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翌日王都の街に繰り出す。今回ギルド長に定期報告に行った以外、ほとんど街を歩いていない。学校終わったらアイテムショップいっとかないとなってきょろきょろしながら歩いていくと、賑やかな一角に小鹿亭があった。
こちらの時間の夕刻は決まった時間ではなく夕焼け後ぐらいのことを言う。外で仕事している人が暗くて作業ができなくなったら今日の日の仕事が終わりという感じがちょうど夕刻ごろになっている。
学校の講義が終わってぶらぶら歩いてきたらちょうどいい時間になるぐらいなので見つけた小鹿亭にそのままシオンが入る。
その後をこっそりついていく。初めての店に入るのはやっぱり緊張する。店の中をきょろきょろすると、まだローズさんたちは着ていないようだ。ほっとして、シオンにそう伝えると、シオンもほっとしたみたいだった。二人で少し大きめのテーブルに確保して、お店の人に後で人が来ると伝え、簡単なつまみと飲み物をシオンがすべて手配してくれた。いいやつだ。
こうして二人で向き合っていると、シオンはなかなか男前だと思う。最初に感じた品の良さげなところ、本当は黒いけど好青年っぽく見えるところ、錬金術師を極めようと努力してきたので、冒険者と違って脂ぎっていない知的な感じがするところも悪くないかもしれない。わたしにとっては同志みたいなものになってきてはいるんだけど、ローズさんはどう思ってくれるだろうか。
店の中が一瞬シーンと静まり返って、急にがやがやしだした。
扉の方を見るとローズさんたちが入ってきている。店のお客の注目を一身に浴びているようだ。確かに人気あるんだなと今、はじめて実感した。
恥ずかしいけど、ローズさんに注目が集まりすぎるとこっちも困るので、軽く手を上げて合図を送ると気づいてもらえたようだ。
「マキノ、久しぶり。元気そうね。」
「前は砂漠でご一緒にできなくてすみませんでした。」
「あの程度はぜんぜん大丈夫だから本当いつでも声かけてね。」
「いえ、一緒にいたギルド長も喜んでいました。」
「それにしてもびっくりしたわ、偶然会ったらギルド長と一緒に行動していたんだから。」
「たまたまだったんですけど。」
「今日、ご紹介していただくのはそちらの方?」
「シオンです。初めまして。」
「初めましてローズです。こちらはミントとキャッシーです。」
「初めましてシオン。」
「シオンよろしく。」
「ミントさんもキャッシーさんもよろしくお願いします。」
がちがちに緊張しているのに、シオンは遅れてきたローズさんたちの要望を聞いて注文している。気が利くいいやつだ。
「ローズさん、シオンは昨日お話したとおり、マスタークラスの錬金術師で錬金レベルは44でMP5600あり、いろいろ錬金でアイテムを作れることは当然、回復魔法も使えます。冒険者レベルは30で攻撃魔法も使えます。
わたし知らなかったんですが、ここの錬金術師の方って自分で採取にあまり行かないですね。わたしが自分で採取をしていたという話をしたら、シオンも自分で採取したいそのため冒険者レベルを上げたいという話になってローズさんを思い出しました。」
ローズさんたちが3人で顔を見合わせている。錬金レベルは文句ないわね。攻撃、支援、回復魔法が使えるのは助かるし、錬金でHPとMP両方の回復薬も作れるのは非常に助かる。品もよくて顔つきも卑しくなくてほぼ合格だわ。冒険者レベルは高くはないけれど、MPの総量はすごいわね。ねえ防御力はどのぐらいで?
つい先日冒険者の真似事を始めたばかりだが、防御力は防具等で徹底的に底上げてしてもらっている。目の前で怪我をされるのは嫌なのだ。シオンの防具の名前をあげ、防御力を言うと、ローズさんが、それだけあれば私たちのレベルでいける範囲どこにいってもほとんど傷ひとつつかないわね。と納得しつつ、ねぇマキノその防具って予備はないの?と突っ込んでこられる。
「あのローズさん、レシピはあるんですが、材料が足りなくて。風龍シリーズはシオンにあげただけなんです。その代わり、シオンが「罠避けの指輪」作れますから。あ、風龍シリーズのレシピもシオンに教えておくので、途中材料が揃えば作れるようにしておきますよ。」
シオンが挨拶しかしていないというのに、どんどん勝手に話が進んでいく。下手するとドナドナ状態である。
「シオン、とりあえずお試しだけど1回一緒に行ってみましょう。そこでわたしたちとうまく連携が取れるかどうか。間の取り方時間の過ごし方価値観に、ずれが無いか確認してみましょう。お互い気持ちよく戦えるように手の内を明かしてみてそれからどうするのか考えさせて欲しいんだけど、どうかしら?」
憧れの人に値踏みされているのはわかったが、それだけ真剣にパーティのメンバーとして受け入れてくれようとする提案であることがわかったので頷いた。
「こちらこそ、自分のわがままに付き合ってくださりありがとうございます。」
「ちなみにシオンは何歳なの。かなり錬金スキルのレベルが高いんだけど。」
「今、17歳です。小さい頃から錬金術師に憧れていたので見よう見まねで勉強してきて、15歳で王都の錬金術学校に入りました。」
「そう17歳なの。それでそのレベルは大したものよ。努力してきたのね。努力のできる人は好きよ。」
憧れのローズさんに褒められて、一途に錬金術の勉強をしてきて良かったとシオンが心から思っていたら、
「ねぇ、マキノ、マキノは何歳なの?」
シオンを精一杯アピールしてもう自分の出番はないと思っていたのに、急に話が振られてどきっとする。そういえば何歳なんだろう。
こっちにきて一度も鏡を見ていないし自分の容姿にそれほど興味もなかったのでギルド長にも聞いたことがない。手足の長さとか体の引き締まり方から少し向こうより若返っているような気もする。
気にもしたことがなかった。こっそり机の下でタブレットのステータスを確認すると15歳と記載されている。そうか通常のRPGゲームの初期設定の年齢だものね。納得して、
「15歳です。」
とお伝えすると、周りの4人が全員目を見開いた。え?なんで?
