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ギルド長のアドバイスのお蔭でローズたちのことはいったん保留にして、いつものようにマキノはどんどんモンスターを瞬殺する。
どんどん瞬殺しアイテムを集め、他の人がいればできるだけ気配を消し、相変わらずMP回復する時以外眠らず、「リンゴ」食べるだけで、もくもくとダンジョンを潜っていく。
新しいアイテムが図鑑に載るたびにエネルギーが湧いてくるようだ。
さすが本格的ダンジョン3ページ目、4ページと図鑑が埋まっていく幸せ。それだけで足がどんどん速くなるが、1フロアごと取残しがないように丁寧にしらみつぶしに確認もしていく。
通常の冒険者は過酷なダンジョン1日連続で戦えるのは休憩をはさみつつ5時間ぐらいだとすれば、マキノは、20時間以上は戦っている。そのうえ、他の冒険者が1回の戦いで10分以上はかかるところを、マキノの戦いはほぼ秒で終わる。
経験値は1日他の冒険者の5倍にはなっている。ただし、他の冒険者が1フロアを2時間ぐらいで降りていくのに対してマキノはその倍以上はかけている。
錬金している時間もあるが、他の冒険者のようにMP不足や異常ステータスになり途中で地上に戻るロス時間もないため、マキノは地道にただし他の人の何倍もの早さでレベルをあげつつ深く深く潜っていた。
マキノは気づいていなかった。もう周りにそのレベルを潜れる冒険者の姿を見ることもなくなっていたことに。どこを歩いていてもひとりでマキノは絶好調だった。
「えいっ」と声掛けした後いつものように魔法が自動化され発生しモンスターが消えたかと思った、その時だった、まばゆいぐらいの光がダンジョン内に満ちる。目の前に見たこともない、まばゆい人たちが立っている。
「初めてだな、この条件で召喚されたのは。」
「まったく、実際あり得ないと思っていたぞ。」
「それにしても、一人でここまで来た割に華奢で可愛い子ね。」
「確かにまるで小僧みたいだな。」
てんで勝手にいろいろ話している。なんなんだこれ?知らない人が4人も出てきておろおろしていると、眩しいぐらい綺麗なお姉様がこっちに気づいて、
「あらあらこの子びっくりしているわよ。まぁそれもそうでしょうね。わたくしたちのことは話に聞いていなかったはずですわ。
シークレットですから。ええ、教えてさしあげましょう。パーティの枠が4人分以上空いている時、すなわちひとりで戦っている時に、火、水、風、土魔法のすべてが同時にレベル40に上がった時、わたくしたちを召喚することができるのです。」
「しょ、召喚?」
「ええ、召喚。わたくしたちは、それぞれ火の精霊王、水の精霊王、風の精霊王、土の精霊王です。今後あなたが困った時に、わたくしたちを呼び出すことができるようになりました。」
各精霊王をぱしりに?無理無理無理。絶対に無理!!!理解が追いつかないままパニックになっていると、
眩いお姉さん、水の精霊王はにっこり笑って、
「そう焦らなくてもよいのよ。あなたのタブレット、ええ、わたくしたちはここの住人ではなく、神の下に直につながるものとして、あなたのこと、テスターの存在もわかっています。
ですから、タブレットの図鑑の一番後ろ、今回のことで発覚したと思います、シークレットページが。ここにわたくしたちの枠があって、ほら。ここここ。綺麗に光っていて皆、美男美女になっていて、神も良い仕事をしてくださっていますね。」
おお、図鑑にシークレットページがあったとは。それにしても各精霊王ともに★6個ぴかぴっかに光っている。エクストラレア!
