光は闇を全て受け入れたもう
ニゲルとエミリアは、一泊宿に入り、
すぐに抱き合う。
ニゲルは任務のことがありながらも、激しくエミリアを求める。
◯登場人物
ニゲル
24歳。闇属性。
中央都市リーウルスのC区画の雑貨屋で働く。
エミリア
38歳。光属性。
ニゲルと同じく、リーウルスのC区画のマッサージ店にて働いている。
ベッドの中でエミリアさんはすやすやと眠っている。今はまだ正午から一刻半を過ぎた頃くらいかな。
宿の部屋に入って、すぐに彼女を求めてしまった。つい先日も会ったばかりだというのに、それでも会う度に僕は惹かれていくのを感じていた。
エミリアさんは自分の年齢のことをとても気にしていたが、全く気にならない美貌と、そして、彼女自身の身体の匂いとカモミールの香りが混ざり合った、爽やかで、甘やかで、そして蠱惑的な……僕はそれに抗えなかった。
彼女は僕の全てを受け入れてくれる。
小さな頃からの寂しさ、切なさ、世の中から疎まれていることへの怒り、悔しさ、何もかもをぶちまけたくてもできない状況。
施設から拾われてからは、それも少しは、いや、かなりマシにはなっていたと思う。
誰かに必要とされること、そして愛情という言葉を知った。自分が誰かの役に立つのだということも知った。
ただ、それは自分の中でもきっと美化されていたことであって、
実のところ、もしかしたら利用をされているだけかもと、心の中ではいつも感じていたのかもしれない。
でも、エミリアさんは「闇属性のニゲル」ではなくて「本好きのニゲル」を好きになってくれた。
本当に愛されている相手との行為が、こんなにもいいものだなんて初めて知ったんだ。
今日はゆっくり出来る、と言ってたから、ゆっくり一緒に居よう。いつもは夕方から彼女が仕事だったりで、焦りながらだったような気もする。
ただ一つ。
『光の女に気をつけろ』
このボスの言葉だけが引っかかる。
彼女に直接聞くべきか……いや、それはあまりにも……
「ん……ニゲルくん、起きてたの?」
僕の横で彼女が目を覚ました。
「うん、さっき起きたとこだよ。大丈夫? しんどくない?」
「うん、めちゃくちゃよかった……そのあといつの間にか寝ちゃってたよ」
僕は彼女をそっと抱き寄せる。
「エミリアさんに会えて、ホントに良かった、って。今、思ってたんだ」
彼女は、ふふと笑う。
「どうしたの、ニゲルくん。今日は部屋に入ってからも凄く情熱的だったし、なんだかいつものニゲルくんらしくないような感じだよ?」
僕らしくない……確かにそうなのかも。
「それはきっと、エミリアさんのことをどんどん愛しちゃってるからかもだね」
抱き寄せた彼女の髪にそっと口づける。
カモミールの香りと、彼女の微かな汗の匂いが混じっていた。
「ニゲルくんは、そうやって恥ずかしくなることを、すぐ言うよね〜。私の方が照れちゃうよ」
「エミリアさんは……どうなの?」
言いながら、今度は彼女の鼻先に口づけた。
「ん……私もニゲルくんのこと、愛してるよ。こんなこと言うと笑われるかもしれないけど……」
「ん?どうしたの?」
「初めて会った時あったでしょ? 本を取ってくれた時。私、なんとなくなんだけど、ニゲルくんと恋に堕ちるような予感がしたんだ。全然予知とかそういうんじゃないんだけど」
エミリアさんも僕と同じことを思っていたのか。それも結果論なのか、後付けなのかはわからないけど……でも、それはとても嬉しいことだ。
「実は僕もそうだよ。二人とも思っていたから、また会えたんだと思う」
今度は唇同士を重ねた。
「ニゲルくん、お腹空いてない? 私はまだ大丈夫だけど」
「大丈夫だよ。ご飯はいいから、もう少しエミリアさんを頂きたいかな」
「もぉ、ニゲルくんたら……」
たまにこんな風にゆっくりと彼女と過ごす時間があればいいな……と、思っているとコンタクトが鳴った。
「あ、ごめんエミリアさん。少しだけ外に出てくるね、業者さんから連絡みたいだ」
「うん、わかったよ。早く帰ってきてね」
言いながら僕は手早く服を着て、部屋を出て、建物の外に出てコンタクトをかけ直す。
『ニゲルさん大丈夫ですか?』
「大丈夫じゃないよ〜、今いいとこなのに。まぁいいや、何か進展あったかな?」
『ボスからの伝言なので詳しくはわかりませんが、例のC区画のスパイは光の女で、年齢は30代後半のようです。ニゲルさんの彼女じゃないんですか?』
完全にドンピシャだ。
「歳はぴったりだね〜。でも、まぁまぁ一緒にいるけど全然怪しい素振りはないよ? てか、王国騎士団のスパイが探りを入れてるのって、僕のことなの?」
『ん〜、どうなんでしょうね? もちろん一人ではないと思いますし、ウチと一緒で組織絡みだと思うので、何か探ってるやつを探ってる、ていう感じじゃないですか?』
「まぁそんなとこだろうね。とりあえず引き続き様子を見ておくよ。今日は泊まりだから、もう次は明日の昼くらいにしてね。よほどの緊急でない限り」
『そんなの、私もわかりませんよ〜』
コンタクトを切った。
ん〜…やはりエミリアさんは何かある?
それとも、同じような人の間違い?
その時、建物の僕とエミリアさんが居た部屋の窓から、何か光が見えた気がした。
光……?
今回はお泊りでゆっくり過ごすことが出来る二人。
お互いに想いを打ち明け、ゆったりと過ごしている時に、ニゲルにコンタクトが。
そして、新たな情報が入る。




