騎士団シリーズ第五章の本
図書館に来てエミリアが話していた、
カモミールのことを調べていたニゲル。
急に現れたのは、そのエミリアだった。
◯登場人物
ニゲル
24歳。闇属性。
中央都市リーウルスのC区画の雑貨屋で働く。
エミリア
38歳。光属性。
ニゲルと同じく、リーウルスのC区画のマッサージ店にて働いている。
「ちょっと〜、びっくりし過ぎじゃない? キミって面白いよね」
そこに居たのはエミリアさんだった。
「こんにちは、ニゲルくん」
「こ、こんにちは、エミリアさん」
不意を突かれてオドオドしてしまって恥ずかしいな。でも、またあの爽やかな香りがした。
「ごめんね、そんなにびっくりすると思わなくて。全然私に気づいていなかったから、少しぽんってしただけだったの……ニゲルくん何の本見てたの?」
びっくりしたのと、見てたのがカモミールのところだったので、尚更恥ずかしいんだけど。でも、今更隠すのも余計に怪しいもんね。
「あ……実はエミリアさんが話してたカモミールのことについて、このハーブ入門の本を見て調べてたんです。どんなハーブなのかなぁって」
エミリアさんは、僕の方を見て少し表情を変えた気がした。笑顔……ではなくて、なんて言うんだろう、微かに痛みを伴ったような表情って言うのか。でも、それはほんの一瞬のことで。
「そうなんだ、私が好きなハーブのこと調べて、何か悪さをしようとしたのかな〜??」
今度はおどけた様子で僕に返す。エミリアさんはなんだかコロコロと表情や仕草が変わって、見てるこっちが楽しくなる。僕もそんなエミリアさんに少し合わせてみることにした。
「実はそうなんですよね! やっぱり可愛くて綺麗な女性を口説くには、好きな物の共有からって言うじゃないですか〜!」
ちょっと言い過ぎたかな……? 今度はなんだか不満そうな顔をしている。
「ニゲルくん。オバサンをからかっちゃダメよ。君はまだ二十代でしょきっと。私はもうすぐ四十になる立派なオ・バ・サ・ン! ですよ〜!」
怒ったように言ってはいるが、ホントには怒ってないような。てか……全然そんな年齢には見えないんだけど。
「えっ! あの、エミリアさん、僕より少し上くらいかなと思ってましたよ。僕は今二十四なんですけど十も離れてないんじゃないですか?」
僕は思った通りの気持ちを伝えた。今度はむっとした表情のエミリアさん、あぁなんかそれも可愛いな。
「あのねぇ、ニゲルくん。歳上の女性に対してあまりにも低い年齢を言い過ぎるのも失礼なのよ。それよりも、本を探すの手伝ってくれない? なんだか腹が立ってきたわ」
そうなのか……僕はちょっぴりエミリアさんを怒らせてしまったことを反省しながらも、いつもより長く話せていることに、嬉しくなっていた。
「あっ、はい。手伝います手伝います。なんの本を探してるんですか?」
「騎士団モノの第五章を探してるんだけどね。前に来た時もなかったのよね……誰か隠してるんじゃないかと思うくらい」
騎士団モノ……僕はニンマリした。
「あっ、それって……騎士団の新入生が、ひと回りくらい歳上の女性騎士団長と恋仲になるお話ですよね??」
「えっ! なんで知ってるの?」
知ってるも何も、僕が連続で借りているお気に入りの本だからだ。今は店に置いてある。
「その第五章……今僕が借りていますもん」
「え〜っ! 君が借りてたの?? もぉ〜、信じらんな〜い。私この一月ほどまぁまぁ通って探してたのにぃ〜」
拗ねたようにしてるエミリアさんも可愛い。
「いや、すみません。知ってたらすぐ言ったんですが、知らなかったので。あ、次来る時に持ってきましょうか?」
「うんうん、あさってにまた来るけどニゲルくんも来るなら持ってきてもらってもいいかな? ていうか、ニゲルくん意外と乙女ちっくな本も読むのね?」
ぎく。僕が少女漫画大好きなのがバレてしまう。
「あ、いや、小さい頃から恋愛小説とかも読んでたりしたし、あっ、あと騎士団シリーズは恋愛だけじゃなくて、ハードボイルドだったり王国内の腐敗とか政治のことの勉強にもなるでしょ?」
「ん〜、第五章は恋愛だけだったような……まぁいいや。ねぇ、ニゲルくん。あさっての図書館で会ったあと、よかったらご飯食べに行かない?」
え。ご飯……ってデートかな。
「はいっ、行きます行きます! 喜んで!」
「あははっ、そんなに畏まらないでね。ニゲルくん、ホントに本好きなんだね。私も本読むの昔から好きなんだ〜」
エミリアさんはそうやって、飛び切りの笑顔を僕に見せてくれた。
たまたま出会ったエミリアと楽しく話すニゲル。
年齢のことや好きな本のこと、そしてエミリアから
食事の誘いを受けたニゲル。




