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2番目の町から次の町へと採取と錬金をしながらゆっくり進む。HPMP全回復「テント」があるので、何の心配もない。
「テント」は「中級結界石」で改訂することができたので、「テント改」となって、益々安全性が高まっている。「テント」の中にさえ入れば、このあたりのモンスターも怪しい人も手も足もでないようになっている。
「テント」の中は相変わらず最初に泊った宿屋仕様のままで特に不便を感じていないし、この仕様に慣れたので、ここで錬金に励み、時々ベッドに腰掛けタブレットの図鑑をただ眺めては寛いでいる。一番好きな時間かもしれない。
図鑑が埋まっている量としては全体の数パーセントぐらいで1割もいっていない。でも、後まだ埋められるアイテムがたくさん残っているというのは喜びでしかない。
3番目の町、本格的ダンジョンのある町が見えてきた。今までの2個の町と比べかなり規模が大きい。ダンジョンに挑戦する冒険者も多いだろうし、ドロップアイテムを取り扱うショップも多いんだろう。
1歩町に入るとかなり賑わっていて活気もある。新しいアイテムに出会えるのは楽しみだけど、町全体として人が多くてちょっと苦手だなと思ってしまう。
なるべく他の人の目に入らないように、ギルド長室に忍び込むと、
「よっ。やっとこっちたどり着いたか。2個目の町に1週間はかけたよな。マキノは相変わらず真面目で丁寧だな。」
いつも通りのギルド長の反応に、知らない人ではなくこの人は知っている人だなと安心する。
相変わらずなので、早々にタブレットを手渡すと、ギルド長も相変わらずなのでいつもどおりデータを確認している。今回は怪しいことはしていないので、簡単に開放されるだろう。
「やっぱり。前回うっかり見落としていた。」
「え?何がですか?また変なレベルの上げ方していますか?」
「いや、レベルの上がり方が凄いのはもうわかった。『レベル24 職業空欄、HP3100/3100 MP3410/3800 武器なし 防具 旅人の服 魔法 風魔法レベル21 水魔法レベル21 土魔法レベル21 火魔法レベル21 錬金レベル37』
相変わらず他の冒険者と比べて上げ方が早いが、またバカみたいに昼も夜も一日中戦ってきたんだろうとこっちは推測できる。「ミノタウロスシリーズ」もコンプリートしたんだな。今は着ていないようだけど。」
「あれはダンジョンだから着てもいいんですよ。町でいかにもっていう感じで装備していたら恥ずかしいです。」
「そうか、珍しい装備を手にいれた奴は大抵自慢げに街中でも装備していることが多いけどな。まぁそれもいい。マキノならコンプリートすると思っていたから。
見落としていたのはな、「リンゴジュース」だ。マキノ前回見た時に図鑑の既に載っていたよな。あまりにも当たり前の「リンゴジュース」だったから、注意しなかったけど、これMP回復するんだな。」
「ええ、たった50ですがMP回復しますよ。」
「たった50だけどMP回復薬のレシピは見たことないだろう。」
「ええ、レシピになかったのでああだこうだと必死に錬金してみました。それでもやっとできた「リンゴジュース」が50しか回復しなくてがっかりして「テント」作ることにしたんです。」
「マキノはこっちの常識もちょっと知った方が良かったのかもな。こっちの世界ではMP回復のアイテムを自分で作れる奴がいない。
作ることができないと初めから思い込んでいるからなのかもしれない。思い込みはすごいな。MP回復薬はダンジョンでレアドロップするが、それを持って帰ってどれだけ調べても高位の錬金術師であっても作れなかったそうだ。
優秀で高位な錬金術師にも作ることができないから作り出せないものだと信じられていた。それをマキノがMP回復薬が欲しいと願ったからできてしまった。これが意志の力なんだな。いったん存在しているものだと受け入れられたら、瞬く間に皆に受け入れられてすごい勢いで周知されているよ。この「リンゴジュース」のお蔭でダンジョンを攻略しやすくなったのは確かだ。
マキノのこの世界への影響力のひとつ目だな。もしかしたら、今まで存在していなかった、もう少しMPが回復する薬を他の錬金術師が見つけることになる日が来るのかもな。それがちょっと楽しみだ。」
「どうしてMP回復薬は作ることができなかったんでしょうか。わたしは「リンゴジュース」作らない方が良かったのですか?」
「たぶん今までの錬金術師はダンジョン産のMP回復薬そのものを作ろうとして作れなかったんだと思う。マキノはその存在を知らなかったから人が作れる範囲でのMP回復薬が作ることができたのだろう。マキノが欲したからできたのであればそれはそれでいいぞ。お前が世界に与える影響を調べるのが今回のテストだから、いろいろやってくれ。」
「それにしても「リンゴジュース」は自由レシピで作ったけれど、図鑑の最初の方のページに掲載されました。図鑑の空いている枠から想像してできそうだとは高位の錬金術師にもわからなかったんでしょうか。」
「マキノ、最初に伝えたと思うがここの住人はタブレットを認識できない。だから図鑑の存在も知らないから、最初のページに空きがあるから作れるものがあるはずだとか当たりをつけることはできない。大抵が過去の優秀な錬金術師が成功したレシピどおりに作るのが普通の錬金術師なんだ。」
「ああ、そういえばそうでしたね。タブレットが無いから図鑑も見ることができないんですね。それは寂しいですね。錬金も採取も魅力が半減しますね。では普通の人はタブレットなく錬金するのですね、あ。では、こちらの世界の普通の錬金術師はどのように錬金されているのでしょうか。」
