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俺は再び訪れた

ここまでお読みいただいてありがとうございます。


新章の始まりです。


ではでは~

北方国。


この世界の多くの生物の北限に位置する民主国家。

指導者は、直接選挙で選出される。


過去に領主が存在したことはなく、北の魔王の勢力圏として外国の干渉を退けていた。

人族の開拓民が住みつき、いくつもの集落が出来上がっていく過程で国家としての素地ができていった。


魔王の提案で国家成立の宣言が行われ、鉱物資源の交易で外貨を獲得し、諸国と対等に条約を締結するに至った。


ただ、二年前、指導者による南下政策で隣国である帝国、ビリオネリタント大公国、アイハイロード王国と交戦状態となり、善戦したものの敗北し、いくつかの鉱山の利権を手放すことに陥った。

この戦争には、コッカは盟約により帝国の援軍として参戦し、キャサリアは騎兵として参加していた。


戦闘当初からケンタウロスの働きは目覚ましく、北方国の敗因の一つとまで語り伝えられていた。

タコーは、この噂を確かめ、国民感情を見極めるまでは、ふたりの安全の担保できないと考え、王国に残るようにしたのだった。


 = = = = =


国境の緩衝地帯。


関所があり、北方国側に入国する者は、通行手形を持っていないと入国税を支払い、手続きをする必要があった。

商隊の場合、比較的簡単な手続きで通過することができたが、どういうわけかいつもと勝手が違っていたらしい。


商隊に同行していた医者とその助手、その他数人が通行手形を持っていなかったため、入国税が徴収される。

あとは関所の通過証明書が発行されて、手続き終了のはずが、医者の身元をしつこく確認してくる。

確かに王国では、見かけない人種ではあるが、亜人と違って人族。

北方国での犯罪者でなければ、普通は素通りできる。

むしろ亜人の娘3人の審査のほうが長いはずだった。


亜人は、人族より肉体が強靭だったり、小神族のように法術に長けていたりと警戒の対象とされていたからだ。


 = = = = =


商隊が足止めを食らっていると北方国側から、騎馬が数騎駆けてきた。


商隊を率いていた商人は、非常に危うい立場に立たされたと考えた。


「あのー、衛士さま。あのお医者は、今回初めて仕事を依頼しておりまして、よく知らないんです」

「そうか。まあ、心配はいらん。ちょっと確認したいだけだからな」

「さようですか」

商人たちは、衛士が特に警戒している様子ではないので、ホッとした。


関所に駆けつけた騎馬の内、一騎が馬から降りて、報告のあった医者を探す。

北方国の各関所には、とある入国者を発見した場合、身柄を確保するように手配されていた。


タコーの前に馬から降りた兵士が片膝をつく。

その様子を見て、ほかの騎馬は下馬する。


「黒将軍、お会いできて光栄です。小官は、南東方面軍国境守備隊百人長を務めます【エドフ・ガリツァ】と申します。閣下の采配で壊滅した大隊におりました」

中年前の将校は、タコーと巡り合えたことを喜んでいるようで目が輝いていた。


「ガリツァ百人長、わたしは黒将軍ではございません」

タコーは、なんとなく心当たりがあったが、人違いと押し通すつもりだった。


「閣下、わたしは御尊顔を見知っております。閣下を見紛うなどありえません」

ガリツァは、確信を口にする。


「ふー。いきなり、大隊の生き残りに出会うなんてな。娘たちは仕事で雇っただけだ。できれば、王国に追放してくれ」

「アニキ!」「あなた!」「旦那!」

タコーの言葉が妻(自称)たちに不安として広がった。


「ほう、さすがは閣下。美しい伴侶が3人もいらっしゃるのですか」


「アニキの奥さんは、候補を含めると今9人だよ」

「奥方、それは誠ですか!」

ココモの言葉に驚きを隠せないガリツァ。


(9人・・・。ひとりからずいぶん増えたな。・・・何してるんだ俺は)


