馬車隊での旅 その2
ストックがあるので、早々に次話投稿です。
お読みいただいて誠にありがとうございます。
ではでは~
停車の原因は、轍に乗り上げた馬車の荷物が崩れただけだった。
ただ、そのままでは車軸の一方だけに負荷がかかって、具合が悪くなるため、
荷物を積み直すための停車だった。
馬車隊は、予定より少し遅れて中継都市に乗り入れた。
小規模だが城塞都市としての機能を持ち、居住民だけなら自給自足が可能である。
「ほー、立派な城壁だな」
タコーが好奇心で眺めていると一騎の騎馬が寄ってきて警告を発した。
「おい、お前!見るんじゃない」
その高圧的な言葉にタコーは、キャサリアを手を握る。
感情的になる寸前に手を握られ、キャサリアは自分の取るべき態度を承知した。
「やれやれ、この程度の城壁がもの珍しいとは、田舎者よのう」
「すんません、子爵さまぁ。おいら、こんな立派な大里は初めてで、はぁ」
タコーは背を丸め、恐縮しきったように詫びの言葉を口にした。
「へインリー殿、その者は王国で裁かれる身。油断なさらぬよう願います」
騎馬の兵士はそう言い残すと持ち場に戻っていった。
「キャサリア、すまないな」
「主様、お気遣いありがとうござます。あの者の無礼な態度は、この身で償いますので、その・・・、宿で、いかようにも」
「コラコラ、若い娘がそういう方向に話を持っていくんじゃない」
「えー、そんなぁ」
キャサリアも最近ブレなくなってきていた。
= = = = =
「今から、しばらく眠れないかもな」
窓も什器の何もない部屋で天井を見ながら日本語でつぶやいた。
部屋は、戦時の武器倉庫らしく、錆と油の匂いが残っていた。
床は木が張られているが、板ではなく丸太を並べ平らに削ったようで、頑丈で軋みはしなかった。
おかげで、石のように体温が逃げていくようなことは無さそうなので、体調を維持できるだろう。
夕食はキャサリアが立ち会っていたが、食欲がないと手をつけていない。
キャサリアが同じものを食べていたが、配膳の時点で器に毒を仕込んだりと機会はいくらでもあるからだ。
キャサリアには悪いが、王国そのものを潜在的に敵として対処していくしか、生き残る術が見当たらなかった。
部屋に閉じ込められる前、身体検査を受けたが木の実を隠して持ち込めることができた。
何があるかわからないが、馬車で移動中は糧食の心配はない。
真っ暗な部屋の中、戸をノックする音が聞こえた。
『主様、主様。まだ起きておられますか?』
「キャサリアか?」
「はい」
最初に小声で聞いてきたのは、眠りを邪魔したくなかったのだろう。
彼女にはタコーの危機感は伝わっていない。
祖国の公正さ信じているから。
しかし、王女の私怨が絡みつき王国の正義は歪んでいる。
「キャサリア、生きているかと聞くべきだぞ」
「そ、そんな」
「それより、見張り番はいないのか?」
「はい。よく、わかりましたね」
「主様って普通に呼んだからさ。ところで、この建物は、火事にできるか?」
「なぜ、そのようなことを」
「閉じこめタ俺を上手く殺すなら、火事が自然だからな」
「そうですか。では、ご心配いりません。この建物は指令所で、その部屋は武器庫です」
「火事は無いか。ありがとう。ところで、キャサリア、誰かに見られては、まずいんじゃないか?」
「大丈夫です【ヤツは法術を使うので、兵では抑えきれない。操られても困るので、わたしを残して引き上げてくれ】と言っておきました」
「そうか、じゃあ、明け方くらいまで話相手になってくれ」
「はい!」
タコーが床に座ってそっちは大丈夫かと尋ねると彼女は夜具と毛布を持ってきたので大丈夫と答えた。
ふたりは、お互いの生い立ちや旅の話、食べ物のことを語り合った。
= = = = =
「キャサリア、キャサリア?」
返事は帰ってこなかった。
「おやすみ」
タコーは、戸の脇に座り直し、真っ暗な部屋を見つめて朝を待った。
= = = = =
乗客の泊まる宿屋の一室でハーフオークとケンタウロスと小神族の娘たちがおしゃべりしていた。
「アニキ、ちゃんとご飯たべてるかなぁ?」
「飲むは無いわね。食べ物も出された食事は食べていないわ」
「やっぱり、そうだよね」
「なぜ?」
いきさつを知らないフィーは疑問を口にした。タコーが兵士に連れていかれたことが理解できていなかった。
「タコー様は、この国には裁判で来てるのよ。わたしたちが居ないと間違いなく咎人」
「ボク達がアニキの無罪を証言すれば、大丈夫なんだけど。もともと罪をかぶせたのが、ここの王女なんだよ」
「王女が?なぜ?」
「自分を攫った○ん○んのでかいオークが、アニキに退治されて怨んでるの」
「よく、わからない」
「アイツは、でかいのが気に入って、楽しんでいたみたいね。タコー様が助けに来てくれるまで、オーク達にわたしたちも、・・・されたのよ」
「ふたりとも大丈夫?」
「ボク達はアニキが一番だから、ぜんぜん平気だよ」
「そう、タコー様のおかげで正気でいられるものね」
「平気?正気?」
「なんていうのかなあ、満足するんだよ」
「安らぐのよ。それでいて、怖いほど感じるの」
「ボクは悲鳴あげちゃうしね」
肌のぬくもりを思い出し惚ける二人。
「わたしたちじゃ、まだまだ最後までタコー様のお相手がしきれていないのよね」
「どうして?」
「気絶しちゃったら、アニキはそれ見て止めちゃうよね。そのまま捌け口にしてくれてもいいのにさ」
ココモは、フィーの問いに残念そうにつぶやく。
「ケンタウロスもオークも人族で扱いきれるはずはないのだけど」
「小神族は人族に近いから、まだ痛い」
「大丈夫?」
ココモは、儚い印象のフィーを気遣う。
「大丈夫。喪失の痛みは特別意味がある。何回でも歓迎」
「そんなの一回だから特別なんだよ。ボクは失敗したけどね」
「そうね、今となってはタコー様とも経験したかったわね」
「・・・」
フィーは、彼女らとタコーのいきさつは聞かされていた。
「たぶん処女に戻せる」
「「え!ほんと?」」
「蘇生法術の応用。小神族の寿命が長いのは、法力が溢れているから」
「それって、フィーだけじゃないの」
「ふたりとも魔力量が多い。法力に変換できれば法術は可能」
「それができたら、アニキに」
「タコー様と」
フィーの説明で、ニヨニヨが止まらなくなったふたりだった。
「ねえねえ、どうすればいいの?」
「わたしが第一婦人になれば、大丈夫」
「ココモ、ちょっと始末したいエルフがいるのだけど」
「そうだね、今ならアニキもいないしね」
ニコニコと微笑みながらエルフとの間合いを詰めていくオークとケンタウロス。
「冗談。ちょっとお花を摘みに行ってくる」
フィーは、荷物をごそごそ探って、何かを持って部屋を出ていった。
夜、乗客の一人が、井戸端で馬車で見かけたエルフの娘が何かを洗っているのを見かけた。
フィーが部屋に戻った後、フィー達の部屋の窓に小さな布の何かが干されていた。
いかがでしたか?
タコーはいよいよ窮地突入です。
次話をお待ちください。