でも図鑑コンプリートが目的だったのに、このことはぜんぜん知らなかった。
あの魔法を思いつかなければ絶対に実現できなかった。じゃこの一瞬がうまくいかなかったらコンプリートは無理になっていたのか。と思うと、他にもそんなシークレットがあって、自分は絶対にコンプリートできないんじゃないかと少しがっくりきていたら、
「大丈夫ですよ。今回のこの4大精霊王を一気に早いレベルで召喚できる技はこれしかありませんが、今後、火の山、麗しの湖、峡谷の洞窟、風の谷の各場所でそれぞれ最奥まで進めば、各精霊王と親交が深められるようになっているので、隅から隅まで残さず進めば必ずどこかで出会えていましたよ。
ここの神はできない約束をしてごまかすことはされませんから、あなたが望む願いはあなたがあきらめない限り実現できるものですよ。」
それを聞いて一気に安心したのと、目の前の麗しの方々の前で、脳の許容範囲を超えたのか気を失ってしまったようだ。気づいたらダンジョンのセーフティゾーンに寝かされていて、精霊王たちが好き好きにおしゃべりしているのが聞こえてきた。
「それにしても神の気まぐれの救済処置が本当に発動されるとはな。さすが神だな。」
「4人揃って召喚されるのも良いわね。前回のプレイヤーはいつでもわたくしだけしか召喚しなかったので、あなた方とお話しができるのは嬉しいわ。」
「あいつは、女好きだったから、あいつより男前の俺や風のが出てくると困るんだろう。土のは登場すると、うるさいだろうし。」
「わしはそれほどうるさくしないぞ。でも奴はダメだったな。」
「ああ。ハーレム作って無双すると言っていたが、ハーレム内の女どもを上手く纏められず、無双できる力を与えてもらっていたのに、他のパーティ仲間とうまくできず、最後まで小物で終わったな。」
「ハーレム無双の成功例をどれだけ多く読んだところで本人に人を動かす才覚がないと終わりだからな。何ひとつ努力なしに物語と同じように進むわけがないのに、ハーレムの女性もすべて生身の女性だということをすぐに忘れる。都合のよい展開しか求めない。」
「彼は最初の設定でせっかくイケメンにしてもらったのに、心が卑しいからそれが滲み出してダメだったわね。どうして表面1枚だけの顔の皮だけを取り換えれば、誰でももてるようになると思ってしまうのかしら。人が惹かれるのはそれだけじゃないのにね。」
精霊王たち、容赦ない。
「あら。気が付いたかしら。」
水の精霊王がにっこりと微笑む。さすがに精霊王眩い、美しい。麗しい。
ちょっとどぎまぎしてしまう。
「困っているみたいだけど、本当に、わたくしたちを必要な時に召喚してよいのよ。例えば、あなたが今この町の、すべての種類の素材を採取しつくしたのか教えて差し上げることもできるのよ。」
と軽くウインク!
ああ、素材の取りの残しがないかどうか教えてもらえるのはものすごく有り難い。ん?図鑑コンプリートのために素材採取しているってお話しをしましたっけ?
「あら、わたくしたち、神の下に直につながるものとして、あなたのこともわかっているってお話しましたよね。あなたが何故ここにいて、何をすべきなのか全部知っていますわよ。
そして怪訝な顔をされていますが、わたくしたちはあなたが何を考えているのかも全部わかりますの。そういう仕様なんでしょう。神からは召喚されたら、手助けをするようにお願いされているの。それが、わたくしたちの存在意味だから、遠慮なく呼んでいただきたいの。」
「俺は火の山の溶岩の温度を下げることができるぞ。おまえが火の山で採取をする時にいろいろ便宜を図ってやろう。」
火の精霊王がどや顔で報告すると、
「わたしはあなたが手の届かないところに実っている木の実など、すべて取りつくして差し上げますよ。」
風の精霊王もいいところを突いてくる。
「わしは地面の中、鉱山でレアメタルが多く採取されるシークレットゾーンに案内することができるぞ。」
これまたどや顔で土の精霊王が言い放つ。