 = = = = =


「黒将軍、できましたら、お名前をお聞かせください」

「ガリツァ百人長、聞いてどうされるのですか?」

「尊敬する閣下のお名前を聞きたいだけです」

「尊敬・・・ですか」

百人長の言葉は、タコーの予想と違っていた。


大隊を壊滅させて恨まれこそすれ、尊敬されるとは信じられなかった。


「閣下とは刃を交えることになりましたが、村娘たちを救うために悪辣な振る舞いのお味方を殺めたと皆が存じております」

「あれは、たまたま気に入らないヤツだっただけです」

「運悪く命を落とした兵たちを弔って、いただきました」

「わたしの命令で死んだ者たちです。彼らは私を恨んでいると思いますが」

タコーは、ごまかすのは止めた。


日本人のタコーには、切り合い、血を流すこの世界の戦争も堪えた。


大公国軍は、初手で展開が遅れ、国境から深く押し込まれていた。

部隊の立て直しに取り掛かるが、北方国軍の追撃が迫る。

街道で見通しの利く位置に急ごしらえで砦を作ったが、割ける戦力はタコーが派遣された中隊だけだった。


自分が鍛冶師ラヒトに作らせた武器の数々。

弓に滑車をつけて飛距離を各段に伸ばした。

投槍器の提案したときは、理解されなかったが、試作品で100m先の的に命中させて見せたら納得した。

持ち手部分に把筒を嵌めた独特の槍、練度の低い槍兵でも突き出す回数が各段に増した。


攻撃力は革新的に増強された形となったはずだった。

中隊はそれらの装備の有用性を確かめる実験部隊の色が濃い。


射程が長くなっただけ大公軍側の戦闘開始は早くなる。

投矢、投槍すると多くの悲鳴が聞こえ、死体が無残に転がる。

一方的な攻撃で戦闘で終わる。


攻めてくる兵士たちをいとも簡単に屠っていく。

従来の戦争だと相手の矢を再利用し、射返し応戦するが北方国軍の弓では到底射程が足りない。

ましてや槍に至っては、数十m投槍するのがやっとで、槍として使うこともせず、ご丁寧に投げ返すようなものだった。

白兵戦を仕掛けられるほど近づけず、攻め手の正面戦力は瓦解した。


タコーは、まだ手当すれば助かる負傷兵の収容を提案するため、自ら敵陣に行ったことを思い出した。

ある伝手から客将として参加していたが、戦闘そのものは素人だから、軽んじられていた。

敵を圧倒している今、敵の死さえ怖がる臆病者と陰で嘲笑された。

武装と鎧を外し、両手を上げて歩いていく。


このまま殺されても死者の家族に償いきれないと思いもした。

お互い引っ込みがつかないにしても、死ぬのは兵士じゃなく将官たちで充分と思えた。


遺骸の転がる惨状を通り抜ける間に、死臭と血の臭いで鼻がバカになっていくのが解った。


北方国の陣地は、負傷兵で溢れていた。

自分の知識で進化した武器が、効果的に戦果を挙げたのを目の当たりにした。

抑止力になってくれればと提案したが、時遅く悪い方向で実を結んだ。


「負傷者の収容を提案しに参りましタ。その間、休戦をお願いできませんか。手当をすれば、まだ間に合います」


 = = = = =


「あの時、わが軍は愚かでした。閣下自らのご提案を臆病者の時間稼ぎだと笑い、助けられた命を見捨てることになったのです」

「・・・」

「閣下、結果はご存知の通りです。圧倒され撤退することになりました。この上なく惨めでした」

「雪辱を晴らすというのですね。娘たちは解放してください。聞き入れられないとなれば、ただでは置きません」

「閣下は、わたしの言葉を誤解されておられる。村娘たちの貞操、負傷兵たちを手当していただき、死者は手厚く弔っていただいたこと心より感謝しております」

「・・・」

「わたしは、閣下のあの顔を覚えております。兵たちは地獄の亡者悪鬼が這い上がってきたと噂しておりました」

「やはり、そのように見えましたか」

「はい、恨みと哀しみを押し潰し、涙に汚れ、戦(いくさ)のすべてを憎むお顔は、未だ形容する言葉を持ちません」

「それは買被り過ぎというものです」

「わたしは、小隊を率いて殿を務め、閣下の御手に手当していただいた者の一人だったのですよ」

ガリツァは、袖を捲って、古い矢傷をタコーに見せた。

いかがでしたか?


異世界の旅が続きます。


次話をお待ちください。

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