第109話 白銀が穿つ空
世界が、白く染まっていた。
◇◇◇
轟音すら遅れて来る。
星霊砲。
アルカディアから放たれた白銀光は、空そのものを貫いていた。
◇◇◇
黒槍が消える。
空域殲滅魔法《天墜槍》が、触れた瞬間から蒸発していく。
◇◇◇
「う、わ……」
アイリスが息を呑む。
誰も言葉を失っていた。
巨大な光の奔流。
まるで星が一直線に落ちているみたいだった。
◇◇◇
『……ッ!!』
アズラエルが初めて明確に動揺した。
黄金眼が見開かれる。
◇◇◇
だが。
星霊砲は止まらない。
白銀光が、そのまま空門中央へ直撃した。
◇◇◇
ドォォォォォォォン!!!!!!
◇◇◇
空が砕けた。
◇◇◇
「え……?」
ヒオリが目を見開く。
本当に。
空に亀裂が走っていた。
◇◇◇
黒空間が悲鳴を上げる。
巨大な腕が崩壊する。
空間侵食が、一気に押し戻されていた。
◇◇◇
『ゼルヴァリオン現界率低下』
『五二%』
『四〇%』
『二九%』
◇◇◇
「効いてる……!」
レートが叫ぶ。
◇◇◇
その瞬間。
アズラエルが咆哮した。
『人類風情がァァァァァァ!!!!』
黄金魔力が爆発する。
◇◇◇
「っ!!」
アルカディア全体が激震した。
外壁へ巨大な亀裂が走る。
◇◇◇
『防御障壁損傷率三七%』
『継続被弾で飛行不能になります』
◇◇◇
「いやいやいや!!」
アマカーラが叫ぶ。
「撃った後の反動デカすぎるだろ!!」
◇◇◇
空では。
アズラエルの全身から、黒金色の魔法陣が展開されていた。
先程とは比べ物にならない。
圧倒的密度。
◇◇◇
ペケの目が細くなる。
「まだ本命じゃないな」
「え?」
ヒオリが振り返る。
◇◇◇
『……灰銀』
アズラエルが低く唸る。
『何故お前が、人類側に居る』
◇◇◇
静寂。
その言葉に。
レート達の顔色が変わった。
◇◇◇
「……何それ」
アイリスが小さく呟く。
「どういう意味?」
◇◇◇
だが。
ペケは答えない。
灰銀の瞳で、ただ空を見ている。
◇◇◇
『お前は本来――』
その瞬間。
ペケが消えた。
◇◇◇
轟ッ――――!!!
◇◇◇
「なっ!?」
一瞬でアズラエルの眼前。
銀雷が爆ぜる。
◇◇◇
「喋りすぎだ」
低い声。
次の瞬間。
灰銀剣が、黄金障壁ごとアズラエルを叩き斬った。
◇◇◇
『ガァァァァァァァ!!?』
巨体が吹き飛ぶ。
空が裂ける。
◇◇◇
「はぁぁ!?」
ガブが素っ頓狂な声を上げた。
「え、今斬った!? あれ斬れるの!?」
「普通は斬れません!!」
ミーチーが即答した。
◇◇◇
だが。
吹き飛ばされたアズラエルは、ゆっくり体勢を立て直す。
そして。
黄金眼が、初めて“敵”を見る目になった。
◇◇◇
『……やはり危険だ』
『灰銀』
『お前を、ここで消す』
◇◇◇
その瞬間。
空門奥。
巨大な“何か”が、目を開いた。
◇◇◇
ゾワッ――。
◇◇◇
全員の背筋に悪寒が走る。
格が違う。
今までとは次元が違った。
◇◇◇
『ゼルヴァリオン反応急上昇』
『現界率――六八%』
◇◇◇
「嘘でしょ……」
アステリアの顔が青ざめる。
◇◇◇
空間の奥で。
巨大な蒼黒の瞳が、こちらを見ていた。




