馬車隊での旅 その1
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いよいよ、王都に届くところまで来ました。
ではでは~
宿を後にして、キャサリアに案内されて停車場に向かう途中で、軽く食事を摂ることにした。
規模は小さいが市が立っていた。
「活気があるな。それに、品物も充分そうだ」
「はい、国境に一番近い町なので、交易品の一部がここでも流通しています」
キャサリアが観光ガイドを務める。
「アニキー、ボク、腸詰めが食べたい」
「果実がいい」
ココモとフィーは、市の中にお目当てを見つけて指さす。
並べられた商品は、珍しさはないものの比較的質の良いものが豊富だった。
特に日持ちしそうにないものは、この市で売りさばかれているのだろう。
キャサリアとコッカは、肉を焼く匂いが苦手だったので、なるべく匂いの来ないところを歩いていた。
コッカは、八百屋の前で籠に盛られた根菜の中に覚えのある香りをかぎ分けた。
「タコー様、これはあの時の」
タコーは、コッカに呼ばれて、彼女の指さす先を見た。
「ああ、あの時のヤツか?」
「はい、あの香りがします」
「キャサリア、値段は?」
「一盛り300ネイル(約300円)です」
「じゃあ、買っておこうか、日持ちするしな」
「ハイ」
コッカは、タコーとはじめて出会った時を思い出し、ニヨニヨしていた。
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各々食べたいものを買って、歩きながら食べていた。
「えへへー、こういうの初めて」
「そういや、歩きながら食べる姿は見タことなかっタな」
「うん、遠出で急いでる時は、食べながら移動するって聞いてたけど、ボクそういうの無かったから」
「ココモは冒険者の経験もなかったの?」
「あるんだけど、じぃじ達が必ずご飯を作ってくれて、座って食べてたから」
「孫煩悩って聞いた記憶があっタな。まあ、行儀の良いのはいいことだ」
「え、アニキはこういうの嫌なの?」
「まあ、どっちかといえば、落ち着いて食べる方だな。うっかり落としたら落ち込む」
ココモは周りを見渡し、邪魔にならなさそうな軒先を見つけて、そこでしゃがんで食べ始めた。
手を振り、みんなを呼び寄せる。
「タコー様は躾上手ですね」
「わたしもあっちで食べる」
「あ、あの主様、わたしは任務中以外は落ち着いて食べます!」
「大丈夫だよ。解るよ。貴族の礼儀作法の方が俺より数段厳しいだろ?」
「タコー様、せっかくですから、あちらに参りましょう」
「キャサリア、馬車の時間は大丈夫か?」
「はい」
「じゃあ、お行儀良く食べるとするか。まあ、俺は飲むけどな」
タコーは水筒を取り出し一口呷った。市で立ち飲み屋を見つけて、酒を入れていた。
「ふう、町中だと昼から飲めるからいいな。この後馬車に乗るだけだし」
そういうともう一口、口に含む。
「タコー様、昼からお酒は行儀以前の問題のような気がします」
ツマミを齧って、酒を飲む中年男にはコッカの諫言の効き目はなかった。
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乗合馬車は、馬車隊を構成し、数台が一組で移動する。
今回、利用するのは御者、護衛は軍が運営している便だった。
馬車隊を組むと乗客、荷物を分散し、一台当たりの負担を均等にし、馬車が故障したとき、部品を融通し合ったり優先する客だけ先行させるなどアクシデントに対応できる利点があった。ただし、この方法は、流通量が確保できないと運用できない。
このおかげで、ケンタウロス二人が馬車に乗り込み、王都に向かって出発することができた。
「みんな同じ便でよかっタな」
「はい、任務のおかげで主様と同じ馬車です」
「護送任務だし、ほかの乗客から隔離されるよな」
「あの、移動中にですね、その、馬車が揺れたときは、不可抗力なので、ご遠慮なく」
「何が?」
「抱きついてきてください。その、声は気を付けますので、それ以上のことも、痛い!」
キャサリアの頭に手刀が打ち込まれる。
「うら若い娘が、おっさんを誘惑するんじゃない」
「だってぇ。せっかくふたりっきりだし、甘えたいんですぅ」
「キャサリア、口調が替わっていないか?」
「ふぇ?そ、そうですか?」
ギギィィッ、ザッザッゥー。
突然、馬車が軋み車輪を滑らせ急停車する。
御者が制動器を使ったのだった。
進行方向側に座って居たキャサリアは、待ってましたとばかりに両手を広げる。
運悪く座りなおしていたタコーは、突発的な急停車でキャサリアの方へ転がりそうになる。
かろうじて彼女の背もたれに手をつき、壁ドンの体勢に持ち込めそうなところをキャサリアが素早く手を払い除けたため、身体を支えることもできず、がっちりと抱きつかれた。
「主様ぁ」
いつもより甘い声で頬ずりをしてくる近衛騎兵(非処女)。
キャサリアの甘い香りがタコーの鼻腔ををくすぐる。
『お、おい。こんなところを見られたら、職務怠慢で報告されるぞ』
キャサリアの腕をほどき、タコーは窘める。
「残念です」
しょげるキャサリア。
「キャサリア、何かあっタのか、確認してくれ」
暗殺者を始末したが、アーエルフルで滞在したとき、王女からの伝令が先に王国に到着していない保証はない。
この場で兵士全員が襲ってくるとこちらに犠牲が出ないとも限らない。
少なくともココモは、命を惜しまず剣を揮い続けるだろう。
「何かありましたか!?」
キャサリアは、近衛騎兵の声で御者の兵卒に尋ねた。
「ハイ、先行の馬車で事態発生!現在確認中であります」
「了解、報告を待ちます」
「主様、ご安心ください、命に換えてもお守りいたします」
「ありがとう、でも、気持ちだけにしておくよ。次第によっては、お前が一番つらい立場になるからな」
「主様、いえ、あなた・・・。まだ、この言い方が照れますね」
タコーは、キャサリアを優しく抱きしめる。
「はうぅぅ」
「俺はお前を簡単に捨てる悪い男だ。忘れるんだ」
「クフフ、ヘインリー家の女は、命の恩人を忘れるような恩知らずではありません。ましてや、捧げた方なら、なおさらです」
「俺の周りには、どうしてこんな不器用な女ばかり寄ってくるんだか」
「タコー様の不徳といたすところでしょうね」
ニコニコ微笑むキャサリアだった。
= = = = =
そのころ、先行の馬車では。
「アーニーキー、うー、アニキ成分が足りないよー」
馬車の中で暴れるココモ。
「ココモ、暴れないで。はた迷惑だから」
「だってー、馬2号とふたりっきりなんだよー。先に赤ちゃんできたらどうするのさー」
「ココモ、心配し過ぎ」
「馬車がギシギシ鳴ってるもん」
「走っているから、あたりまえでしょ!」
「エロオーク」
「じゃあ、フィーはエロエルフだよね。痛いのに何回もねだったりしてたし!エロエロフ」
「タコー様、ご苦労が判りました」
いかがでしたか?
タコーが結構危うい状態ですが、
娘たちはのんびりしたものです。
次話をお待ちください。




