エピローグ〜逆境の中で咲く花〜
エミリアと再会することができ、真実を告げられるニゲル。
王国騎士団と組織の両方から追われることになる二人は、これからどうするのか。
ただ、今は抱き合うことしかできなかった……
◯登場人物
ニゲル
24歳。闇属性。
中央都市リーウルスのC区画の雑貨屋で働く。裏の顔は暗殺稼業
エミリア
38歳。光属性。
ニゲルと同じく、リーウルスのC区画のマッサージ店にて働いている。双子の姉が王国騎士団のスパイだった。
僕はこれから起こるかもしれないこと。二人にそれぞれ待ち受けているかもしれない悲劇を予感しながらも、ただエミリアさんを求め続ける。
それに対して、彼女も余すことなく応えてくれ、更に癒やしを与えてくれた。
「ニゲルくん……私、めちゃくちゃ幸せ……」
「ありがとう、僕も幸せだよ。ごめんね、僕なんかに関わったせいで、こんな目に遭わせてしまって」
彼女を抱き締めながら僕は言う。
「さっきも話したけど、結局のところ、私はスパイの姉と同じようなことをしていたんだから。むしろキミに出会えて救われたんだよ」
そう言ってくれる彼女は優しい。だって、いくら利用されていたとは言え、実の姉に僕は手をかけてしまったのだから。
「エミリアさん……これからどうしようか。エミリアさんは、どうするって決めてたりはする?」
「ううん、まだ何も考えてなくて。姉を雇っていた騎士団の幹部の人間が、きっと私を探してはくると思うけど。でも、ここを離れる前に最後にニゲルくんに会いたかったの。ちゃんと話しとかないと、と思い直したの」
彼女も色々と葛藤をしたんだろう。でも、僕が探し当てるかわからないとは言え、会えるようにしてくれてよかった。
ん? 騎士団の幹部……
「エミリアさん、騎士団の幹部の人間の名前ってわかる? もしかしたら、というか。たぶんそうだと思うんだけど……」
◇ ◇ ◇
それから数時間後。
僕はC区画の自分が働いていた雑貨屋で、ある程度の身支度を整え、長く住んでいたこのリーウルスの街を出るべく、歩いていた。
途中コンタクトを鳴らす。
相手の様子は、僕を警戒しているような、何を言えばいいのかわからないような感じだった。
「A区画の依頼は、完了したよ」
『えっ! 今日……ですか? というか、ニゲルさん。これからどうするんです?』
そりゃ、組織に追われる身になる僕が、きちんと依頼をこなすとは思ってもみなかったに違いない。
「彼女と共に街を出るよ。もちろん組織のことは一切話さないし関わらない。それだけで済まないことだとはわかってるけど……今回の騎士団の幹部の処理で、なんとか許してほしいんだ」
そう、エミリアさんから騎士団の幹部の名前を聞いた僕は、その人間が彼女の姉を雇っていたと同時に、今回の組織のターゲットだとわかったからだ。そいつを始末することで、組織の依頼もクリアできるし、一時的ではあるが、彼女に向けられる目を少しの間逸らすことができる。
『ボスには……なんて伝えたらいいんですか』
「光の女にかどわかされて、逃げたとでも言ってくれて構わないよ」
『ニゲルさん!』
「冗談だよ、ごめんね。こんな僕を拾ってくれてありがとうございます、と。そして、恩返しが途中で終わってしまってすみません、と伝えてもらっていい? じゃあね」
相手の返事を待たず、コンタクトを切った。
そろそろ街外れに着く頃だからね。
遠くに漆黒のローブに身を包んだ、小柄な女性が見えた。僕はその女性に手を振る。
彼女も控えめに胸のあたりで小さく手を振る。漆黒のローブで身を覆っていても、やっぱり彼女は輝いている。
「ごめんね、待った?」
「ううん、大丈夫。マッサージ屋さんに退職することを伝えてきたよ」
彼女はそういうところは律義なようだ。
「うん。じゃあ、行こうか」
僕はしっかりと、彼女の手を握った。
「エミリアさん……僕に付いてくることに後悔はない?」
彼女は歩きながら、答える。
「後悔はないよ、だってニゲルくんは、私が今まで出会ってきた人のなかで、初めてのなんでも話せるような人なんだもん。ニゲルくんこそ、こんな私でいいの?」
歳の差のことを言ってるのかな。
「エミリアさんと出会えて、僕は初めて安らぎというものを知ったんだ。それに話したり一緒に居て、楽しいと思えた。ずっと一緒にいたいな、って思ったんだ」
歩いている彼女の目に、薄っすらと涙が浮かんだ気がした。
「ありがとう、今まで行ったことのない街。行ったことのない国は、ちょっぴり不安はあるよ。でも……ニゲルくんとなら。二人ならきっと乗り越えていける気がする」
僕もそう思う。
「うん、何か危険なことがあっても、僕が守るよ。エミリアさんを危ない目に遭わせないようにする。その代わり、エミリアさんは僕のことをずっと癒やしてほしい」
彼女は、僕の方を向いて笑った。
「え〜! 私もキミのことちゃんと守るよ。私、意外と強いんだから。それにね、私がニゲルくんをだけじゃなくて。私もニゲルくんに癒やされてるよ」
エミリアさんのことを、とてもとても愛しいと。心から愛しいと思えたんだ。
「ありがとう。エミリアさん、愛してるよ」
「私も、愛してる」
キスをした彼女からは、いつものカモミールの香りがした。
僕が、暗闇の中で見つけたカモミールは、可憐で優しいだけでなく、逆境の中でも強く咲き誇る花だった。
そして、限りなく僕を。癒やしてくれる。
短い間でしたが、お付き合いいただき、ありがとうございました。
今回のエピソードで「カモミール〜逆境の中で咲く花〜」は完結となります。
異世界?恋愛?推理?という物語の展開だったかもしれませんが、皆様の温かさのおかげで執筆を続けることができました。
エミリアとニゲルの二人の旅はこれから始まるところですが、皆様の思い思いの想像をしていただけたらと思います。僕の予想では男の子と女の子が生まれて、エミリアさんはしっかり者の奥さんになりそうな予感がします。
光と闇はお互いを助け合うことができるので、意外とお似合いのカップルなのかも、と思います。
みなさんが読んでくださり、リアクションや感想、評価をいただけることに、心から感謝を申し上げます。ありがとうございました。
くろくま
上の画像は、今回のエピローグを元に、生成AIを利用して、イラストを作成したものです。




