ケンタウロスの献身 その1
新章スタート!
パフパフ、ドンドンドン!
二人目の登場です。
タコーは目を覚ました。
「・・・ここは?」
「よかったー」
「?」
「判りますか?森のなかで気を失っておられましたよ」
声がする方を見ようとするが、身体が重く頭の向きさえ変えられなかった。
「無理はなさらず。深手を負っておられましたゆえ、障ります」
「あなタは?」
声の主は若い女性のようだった。
「コッカとお呼びください。この木こり小屋に滞在しております」
「私はタコーです。旅をしております」
木こり小屋は、視野の及ぶ範囲は整頓されていた。
「お食事はいかがですか?お口に合えば良いのですが」
「すみません。何かお渡しできれば良いのですが、おそらくは何も持っていなかっタと思います」
「お気になさらずに。わたくしの気まぐれでございます」
配膳の準備を始めたようだ。
「失礼ですが、身分をお持ちの方かとお見受けいタしますが、なぜ木こり小屋に?」
「・・・」
「失礼いタしましタ。浅慮をお笑いください」
「申し訳ございません。今はまだお話しできません。ささ、スープを作りましたので召し上がってください」
コッカは慎重にタコーの身を起こし、スープを取りにかまどの方に歩いて行った。
パコパコと蹄の音がする。
会話をしているときには見えなかったコッカの下半身は馬だった。
ケンタウロスを見るのは生まれて初めてのタコーだった。
= = = = =
動けないタコーの傍らに座り、木匙でスープを飲ませるコッカ。
「粗末なスープで申し訳ございません」
「いえ、美味しいです」
タコーはコッカの上半身を見る。服の上からもわかる膨らみでコッカが女性であることを確信した。
「あの、ケンタウロスは初めてですか?」
「あ、ああ。申し訳ありません。私の国には居られない種族なので」
「お気になさらず。わたしは女です。半身は人族とあまり変わらないと聞きますが、わたしは人族をよく知りませんので、見た目では耳が異なるかと?」
コッカの言う通り、彼女の耳は長く、体毛で覆われていた。
食事が終わり、傷の手当てをするコッカ。
彼女は治療魔法が使えた。ただ、傷口を合わせて塞ぐ程度なので、治癒するには時間はかかる。
それでもタコーが失血で命を落としかねない状況から生き延びることができた。
「ひどい傷ですね」
「盗賊相手に暴れましタから」
「お強いのですね」
「いえいえ、助けていタだかなければ、死んでいる程度です」
「それでもあれだけの人数をお一人で退治したのでしょう?」
「ご存じなのですか?」
「はい、血の匂いで気が付きましたから。盗賊の死骸が累々と転がって、その先にあなた様が居られました」
「私一人の功ではないかもしれませんよ」
「でしたら、あなただけが残っておられることはありませんし、死骸は盗賊らしきものばかりでした」
「・・・」
「わたしは盗賊と無関係ですから、ご心配なく。ここに滞在しているのも偶然です」
「失礼いたしました。命の恩人を疑いまして。できましたら、お許しください」
「ご心配には及びません。身上をお話しできていないのはわたしの方ですから。魔力も切れますので今日はここまででお許しください」
「お手当て、ありがとうございます。いずれは、何かでお返しいタします」
= = = = =
タコーは眠ることにした。
身体が動かない以上、傷が癒えることに専念しなくてはいけなかったからだ。
眠りにつくまでの間、頭の中で状況の整理をした。
盗賊はある程度仕留めたが全滅させていない。
ココモ達の消息は判らない。
ケンタウロスの正体は判らない。今のところ、障害になりそうではないが、厄介ごとに巻き込まれる可能性はある。
傷はふさがってはいるが、激痛があることから、内側が癒着するまでまだ時間がかかる。
「ふう、動けるようになるまでどうしようもないか」
タコーが次に目を覚ました時、最大の危機を迎えていた。
尿意と便意を催した。
身体が動かない以上、知り合って間もない彼女に下の世話をしてもらうことになる。
川があればそこに放り込んでもらおうかと考えた。
用を足した後で体を拭ってもらえば一石二鳥だ。
早速、コッカにお願いすることにした。
「申し訳ないが、私を川に放り込んでほしい」
「川の水は冷たいので、そのようなことはできません」
「いえいえ、ご心配には及びません。大丈夫です」
「・・・もしかして、用を足したいのですか?」
「はい、ですのでお願いいタします」
「では、準備をいたしますのでお待ちください」
「判りましタ。お願いいタします」
コッカが表に出ると何やら音がする。
担架か何かを作っているのだろうか?タコーが考えている内にコッカが帰ってきた。
「抱えますので痛かったら言ってください」
「お願いします」
コッカはタコーを難なく持ち上げた。ちょっと驚いた。
小屋の外に出て、そのまま川に行くのだろうと思っていたら、小屋の裏手にやってきた。
「コッカさん、こちら側には道が無いようですが?」
「こちらで用を足してくださいな」
その場を見ると高さの違う丸太が組まれて、ちょうど椅子のようにも見える。
「さあ、我慢は身体に障ります。下穿きをお取りしますので」
「いや、ちょっと待ってください」
「大丈夫です。慣れているわけではありませんが、ご遠慮は無用です」
「遠慮などではなく、その、年甲斐もなく恥ずかしいのですが」
「深手で不自由な時に恥ずかしいなど言ってはいけません」
「ですが」
「しばらくあちらに行ってまいります。終わりましたらお呼びください。お拭きいたしますから」
「それが恥ずかしいのです」
「はて、二脚の方はそのようなことが恥ずかしいのですか?」
「はい、それに汚いものです」
「そうなのですか。わたしたちは場所を決める程度で恥ずかしいことはないのですが」
「!」
いわゆる馬なのだとわかった。
それからしばらくして、せめて腕だけでも早く動けるようになろうと決意を新たにするタコーがいた。
ケンタウロス、感覚が馬という設定です。
トイレには縁がないので、こういう話になっちゃいました。
番外編(18禁)では、この章直後の様子を書いています。
大人の方で、もしよければお読みください。




