本が惹き寄せた出会い
図書館でエミリアの好きなカモミールのことを調べていたら、
たまたま彼女に出くわし、そして食事に誘われるニゲル。
さて、エミリアとのデートはどうなるのか。
◯登場人物
ニゲル
24歳。闇属性。
中央都市リーウルスのC区画の雑貨屋で働く。
エミリア
38歳。光属性。
ニゲルと同じく、リーウルスのC区画のマッサージ店にて働いている。
先日、ひょんなことからエミリアさんとデートすることになった僕は、もう前日からウキウキしていた。
僕……元々はこんなキャラじゃないんだけどな。
綺麗で、小柄で、可愛らしくて、そしていい匂いのするエミリアさんとデート……それを考えるだけで、前日にあった仕事もスパッとシャキッと片付いてしまった。
え、仕事ってなんなの? えーと……今のところは少し秘密にしておくね。またそのうち話すこともあると思うから。今のところは、街の外れの雑貨屋さんということにしておいてほしい。
◇ ◇ ◇
というわけで、デート当日の午後。
いつものB区画の図書館でエミリアさんと待ち合わせて、同じくB区画にある、お昼はカフェ、夜はバーになるという小洒落たカフェバーに行くことになった。
彼女がたまに利用するお店らしい。僕は普段あまり外食はしない。テイクアウトだったり、職場の店舗内で食べることが多いので、初めて見た店だった。
「ニゲルくん、緊張してるの? ここはそんなに気を張らなくてもいい気楽なお店だから、もう少しリラックスしたらいいのよ?」
「あ、いえ……緊張してるというか。エミリアさんと二人で食事というのがドキドキしてまして……」
彼女はニヤニヤしながらも、僕を店舗の奥の方にエスコートしてくれた。
店舗内は二階建てになっており、一階がカウンター中心の客席と厨房、二階はテーブル席やソファのあるBOX席が備えられているようだ。
「二階のほうがゆっくりできるから、上にあがりましょ」
僕は、彼女の誘導に従い、二階へ上がる。ここは店員さんも程よく配置されている感じで、現在のお客さんは、一人客も複数客も混在していて、騒がしいまではいかないくらいの、程よい活気具合だった。今の時間帯のせいもあるのかな。夜になるともう少し賑わうのかもしれない。
飲み物は僕はエールを、彼女はサングリアを頼んだ。サングリアとは、ワインにフルーツなどを入れて飲みやすくしているものだ。僕は飲んだことはないんだけど、女性が好みそうな可愛らしい見た目をしている。
なんとなく、エミリアさんが頼みそうな飲み物だなと、僕は思った。
「ニゲルくん、乾杯っ!」
「あ、エミリアさん、乾杯……」
僕はまだドキドキが収まらなくて、緊張気味のまま、彼女とグラスを合わせた。
「このお店のサングリアはね、フルーツの他に少し炭酸と、ハーブも入っていて、凄く美味しいの。ニゲルくんも少し飲んでみる?」
「は、はい……いただきます」
一口だけいただいたが、ホントに美味しい。スッキリとした風味で、ワインの独特の苦味がなく、そしてハーブの爽やかな香りもちょうど良かった。
「美味しいです! サングリアって初めて飲んだんですけど、全然ワインていう感じじゃないですよね?」
「でしょ? 私も初めて飲む時はワイン大丈夫かな、って思ったんだけど、飲みやすいよね。あ、食べ物も色々頼みましょ、ここは魚料理が割と人気なの」
常連とまではいかないみたいだけど、何回か利用している彼女に、ここは任せることにした。
お魚の刺身と、煮魚、あと季節の温野菜の盛り合わせを頼んだ。僕もそんなに沢山は食べないんだけど、彼女も同じらしい。
「エミリアさんに聞きたかったんですけど……なぜ食事に誘ってくれたんですか?」
運ばれた料理をつつきながら、お酒もいただきながら僕は聞いた。
「ん〜、なんだろう。前からちょこちょこニゲルくんのことは見かけてたのよ、図書館で。少しお話したいなとは思ってたり。本が好きな知り合いができたらいいな、って」
本が好きな知り合い……か。というか、僕は気づいてなかったけど、見られていたんだ。
「え、全然気づきませんでしたよ、見られてるの。僕割と人の気配とかには敏感な方なんだけどな……おかしいな」
「ニゲルくんが?? もぉ〜笑わさないでよ〜。二日前の時も、私が近くにいること全然気づいてなかったじゃない」
確かにそうだ。ん……最近、感覚が鈍ってるのかな。
「でも本が好きなお友達がほしいのは、僕も同じだったから、嬉しいですよ。あっ、これ持ってきましたよ、騎士団シリーズ第五章」
前に約束していた、新米騎士が、ひと回りほど歳上の女性騎士団長と恋仲になるお話だ。
「わっ、ありがとぉ〜。嬉しいな、だってず〜っと探してたんだもの。まさかニゲルくんが独り占めしてるなんてね」
「あ……すみません、独り占めしてるつもりはなかったんですけどね。なんだか、騎士団シリーズは割と何回読み返しても面白いので結構手元に置いておきたくて。本屋さんで買えよっていう話ですけどね」
本を買うのは別にめちゃくちゃ負担とまではいかないんだけど、基本的には読んだら終わりの本に、そこまでお金をかけるのはどうかな、というくらいだった。
「あはは、まぁ私も、私の本ってわけじゃないから文句は言えないんだけどね。五章も好きだけど、私もう一つ好きな章があるんだけど……ニゲルくんわかるかな?」
んー……僕が同じ騎士団シリーズで好きなのは、王国騎士団内の腐敗を描いた第三章なんだけど、彼女はどうなのかな??
「え、第三章……かなぁ?」
僕が答えた瞬間、彼女は目を見開いてびっくりする。
「えっ! ウソ! なんでわかったの?」
「あ、当たったんだ。いえ、僕が第三章のあたりも好きだからそれを言っただけなんです」
僕は少し照れながらも、エミリアさんと本の趣味も似てることを嬉しく思った。
エミリアの知っているカフェバーで食事を楽しむ二人。
ニゲルが声をかける前から、エミリアはニゲルのことを見ていたことを知る。
そして、本の趣味も似ていることを喜ぶニゲルだったが……
◯騎士団シリーズプチ情報
ニゲルとエミリアが話している騎士団モノの章ごとの内容はこうだ。
第一章 騎士団について
第二章 騎士団の活躍
第三章 騎士団の腐敗
第四章 騎士団の衰退
第五章 騎士団内の恋愛