「マキノ。15歳って、つい先日大人になったばかりだったの?若く見えるとは思っていたけれど、本当に若かったの?!」
「その落ち着いた性格、淡々としているところ、どうみてももう少し年上だと思っていたわ。」
本体、日本での年齢は30を超えていたので年上に見えてもおかしくはないと思う。ローズさんたちは見た目たぶん20代後半だから、下手したらローズさんより精神年齢は上になる。こっちの世界の人は向こうの世界の人よりも本質を見る目が鋭いからあながち間違っていない。でも、そんなことを言っても仕方がないので、
「昔から無表情で覇気もなく若年寄扱いされてきたので平気です。」
「いやいや、そうじゃなくて、若いのに実力がありすぎるんですよ。師についていないって言っていましたよね。じゃどうして短期間でそれだけのレベルに到達しているんですか?!」
「えっと、シオンには言いましたよね。この世界のすべての素材、アイテムを知りたいから、しつこいぐらいこつこつと採取して錬金してモンスター倒しを繰り返してきただけなんですが。あ、あまり寝ません。そして他のことはあまり興味がないので起きている時間を全部採取錬金モンスター退治に使っているだけです。」
シオンがほんとにバカと天才は紙一重なんだなとかぶつぶつ言っている。錬金おたくのシオンに言われたくないな。シオンだってこっちの常識、錬金術師は自分で採取にいかないといったものを、自分の夢のためにまるっと捨ててしまえるところがあるのに。
「あと、時々経験値がものすごく入るものが作れるのでそれでレベルが上がっているのかもしれないので、そんな大したことじゃないですよ。」
へへって笑ってごまかそうとしたら、余計睨まれた。何故?
「マキノ、そのものすごく経験値が高いものってこの間の「罠避けの指輪」とかなんですか。あれは結構凄かった。」
「そうそう、そういうのを1回作ったら余っているMPでどんどん作ると経験値どんどん上がります。また、ダンジョンに潜るので帰還や移動の魔法陣もMP余った時に作りだめしておいたり、その繰り返しでいつの間にかレベルが上がっていくという感じですね。」
「でも、MPの回復は寝ないとできないだろう。そんなMPごそっとなくなるものを何個も作れないだろう。」
「寝ないといけないけど、寝たら回復するじゃない?」
何言っているんだっていう目が4人分こっちを見ている。
「だから、夜に寝なくてもいつ寝ても寝れば回復するんだからちょっとだけ寝て回復させれば何度でもMP使えるから。」
「ちょっとだけ寝るって難しいだろう。」
「だから「眠り薬」を飲んで5分程度ベッドで寝るんです。じゃ目が覚めたらMP回復しているのでそれを繰り返せば・・・。」
全部言い終わらないうちに4人全員から
「「「「はぁーーーー!!」」」」
「え、何?マキノ、「眠り薬」自分に使って瞬時、寝てMP回復させているの?」
「何?それ初めて聞いたわ。夜に寝るからMAX回復じゃないの?」
「何その技っていうのか、そこまでして錬金しているのですか?」
「ちょっと面白そうだけど、自分に「眠り薬」かぁ使おうと思うところがすごいわ。」
え、なんで?
「初期のMP量少なし、錬金したいことは山ほどあったし、MP回復薬はなかったし、寝れば回復するのならばって考えたら行けるかなと。実際うまく使えているので大丈夫ですよ。」
皆がてんで呆れた顔をしてぼそぼそ何か言っている。モンスター用の「眠り薬」普通は飲もうと思わないらしい。
「マキノに言いたいことは山ほどあるけれど、それは置いておいて、僕、帰ったら「眠り薬」一度試してみます。今、本当にどうしても自分のMP量を少しでも上げたいんです。マキノに「罠避けの指輪」のレシピ教えてもらったから、あれ何個か作ってみます。できたらローズさんたちにプレゼントしますね。」
「シオンその指輪は楽しみにしているわ。それにしてもマキノが15歳で異常なレベルなのは何となく想像がついたし、その探究心と集中力、好奇心、発想力、ひとりで採取したいっていうのもだんだんわかってきたわ。本当に錬金が好きなのね。」
やっとわかってもらえてうれしくて力強く頷く。
「後、シオンと反対なのですが、ミントさんとキャッシーさんは錬金を覚えるとMP増えると思いますよ。シオンに回復薬の作り方教えてもらって、宿屋で余っているMP使って作っておくと安心だし、錬金レベルが上がればMPもあがりますから一石二鳥だと思います。」
「あー冒険者が錬金スキルを覚えるなんて考えたこともなかったわ。」
「そうね、シオンが冒険者レベルあげてMP増やそうとするのと確かに反対よね。でも錬金スキルを上げることでMPが増えれば戦いが有利になるのは確かだわ。」
「本当盲点だったね。シオン、錬金教えてね。わたしたちも冒険は協力するからシオンは錬金を教えてね。」
これでシオンもパーティで役割ができて楽になるだろう。自分に向く目を全部シオンに押し付けてやれやれである。ローズさんに頼られて鼻の下を伸ばしているシオンを見て一安心した。そしてこの日はこれでお開きとなった。明日シオンにローズさんから冒険に行く時間が連絡されるそうだ。




