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祭り(企画:石動多幸)

ここまでお読みいただいてありがとうございます。


アイハイロード王室は権威を取り戻せるのでしょうか?


ではでは~


ヘインリー家王都屋敷の食堂は静かだった。


夫妻が帰宅し、キャサリアも近衛隊本部から戻ってきた。

今、ヴェルンを加えたタコーの妻(自称)たちも集まっていた。


そこで侯爵夫人からの依頼がタコーに投げられていた。


<失墜した王室の権威を回復して欲しい>


「主様、どうか、お聞き届けいただきますようお願い申し上げます」


「キャサリア、ちょっと待て。なぜ、俺に依頼が来るんだ?」

「それは、・・・なぜでしょう?マミー、どうして?」

疑問を持たなかったキャサリアは、タコーの一言で気が付くと母に尋ねた。


「それはね、王女殿下(ジョシティアちゃん)が未来の旦那様にお願いしたいそうよ」

「うォッふ」


 = = = = =


「王女殿下の帰還の祝いに併せて軍のパレードを行う、とか?」

「パレード?」

侯爵も夫人も得心を得なかった。


 = = = = =


一巡間後、アイハイロード王国の王都は、お祭りのように盛り上がった。


兵科ごとに行進する隊列に王都民が目を見張った。

王都民は軍隊は知っている。

しかし、見かける姿は商隊の護衛など内務省の邏卒(おまわり)さんと変わらない。


隊列を見たことで、武力そのものと再認識させられた。


そして、その軍隊はたった一人に忠誠を誓う集団ということも併せて思い出す。

軍は王隷下の戦闘集団。

国王の力は否応にも誇示される。


ただ、それでは武力を背景とした恐怖政治になりかねない。


王都民が見たのは、沿道からの声援にも笑顔で応える兵士の姿だった。

花束を受け取る者、恋人だろうか頬に接吻される者、知り合いに合図を送る者など情を持つ者たちに見える。


大通りに特設された臨時の玉座の前では、一糸乱れぬ隊列を組んで見せ、王都民には笑顔で応える。

頼もしくも優しい兵士たちに映った。


 = = = = =


いよいよ近衛隊と王女殿下の順番が来た。


王国の旗と王女の旗を掲げた2騎の近衛騎士が先導する。

近衛騎兵が外周に配置され、近衛騎士の騎馬が護衛する4頭立ての4輪馬車、屋根のないキャリッジにジョシティア王女殿下が腰掛けていた。


醜聞がささやかれる中でのパレード。

普通なら、晒し者でしかない。

しかし、タコーの仕込みで全く違う状況に導かれている。


ジョシティアの隣にフィーが寄り添う。


王女とエルフ族の女性が並んでいる。

王都民はおろか王国高官、諸外国の外交官が目を瞠る。

エルフの領地<アーエルフル国>との外交の難しさは有名で、友好関係にあるのは帝国、ビリオネリタント大公国とされている。


王宮の発表で、エルフ族の統領息女すなわちお姫様が来訪中ということ。

目の前の馬車には、王女とエルフ族の女性が座っているということは、次世代で友好関係にあるということを示していることになる。


そしてジョシティアの美しさは、王国の誇りと謳われた以上に輝きに匂い立つような艶が加わっていた。


沿道の老若男女は、王国の誇りの帰還を心から祝った。


 = = = = =


殿の部隊が特異だった。

王国軍でも異質の傭兵部隊。

隣国出身者のみで構成される、金目当ての寄せ集めと揶揄される部隊。


実際は、弱小の隣国では働き口が無く、やむを得ずの出稼ぎ者がほとんどだった。

そんな立場のために王国民の正規部隊からは軽んじられ、それが元でケンカをしたりと問題が多く、市井に悪評が立つ。


そんな傭兵部隊が、このパレードでは注目を浴びる。

堂々と胸を張り、誇らしく2本の長い羽飾りを身に付けていた。

剣士は革の兜の左横に、弓兵は弓の先端に、槍兵は左の胸に。


そして噂を聞いた沿道で見物する者たちが口々に話す。

「2本の羽飾りが忠誠心を表しているそうだ」

「1本は国王陛下、残り1本は部隊の仲間たちだそうだ」

「戦死したとき、羽を墓標にするそうだ」

「愛する人に忠誠を誓って、羽を送るらしい」

その噂を聞いて、感動した見物人から声援が送られる。


傭兵たちは一層胸を張り堂々と行進を続けた。


噂は全部嘘。

タコーのでっち上げたでたらめだった。


しかし、傭兵部隊のおかげで今回の企ては成功したのだった。


 = = = = =


傭兵部隊の後ろから、交通制限が解除されていくと子供たちが行進の真似をしてついていく。


その先の広場では、屋台が立ち並び、兵士たちが飲食していた。


食事のほかにお菓子の屋台もある。


見物人たちが遠巻きに眺めていると磨かれた甲冑に身を包んだケンタウロスがポコポコと歩いていく。

最前列の子供の目線までしゃがみ、手に持っていたお菓子を渡す。

立ち上がると見事な金髪が流れる。

「さあ、みなさんもいかがですか?」

おずおずと見物人が屋台の方へ広がっていく。


傭兵部隊の隊長が大声で叫ぶ。

「俺たちのおごりだ、みんな好きに食って飲んでくれ!」

わぁーと歓声が上がる。


「あんまり食われると給料日まで水しか飲めなくなるけどな!」

笑いが起きる。


屋台の半分が兵站部隊の臨時屋台で、軍の捻出した費用で訪れた王都民に振る舞う予定だったが、王都の商工会が食材の提供を申し出てきた。

安いとなれば、奢りだと大盤振る舞いをする商人や貴族も少なくなかった。

貧困でない者たちは、代金を支払っていたので収支は少し黒字だった。


のちにこの収支は国王の名で公開されたことで軍の公平さが強調され、信用度が増すこととなった。


王室の権威は見事に回復した。

いかがでしたか?


タコーの企みはうまく運んだようです。


次話をお待ちください。

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