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 ローズさんたちと別れてシオンと二人で寮に向かう。シオンは何か物言いたげな様子だったけど、それどころでもないといった感じもする。そりゃそうだ。明日いつ呼び出しがあるかもしれないからいろいろ準備しておかないと。あ。準備といえば、今、聞いておかないと。


「シオン、例の高位の錬金術師のレシピ教えて欲しいんですが。」


「ああ、そういう約束でしたね。いいですよ。マキノに声をかけたのが3日前とは思えないぐらいの話の展開で僕は自分の夢に向かって確実に歩き始めることができたのですから、マキノには感謝しています。もうすぐ寮に着くので、寮の談話室に行きましょう。この時間なら人もいないはずです。」


 寮に着くとシオンが言ったとおり談話室には誰もいなかった。この時間各自が自分の部屋で予習復習や課題に取り組んでいるはずだ。

 シオンがバッグからノートを出すと、さらさらとレシピを書いていく。もうすっかり覚えているようだ。


「これですよ。「飛翔の黄金翼」これは僕の家の屋根裏で偶然見つけたんですよ。僕の家は中規模の商家なんですが、何代か前のご先祖様に有名な錬金術師がいて、彼が作ったアイテムを売りにだしたのが商売のはじまりだと言われています。


 有名な錬金術師の子どもはどちらかと言えば錬金よりも商売が好きで、その後の子孫たちもどっちかといえば商売の方を選択しつづけたせいで、ご先祖様のレシピの資料がいい加減な扱いになっていたのですが、僕は小さい頃からなぜか錬金が好きで、先祖返りだって実家で言われていました。


 それで屋根裏に仕舞ってあったご先祖様の資料を好きに読んで良いと言われて字が読めるようになったらその資料を読むのが至福の時間でした。


 初等科学校で剣や魔法と一緒に錬金スキルの使い方を教わった後は、独学で勉強してきましたが、ご先祖様のレシピはMPをたくさん使うものが多くて、どこまでレベルをあげても追いつけない諦め感が最近出てきていた時に、マキノが入学してきて、僕が停滞している時に、嬉々として上位のアイテムを続々と提出する姿に嫉妬していたのかもしれません。」


 シオンがなんか滔々と話を続けているがあまり聞こえていない。


 このレシピの「飛翔の黄金翼」どっかで見たことがあるんだけど、どこだったかな。こんな仰々しい名前のアイテムはまだ手に入れたことはないような気がするし、ギルド長に教えてもらった覚えもないし…。


 あ。そうだ。まだ何か話続けているシオンに見えないようにタブレットで錬金レシピをスクロールして探す。一番後ろに出てくるレシピ。ギルド長に言われるまで気づかなかったレシピ。「賢者の石」のレシピに辿り着くとその材料の1つに「飛翔の黄金翼」載っていた。


 あっ。これだ。最初に見た時にどう作っていいのかさっぱりわからなかったもの。姿も効果も何もわからなかったから、自由レシピでも作りようがなかったもの。これだ。ノートの切れ端に、「賢者の石」のレシピを写す。「賢者の石」は4つの材料で作れるみたいだけど、後3つは今もってその名前しかわからないままだ。


「シオン、「飛翔の黄金翼」のレシピをありがとう。いつか必ず材料を集めて作成してみるよ。その代わり、これ。「風龍のシリーズ」のレシピと「賢者の石」のレシピ。」


「え?ええええええ?????!!!!マキノ、何?な、なんで「賢者の石」のレシピなんか持っているんですか!!!!!」


「なんでって言われても成り行き?いや運かな?アイテムショップでたまたま買ったのが「賢者の欠片」だったので偶然レシピを知ることができたんです。」


「たまたま?偶然?運!!!!世界中の錬金術師が血眼にそのレシピを探しつづけ、数百年前に存在していた高位の錬金術師ハローが成功していたのではないかと噂されるぐらいのレベルのものなんですよ!!!マキノはなんて非常識な…。」


 なんだかがっくりうなだれているシオンだったけど、手渡したレシピを見ているうちに、


「そうですよね。僕も運よくたまたま家の屋根裏で「飛翔の黄金翼」のレシピ見つけたのですから、他の人から見たら、案外同じレベルかもしれないですね…。


 とにかく僕はマキノに会えて良かった。つい先日まで停滞していて真っ黒な気持ちに塗りつぶされていたのが嘘のようです。


 もうダメだとあんなに思っていたのに、マキノがあっさり違う方法でたどり着ける道を示してくれたことで解決できてしまうなんて。今もってこの3日間が夢のようです。嫉妬からだったけど君に声をかけて本当に良かった。」


 すっかり黒いものが落ちたのか清々しいシオンがちょっと眩しい。非常識だと言われても自分はそれしかやってきていないから、何とも言えないけど、自分の教えた方法がシオンに役だったのが何だか嬉しい。


 初めは知らない人に声をかけられて、馴れ馴れしく友達になろうと言われてこっちの世界で友達作る気なんてサラサラ無かったから、持っている知識を全部出して早く興味を失ってもらおうと努力した結果だったんだけど、夢を持っている人が夢に向かっていける手伝いができたのであれば、全部拒絶して逃げなくて良かった。


「じゃ僕「眠り薬」使って試してみます。いろいろありがとう。」


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