王国騎士団と脳内の悪魔
エミリアとひょんなことから二人で食事をすることになったニゲル。
お互い本が好きなことは薄々わかっていたが、
本の趣味も合うことに気づき、嬉しくなるニゲルだが……
◯登場人物
ニゲル
24歳。闇属性。
中央都市リーウルスのC区画の雑貨屋で働く。
エミリア
38歳。光属性。
ニゲルと同じく、リーウルスのC区画のマッサージ店にて働いている。
騎士団シリーズの第五章だけでなく、僕の好きな三章もエミリアさん好みであることを知る。
「ほんとにびっくりしちゃった! このシリーズって私が思うに好みが分かれるでしょ? 言い方は悪いんたけどニワカファンってほとんどが五章じゃない?」
おぉ、彼女の言っていることはホントにその通りなのだ。
ここで、騎士団シリーズの本について少しだけ話しておこう。僕が割と好んで読んでいるこのシリーズは全五巻……と言っても完結してるわけじゃなくて、ひとまず休載してるか何からしいけど、世に出ているものが五巻ということだ。
本に興味がない人には申し訳ないけども、騎士団シリーズの内容を説明すると、簡単に言うと王国騎士団のことについて書かれた本なんだ。
一章は、騎士団についての自己紹介。王国騎士団の編成やどうやって設立されたか、その運営などについて細かく書かれている。そうそう、これは噂なんだけど、著者は騎士団内部の人か、元騎士団とか関係者の人間と言われている。
二章は、騎士団の歴史について。歴史というとなんか大層だけど騎士団の活躍……というか、他国から国を護ったことや、今までにあげた功績などについて。
そして、今話していた三章は、騎士団内の腐敗について。これはまぁよくあることなのかも知れないけど、騎士団内での横領や、悪事を働く悪者を裁かねばならない騎士団が、悪い組織と裏で繋がっていたりと、まぁまぁリアルに描かれている。
四章は騎士団の衰退。騎士団長やその周りの幹部が無茶苦茶で、新しい新米騎士団がいくら努力をしても、良い人材が入ってきてもことごとく潰されたり、懐柔されたり、王国騎士団がボロボロになっていく話。
そして、今日持ってきた五章は、前にも話したけど新米騎士が、女性騎士団長と恋仲になるお話。そんなこと言うとエミリアさんは気分良くないかもだけど、僕と彼女みたいだよな……
「エミリアさん、なかなかのツウですね。僕はこのシリーズは何度も読んでるんですけど、五章の甘酸っぱい歳の差恋愛だけを読むのも、もちろん悪くないんですけど、それぞれ一冊完結で終わってるようで、結構繋がってることもありますからね」
彼女はパッと顔を輝かせる。
「そうそう! そうなのよね。騎士団の腐敗や衰退、そのお話を読んだあとだからこそ、五章の話が更に生きるというか、ただただ歳の差恋愛ってだけじゃなくて、実は裏で起こってる陰謀もあったり、それって三章四章を読んでいると、より深みを増すよね〜。ニゲルくんもっと飲もうよ〜」
僕もエールから、エミリアさんが飲んでいたサングリアに飲み物を変えた。
「僕の職場にも本を読んでる人は何人かいるんですけど、ここまで深く話が出来る人っていなかったから、嬉しいな」
「えっ、そうなのね。でも、私もそうかも」
自分が好きな本について深く語れる友人というのはとてもいい。特に僕の場合は仕事が仕事なだけにどうしても穿った見方をしてしまうので、心からそう思っていた。
「エミリアさんって好きな人とかいたりするんですか? あ、もしかして結婚してたり……?」
僕は少し酔いが入ってることもあり、そんな質問をしてしまった。初めての食事で普通ならそんなこといきなり聞かないよね。
ふと、彼女は悲しいような、切ないような顔をした。でも次の瞬間にはニヤニヤ顔をして僕にこう言った。
「はは〜ん、ニゲルくん。歳上のオバサンをたぶらかそうとしたってダメですよ〜! 今は好きな人はいないけど……あ、ちなみに結婚はしてたけども、今は悲しき独り身でございますよ〜。もう結婚なんてこりごりなんだから」
本気なのか、エミリアさんも少し酔っているのか、ふざけてなのかはわからなかった。
「あっ、すみません。嫌なこと聞いてしまって……僕はそんなつもりじゃなくて。でも、結婚はもう懲りたんですね。人を好きになることって、悪くないと僕は思うんですけど……」
「ニゲルくん、勘違いしてるかもだけど、結婚はもうしないっていうだけで。恋愛はこれからもしますします!……と言ってもこんなオバサン相手にしてくれる人なんて、いないのよね〜」
「恋愛は……」
僕はそのあとの言葉に詰まった。
恋愛はします。僕のこの脳天気な脳内の悪魔はなぜか、その相手が僕だと言っていた。
エミリアには離婚歴があった。
ただ、恋愛は別だというエミリア。
その言葉にニゲルは、とても都合の良い解釈をしてしまう。




