ニゲルの真実
コンタクトに答えるため、外に出て会話をし、
そして、戻る時に宿の部屋から何やら光が見えた。
◯登場人物
ニゲル
24歳。闇属性。
中央都市リーウルスのC区画の雑貨屋で働く。
エミリア
38歳。光属性。
ニゲルと同じく、リーウルスのC区画のマッサージ店にて働いている。
ん〜…やはりエミリアさんは何かある?
それとも、同じような人の間違い?
その時、建物の僕とエミリアさんが居た部屋の窓から、何か光が見えた気がした。
光……? 彼女が何かしているのか? 僕は先ほどのコンタクトの会話のこともあり、彼女に対して更に警戒をすることにした。
でも……もしエミリアさんが例のスパイだった場合。僕は彼女を……
「お待たせ。ごめんね、遅くなって」
エミリアさんはベッドにちょこんと座って待っていた。宿の部屋に備えられていたであろう、ティーセットでハーブティーを淹れてくれていた。
「少しお腹空くかなと思って、さっき買ったパンと、カモミールティーを入れてたの」
「ありがとうね、少しお茶にしようか」
僕は彼女の横に座り、サイドテーブルに置いていたお茶をゆっくり飲む。
「やっぱりいい香りだ。エミリアさんの香り」
お茶の香りを嗅いだあと、彼女の香りも同時に嗅ぐ。
「あまり臭い嗅ぎすぎるとワンちゃんみたいになっちゃうよ」
彼女もそう言ってお茶を一口すする。
「エミリアさん、僕……エミリアさんに言わないといけないことがあるんだよね」
彼女は特に表情を変えることもなく、それを聞いた。まるで何かを知っていたかのように。
「王国騎士団は、日々腐敗の一途を辿っていた。それは何故か。騎士団の在るべき姿を見失っていたからだ。その腐敗を正すべき存在が必要だ」
彼女は何も言わず、僕のことを見つめる。
「王国には光と闇がある。光は国を照らし、街を照らし、人々に輝きを、救いをもたらす。希望をもたらす。対して闇は、光に隠れ潜み、表に出ることはない。光が正義なのか? 闇が悪なのか?」
僕は誰に言うでもなく、淡々と語る。
「光は王国騎士団。闇は王国の暗部。ただ元を正せば同じ王国の上層部からだ。その光と闇のバランスで王国は、街の秩序は保たれている」
彼女は口を開いた。
「ニゲルくん……」
「僕は表の顔はC区画の雑貨屋の店員。裏の顔は……王国の暗部組織の一員だ」
エミリアさんは、唾を飲み込んだ。ごくりという音が聞こえるくらい部屋は静かだった。
「エミリアさんは、もしかして……王国騎士団のスパイかな? 闇の組織の僕達のことを探っているの?」
彼女の心臓の鼓動が聞こえてくるかのようだった。その鼓動が激しくなっているのを感じた。
「ニゲルくん……私は……」
僕はカモミールティーを一息に飲み干した。そして、ティーカップをテーブルに置く。
「なんちゃって! 騎士団シリーズのお話みたいでドキドキしたでしょ?」
彼女は驚く顔と、困惑した顔の間のような表情をした。
「冗談に決まってるじゃない。こんなのんびりした暗殺者いないよ〜」
彼女はまだ戸惑っているようだ。
「エミリアさん。僕はエミリアさんのことを愛しているよ。それはもし、さっき言ったことがホントだったとしても。そして、エミリアさんが王国騎士団のスパイだったとしても、だ」
僕は横に座っている彼女のことを抱きしめた。
「ニゲルくん……」
ふと思いついた言葉があった。
「光は闇の全てを受け入れたもう。闇のもつ陰湿さも、孤独さえも。光は目が眩むほどの力ではなく、全てを包み込む包容力である」
抱きしめながら彼女の耳に、首筋に、そして額に口づけをする。
「前に借りた本に書いていた言葉だよ。僕はエミリアさんのことを信じている。初めて会った時の気持ちに、嘘はないと」
彼女は何も言葉を発することもなく、ただ僕に抱かれた。
ただ、ただ狂おしい程に。
◇ ◇ ◇
目が覚めると、日は沈み始めていた。
二つ並んだティーカップの一つには、まだカモミールの香りが微かに漂っていた。
彼女は……姿を消していた。
ニゲルはエミリアに全てを話す。
最後にそれは冗談だと言うが……?
そして、力尽きて眠ったあと、目が覚めるとエミリアは居なくなっていた。