「タブレットを使わない錬金術については、どっちかといえば、祈りだな。意志の力が魔法になる世界だ。錬金は祈りや想いで作られることが多い。
素材があれば、たぶん、タブレットがなくても、この世界に居て、それだけ錬金レベルが高いマキノはこっちの住人同様に祈りで錬金することもできるようになっていると思うぞ。おまえのびっくり「テント」は半分そっちの力だと思うからな。」
「祈りや想いで錬金ですか。それはそれで面白そうですね。さっそく何か作ってみたいです。えええっと。武器を自由レシピで作るのが下手なので、祈りで作ることができるのであれば図鑑埋めが捗りそうですね。」
そう言うと目を閉じ必死で集中してみる。欲しいものの色や形や能力、効果、レベル細かく頭の中で思い浮かべているとあわせた手の平が熱くなってくる。目を閉じていても光を放っているのがわかる。しばらくそのままでいると手にずしりと重さを感じたので恐る恐る目を開けると、思い浮かべていたとおりの小型ナイフが光っていた。
「ああ。できましたね。」
「おい。今、本当に目の前で作ってしまったな。初めてでそんなにうまく作れるものなのか、それちょっと貸してくれ。」
ギルド長に出来上がったばかりの小型ナイフを渡すとMPを2000近く使っているのがわかった。結構取られちゃったな。
「マキノ、これ、ちなみに何を作ろうとしたんだ。」
「最近、採取する時に素手だと大変なものも出てきたので、採取する時に使えるような、軽くて錆びない手入れが楽でよく切れる手にすっぽり収まるようなナイフが欲しいなと思って作りました。」
「ああ、確かに軽くて錆びない。よく切れる、「ミスリルナイフ」だよこれ。かな~りいいものだぞ。マキノの現在のレベルで手に入れるのはちょっとしんどいものだ。よく作れたな。」
「ギルド長のお蔭です!!この方法はいいです。自由レシピよりも簡単です。」
「いや、普通それほど簡単にできるようなものじゃないから、マキノの思う力想像力のレベルが思った以上に凄いんだろう。
それにそもそも必要な素材がないと完成もしない。マキノがここまでの町に来るまでにどれだけレアものの採取をしてきたのかがよくわかったよ。」
「図鑑も埋まるし、祈る力で物を生み出すことができるなんて、得難い体験ができて幸せです。」
常日頃は無表情なマキノだが、図鑑のことを語る時は本当楽しそうで嬉しそうだ。それを眺めて俺も一緒になんだか嬉しくなってきた、この世界でマキノの喜びが見つかったことはテストとしても順調な証拠だからだ。
だがマキノはすぐに通常モードの真顔に戻る。
「ギルド長、ここの町の本格的なダンジョンの情報を下さい。」
「ああ、前の町のダンジョンが初心者向けで5階だったが、この町のダンジョンはもう少し深い。30階まで存在している。10階ごとにセーフポイントがあって、いったんそこまでいけば、次はそこから続きが始められるようになっている。
各階にはセーフティゾーンも存在している。休憩したり飯を食ったりモンスターが出てこないようになっている。「テント」も張れる。5階毎に中ボスもいて、ドロップアイテムも充実しているから、レベルの低い冒険者はまずは5階から10階ぐらいでレベル上げをしている。
中堅だと10階まで行ってセーフポイントで登録して、また他に行ってレベルが上がってから再度望むパターンも多い。足を踏み入れていいのはレベル20ぐらいからで攻略レベルは45ぐらいだな。
中ボスもそこそこ強いしダンジョンボスも強い。ダンジョンボスが強いので最近攻略する冒険者は少ない。出てくるモンスターも多いが、その分レベルUPしやすいし、宝箱も多く短時間に復活するので、ずっとこのダンジョンを根城にしている冒険者も多い。中堅程度の冒険者にとって、旨味のあるダンジョンだと言える。」
「1階ごとにセーフティゾーンがあるのなら余裕ですね。1階ごと取れるだけのアイテムを取りつくしながら降りていくことにします。あ、そうなると1週間過ぎてもギルド長に連絡が取れなくなるかもしれません。」
「そうだな。マキノが集中したら長時間籠りそうになりそうだな。マキノ、さっきの祈りの錬金で通信器具を作れるか。」
「ああ。スマホですね。それは良いですね。ちょっと待っていて下さい。」
さっきと同じように目を瞑り祈る。祈る。ギルド長と連絡が取れますように。
また光が放たれたようだ。手に重みを感じるとスマホではなく水晶が2個手の平に載っていた。
スマホを作るのは材料が足りなかったのか。
失敗・・・残念・・・。
しょぼんとしてしまったマキノにギルド長が尋ねる。
「マキノ、今度は何を考えていた?」
「ギルド長と連絡が取れますようにと祈りました。」
「正解だな。マキノ。この水晶は、こっちの世界の連絡手段に使うものだ。今度は形を指定しなかったんだな。スマホを思い出さずに、必要な機能だけを思い浮かべたことで、持っている素材を使って、こっちの通信器具を作ることができたんだろう。」
「せ、正解ですか?この水晶で通話が可能に?」
「ああ。かなり便利だぞ。ダンジョン内で相手の顔を思い出せば繋がる。声も聞こえる。通話料金も要らない。」
ギルド長は水晶を1個手に取ると、
「これは大事に預かっておくよ。気をつけて行ってこい。報告楽しみにしているぞ。」
自分の好きなことをさせてもらっているのに、大事に送りだされてくすぐったい気持ちになる。もう1個の水晶を大事に握りしめるとマキノはギルド長に意を決して言った。
「電話は苦手なんで報告は簡単で良いですか。」