皆、さすが精霊王だ、最初ぱしりなんて恐れおおくてお願いできないと思っていたのに、自分が本当に断れないような魅力的な提案ばかりで本当にお願いしてしまいそうだ。
わたしがもうほとんど拒絶できないことをわかっている上で、にやにやと火の精霊王がダメ押ししてくる。
「俺らがいれば、おまえ、この世界行けないところは何ひとつないぞ。行きたいところへ行ける。魔王の城にさえ、連れていくだけなら行けるぞ。」
ああ、最終移動手段の飛行船を手に入れてしまった気分。
「ええ、モンスターの戦いなど、争い時には回復魔法を使用するなどの支援も含めて一切介入はしませんが、それ以外のことであればお手伝いさせていただきますよ。」
風の精霊王はイケメンで穏やかでかっこいい。
ローズさんの時には迷惑をかけることがネックになって無理だったけど、精霊王の申し出は魅力的だ。
「若輩者ですが、助けていただきたい時には召喚させていただきます。その代わりわたしは精霊王方々に何を提供すればいいんでしょうか。」
「もう、マキノちゃん真面目すぎる。可愛すぎる。」
水の精霊王にむぎゅっと抱きしめられておろおろしていると、
「何かをしてもらったからと何かを返されなくても良いのよ。わたくしたちがマキノちゃんの手伝いをするぐらい迷惑にならないのよ。そうね。あなたが道を歩く蟻に砂糖粒を少し気まぐれに与えた時に、蟻から何か返して欲しいと思う?」
「蟻にお返しを要望・・・考えないです。自分がきままに砂糖置いて何か返せとは思えません。」
「そう、わたくしたち精霊王の寿命の長さは人間の比じゃないの、もしマキノちゃんが一生こっちの世界にいたとしても、その間お手伝いしつづけても、一瞬のことなの。
神の気まぐれと同じなのよ。負担にも迷惑にもならないの。それにマキノちゃんに関わるのは楽しそうだわ。」
「おう、だから、いつでも召喚するがいい。お前には興味がある。」
火の精霊王が言うと皆が頷く。
「それでもマキノちゃんが何か一方的にもらうだけが心苦しくて何か返したいというのであれば、わたくしたちはマキノちゃんの戦うところが見たいわ。」
と、可愛くおねだりされてしまった。さっきから水の精霊王にはマキノちゃん呼びをされて、いい歳なのにちゃん付けで呼ばれると恥ずかしくて仕方がないんだけど、
「マキノちゃんは可愛いから良いのよ。」
にっこり微笑まれる。美しい人は何しても美しい。
二人でちょっと見詰め合ってしまったところで
「俺もマキノの戦っているところ見たいぞ。」
「わたしも見てみたいです。どのように戦えば、均等に全属性の魔法を上げることができるのか興味があります。」
「わしも!わしも!」
という感じで眩しい方々が、後をついてこられる。
「見てもそんなに楽しいもんじゃないですよ。」
「そりゃ、モンスターと戦っている本人は命がけだから楽しいもんじゃないわな。」
いやそうじゃなくて、わたしの戦いには経過がないんだけどなと思いつつ、5人でダンジョンを歩いていると「鬼蜘蛛」が出現した。
「鬼蜘蛛」がこっちに攻撃を仕掛けてくる前に、いつもどおり「えいっ」と声掛けたら、瞬間ドロップアイテム「鬼蜘蛛の糸」が落ちていた。
蜘蛛はあまり好きじゃけれど、ドロップアイテムは使えるからにんまり拾っていたら、精霊王さん方が固まっている。
「マキノ?今、何をしたんだ?」
「マキノちゃん、早すぎて何も見えなかったのですが。」
「目が悪くなったのか、気づいたら終わっていたのだが。」
「なんじゃ、なんじゃったのだ!!」
えええ、そんなことを言われてもいつもどおりなんだけどなぁ。いつも瞬殺仕様だから他の戦い方知らないし、ええええっと。あ、じゃもう少し時間のかかりそうな、もう少し強いモンスターの場合は瞬殺といえども、もう少し時間がかかるのは事実。
「では、ダンジョンボスの部屋に一緒に来られますか?今よりもう少し時間をかけることができると思います。」
「なんじゃ、ダンジョンボス相手にマキノは余裕じゃな?」
「マキノ、いいのか、俺らは戦いに一切介入できないぞ?」
「そうよ。マキノちゃん、無理しなくて良いのよ。」
