きく揺れる。
◇◇◇
「……っ」
頬が熱い。
こんな状況なのに。
泣きそうになる。
◇◇◇
その瞬間。
ゼルヴァリオンの空間圧が、一気に膨れ上がった。
◇◇◇
『理解不能』
『灰銀』
『何故そこまで執着する』
◇◇◇
空が軋む。
世界そのものが悲鳴を上げていた。
◇◇◇
『第二封鎖域突破開始』
ノアの声が響く。
『現界まで推定一二〇秒』
◇◇◇
「短すぎるだろ!?」
アマカーラが叫ぶ。
◇◇◇
「ノア!!」
アステリアが振り返る。
「星霊砲、もう一回撃てないの!?」
◇◇◇
『不可能』
『砲身冷却未完了』
『強制発射時、アルカディア崩壊率八七%』
◇◇◇
「高すぎる!!」
◇◇◇
その時だった。
セラが、ふらりと前へ出る。
◇◇◇
「……私が行けば」
◇◇◇
「セラ?」
ヒオリが目を見開く。
◇◇◇
セラは空を見上げていた。
泣きそうな顔で。
◇◇◇
「たぶん、止まるから」




