祭り(仕込み)
ここまでお読みいただいてありがとうございます。
パレードは大成功でした。
それには仕掛けがあったのです。
ではでは~
この世界では、出征や凱旋くらいしか軍隊が行進することが無かった。
その行進も見せるためではないので、ただ兵士がぞろぞろ歩くだけで見苦しくない程度でしかなかった。
「主様、もしかして、ビリオネリラントの真似をするってことですか?」
「真似。・・・うん、まあ、そんなところだ」
タコーは、キャサリアの問いにどこか納得いかない答え方をした。
キャサリアは、騎兵時代に商隊の護衛でビリオネリラントを訪れたことがあった。
その時、大公都の中央大通りを行進する兵士の隊列を見たのだった。
統制のとれた隊列の行進は確かに見ごたえがあった。
しかし、それが王室の権威とつながるのかわからなかった。
「俺の提案は、こうだ。大通りを軍隊が行進をする。兵科別にだ。装備は磨く、服装は清潔に。そうして、近衛の隊が王女を護るように民衆の前を通過する」
「なるほど、それならば、軍を統べる王室を誇示できそうですね」
キャサリアが提案の意味がわかりかけた。
「王女は、上品で包容力を前面に押し出して、微笑み手を振って、民衆の声援に応えるんだ。兵士の家族が声援を送るのがいいだろうな」
「扇動者を用意するんですね」
「さすがはマリア。軍師が務まりそうだな」
「ありがとうございます」
マリアは微笑んだ。
「フィーが王女の隣に座れば、決定的だろうな。頼めるか?」
「聞くのは愚か」
「ありがとな」
フィーの快諾に礼をいうタコー。
「これからが一番重要なんだが、行進の後、屋台に誘導して、格安で飲食を振る舞う。王女が無事に帰還したんだ。お祝いしても構わんだろ」
「ねえねえアニキ、行進だけでも充分じゃない?」
ここでココモの中で疑問が湧いてくる。
「民衆にとって、王室は権威があってもいいんだけどな、それで生活ができてるわけじゃない」
「ご飯はうれしいけど、食べちゃったら、終わりじゃないの?」
ココモは、今一つ納得していない。
「そこだ。行進を終えた兵士たちが食事を始める。その兵士たちが気さくに食事に誘うとしたら?」
「同じ釜の飯ですか?」
聞いていたコッカが経験をもとに予測を口にする。
「兵士達は、緊張から解放される。食事も相まって、会話も弾むだろ?」
「にぎやかは好き」
フィーは、ワクワクしてきた。
「まあ、そこまですりゃ、少なくとも反抗的な勢力の抑え込めるだろ」
タコーが仕掛けた企みの入り口だった。
= = = = =
ヘインリー家からの提案で、ジョシティアの生還を祝って、軍の行進と閲兵を行うことになった。
決め手は、事情を知る者には明快な理由だった。
マリアの一言。
「わたしは賛成です」
謁見の間の隅に居たマリアが言った。
「お、おお。じゃあ、余は異存ないぞ」
『俺が提案した時と態度が違うじゃんか』
『あなた、いいのよ。結果が大事なんだから』
侯爵をなだめる夫人だった。
「ごめんなさいね。多めに見てくださない」
「うむ、まあ、付き合いも長いしな」
妃が夫と旧友の侯爵の間を取りなすと侯爵も流す。
「馬!お前、今、妃と俺の方が付き合いが長いとか思ってただろ!妃は俺の妃だからな!」
「ふっ。取り乱すなよ。べつに人妻にちょっかいを出すほど野暮じゃねえよ」
「くっ」
相変わらずの国王と侯爵だった。
= = = = =
「主様、兵たちの練度もさることながら、やる気がありません」
「だろうね。近衛ならまだしも、一般兵はたらたら歩くのが精いっぱいだろ」
「お判りなのになぜですか。このままでは王室の権威が・・・ハッ、もしや王室を瓦解させ、殿下を手中に、痛!」
キャサリアは、見事な手刀を額に受けていた。
「俺はジョシティア含めて、お前たちにはいい嫁ぎ先があれば、良いー痛い痛い」
タコーは言い終る前に身体中を妻(自称)たちに齧られていた。
歯形をさすりながら言葉を続ける。
「まあいいか。キャサリア、明日、軍の中で一番下に見られてる部隊に案内してくれ」
「はあ、それは構いませんが」
「まあ、見てなって。人心を操作してやるから」
「主様、本当に・・・」
= = = = =
次の日、タコーは、妻(自称)たちを伴って悪評高い傭兵部隊がいる練兵場にやってきた。
「わたしは近衛騎兵のヘインリーだ。階級は五十騎長である。部隊長は誰か?」
「あー、俺だ。ガヤ、階級は百卒長だ」
「ガヤ殿、閲兵式について、相談したいことがある」
「俺たちは傭兵部隊だぜ。近衛のお偉いさんとは管轄が違うはずだが」
「う、それは」
キャサリアは、ガヤの正論に詰まってしまった。
「あー、管轄は違うかもしれんが、タラタラしてるんじゃ、モテねえぞ」
「なんだ、お前。軍人じゃ、なさそうだが」
横から入ってきたタコーにガヤが不機嫌になる。
「お前たち、俺みたいにモテたくねえか?」
「「「はぁー」」」
タコーの言葉に数人が素っ頓狂な声を出す。
続けて傭兵たちが爆笑する。
腹を抱える者、膝を叩く者。
その様子をタコーが余裕で眺めていると隣のキャサリアは柄に手をかけていた。
「まあ、見た目はそうだな。お前たちの目は正しい。ところがだ、俺は意外とモテる。今、証明してやる」
タコーが合図するとココモを先頭にコッカ、フィー、ヴェルンが傍に寄ってきた。
後ろの傭兵からでも美形というのがすぐにわかる。
「でだ、彼女らは俺に惚れてる」
タコーのいきなりの言葉に娘たちは真っ赤になった。
「アニキ、いつもと違う」
「い、いきなりが困ります」
「愛してる」
「旦那、ウチはまだなんだけど」
キャサリアは固まった。
「っへっ、そんなハッタリに騙されねえぞ」
「「「そうだ、そうだ」」」
ガヤと部下の何人かがタコーにケチをつける。
「じゃあ、これで」
≪ポクッ≫
「もう! いきなりは、びっくりするからやめてよね。それから、今はもっと優しくして」
タコーは普通に殴られた。
急に胸を揉まれたココモが殴った。
しかし、ココモの表情に嫌悪感より充足感、それと催促が見てとれた。
給料日限定で酒場娘たちが見せる仕草と重なる。
傭兵たちに言葉を放つ。
「どうだ?モテたくないか」
いかがでしたか?
男は単純です。
次話をお待ちください。