「大丈夫ですよ。精霊王方々。記憶読んでいただいても大丈夫です。ダンジョンボスは、既に3回は倒したことがあるので、今のMPで十分いけますから。」
そういいながら、慣れた足取りでダンジョンボスの部屋までさくさくと歩いて行く。他の冒険者は誰もいないのでボス戦に待つこともなく挑戦できる。
扉をあけると、こっちに気づいたボスが3体9個の頭がこっちを見る。ダンジョンボスは1体2mぐらいはありそうな巨漢の「ケルべロス」。
速攻で向かってきたので、いつもどおり「えいっ」と声掛けすると、いつもより時間はかかるが、「ケルべロス」たちが消えてドロップアイテムが落ちていた。いつもは秒殺だが、さすがにダンジョンボス5秒はかかっていたと思う。MPもごっそりなくなる。
「マキノの戦い方は毎回こうなのか?」
「ええ、これしか戦い方知らないんです。」
「今度はわかりましたよ。わたくし属性の水魔法が確かに使われていたことを感知できましたわ。」
「あ、俺もわかった。火属性魔法が使われていた。それも全体魔法のかなり威力の大きいやつだ。」
「わたしも感じました。風魔法が他の魔法と同時に発動されていました。」
「土魔法も一緒にミックスされて、1種類で使うよりも相乗効果が出ているようじゃな。ただ、そう感じられただけで目には見えなかった。わしらだからこそ感じられただけで、普通の人間にはさっぱり何がなんだかわからんじゃろ。」
「この魔法は、最初、喧嘩1回もしたことがない。人を殴ったこともない、魚も捌けないようなわたしが、リアルモンスターを目の前にして、とうてい普通じゃ戦えないのがわかっていたのと、アイテム収集で先に進みたい時にモンスターと戦う時間が勿体ないと思ったのと、ゲームと違ってリアルに戦うことで血や内臓を見たくない。血みどろのモンスターの絶叫を聞きたくないのが相まってこんな感じになってしまいました。」
「マキノちゃんは優しいのよ。」
そう言って水の精霊王はマキノを抱きしめてくれたが、
「いいえ、わたしはズルいのです。本当に優しいのであればモンスターと戦わない方法を取れたでしょう。でも、モンスターのドロップアイテムや素材は欲しかった。自分の手を汚さず必要なものだけ手に入れようと思う。ズルい魔法なんです。」
「マキノ、いいんだよ。それで。誰しも苦手なものはある。それを自分の知力で乗り越えて欲しいものを手に入れることはズルいことじゃない。マキノは他の冒険者が手に入れたものを脅して取ったわけじゃない。正当にモンスターと自分の魔法で戦って得ているんだ。もっと胸をはればいい。」
「自分が目標を達成しようとする時、誰かを陥れようとするのは間違っているが、モンスターを瞬殺する魔法を強く願ったことは間違いじゃないよ。」
水の精霊王はただただマキノを抱きしめてくれている。
マキノは自分のすべてを知覚できる存在が、自分のことをわかってくれている上で抱きしめてくれることが、心も体も全部こんなに温かくなるなんて知らなかった。
何がどう説明していいのかわからないけれど、言葉にできないところで自分は許されていることを感じる。ギルド長といい、こっちの世界は自分を受け入れてくれる人が多くて逆に戸惑ってしまう。
「水の精霊王さん。」
言いかけて軽く制止される。
「マキノちゃん、そんな他人みたいな呼び方をしないでおただきたいの、これからはシーラと呼んでくださらない?」
「し、シーラさん?」
「違うわ、シーラ。さんはつけないで。」
にっこりされたので観念して
「シーラ、別れる前に教えてください。ここのダンジョンの素材は全部取りつくせていますか?」
安定のマキノに戻ってシーラもほっとしたようで、
「では、マキノちゃんが取りつくすまで、ご一緒しましょう。24階の隠し部屋が手つかずですよ。」
精霊王の方々のお蔭でダンジョンアイテムすべて制覇できたので、久々に地上に戻ってきた。ほぼ2週間ぶりになる。外の空気は美味しいし太陽は眩しい。少し浦島太郎状態だけど、とりあえずギルド長に報告しにいく。




