ある日の昼下がり
以前受けたA区画の依頼と、新たに受けたC区画の依頼が、微妙に繋がりがあることを知るニゲル。
そして、それにエミリアが関わっているかもしれないことも。
そんなある日の昼下がりのことである。
◯登場人物
ニゲル
24歳。闇属性。
中央都市リーウルスのC区画の雑貨屋で働く。
エミリア
38歳。光属性。
ニゲルと同じく、リーウルスのC区画のマッサージ店にて働いている。
それからの僕は、エミリアさんと週二回の情事を重ねながら、同時に、彼女の中に潜む闇がないかを探ることになる。
あ、もちろん図書館通いと、散歩はかかさないようにだけどね。
ここでまずこの王国、アクアディフルエンス王国と、その中央都市リーウルスについての少し細かいところを説明しておこう。
え?僕の仕事の詳細について教えてほしい? んー、まぁそれはもう少し楽しみに取っておいてほしい。もうすでに勘のいい人達はなんとなくわかってるとは思うけど。
この王国はとても小さな国なんだ。しかも、隣国というものがまぁまぁ遠方にあるため、他国との交流もあまりなく、ほぼほぼ自国だけで全てが成り立っている。
そして、王国内の五つの都市があり、中央都市リーウルスは、王都を含む四つの都市それぞれに囲まれた、まさに中央都市というわけだ。
そして、王国最大の都市リーウルスには、前にも話したように、主に平民の住むC区画。
商業や、それに携わる者が住むB区画。
そしてA区画には、貴族や権力者。そう、王国騎士団など王国に直接絡む者が住んでいる。
そして、元々の生まれや育ち、そして身についた属性によって人は仕事をしたり、支配したり、使役されたりする。
僕のような、元々孤児だった上に、なんの役にも立たない闇属性持ちの人間は、どちらかというと、一生日陰の人生を歩むことになる。まぁそれは、僕のただの僻みかもしれないけども。
同じような生まれで、同じように疎まれて育った人でも、立派に仕事をしてる人だっているかもしれないからね。
でも、僕は。今の僕のこと、そこまで嫌いじゃない。むしろ今はそうなれてよかったとも思っている。
そう。そのおかげでエミリアさんとも出会えたわけだからね。
◇ ◇ ◇
「やっほ〜、元気? ニゲルくん」
最近のエミリアさんは初めに見た時よりも、更に明るくなったような気がする。それにいい匂いだ。
僕はつい彼女の匂いを嗅いでしまう。
「こんにちは、エミリアさん。僕はぼちぼち元気ですよ。雑貨屋さんの方も相変わらずヒマです」
彼女はあどけなく笑う。
「だよね〜? あのお店ってお客さん入ってるところ見たことないんだけど! なんか富豪の気まぐれで始めた商売みたいな感じなのかな〜?」
エミリアさんの言うことは遠からず近からず、だな。
「あはは、エミリアさん面白いよね。なんかでも、たまに店の在庫とかを、他の店舗に卸したりすることもあるから、個人というより、なんか倉庫みたいな感覚なのかもしれないよ」
ふと、エミリアさんの手を取る。そして、キスをした。
「わ、急にどうしたの、ニゲルくん。こんな図書館でいちゃついてたら、注意されちゃうよ」
少し顔を赤らめる彼女が、また可愛い。ひと回り上に見えないような幼さだ。
「こんな図書館でダメなら、どこならいいのかな?」
「もぉ〜、ニゲルくんの意地悪! あ、今日はね、夕方からの仕事も休みだから、もしニゲルくんがよかったらなんだけど……お泊りしちゃう??」
そう、彼女はC区画にあるマッサージ屋さんて働いているのだが、シフト制で朝から夕方の時もあれば、夕方から晩までの時もある。
だいたいは図書館で正午に待ち合わせて、それからお昼がてら一泊宿で少しの間、体を重ねるだけで、今まで長時間を共にしたことはなかった。
「あ、今日はエミリアさん休みなんだね。僕はもう例の誰も来ないお店だけだから、全然大丈夫だよ。あ、たまに連絡というか、卸しの業者とやり取りをするのに少し外に出たりはするかもだけど、それでも良ければ」
彼女は、僕が闇属性であることを知っているし、直接コンタクトで同じ闇属性持ちの相手と会話をしていることも知っている。
なので、誰と何を話しているということが分からなければどうということはない。
「よかった……ニゲルくんがもしダメならと思ったんだけど。私もできたらニゲルくんとゆっくり一緒に居たかったから。あ、じゃあ、あとで夜に食べれるように食べ物とお酒も少し買ってから宿に行こうよ」
僕と過ごすことを、嬉しく思ってくれる彼女がとても可愛いし愛しい。
こんな彼女が、裏で何かを探っているなんてことあるだろうか?今のところ、全くわからない。
◇ ◇ ◇
図書館で本を何冊か借りて、そして同じB区画で、少し多めに食べ物と、お酒と、カモミールを買った。
そして、いつものC区画の外れにある、ベージュに塗装されたレンガで出来た一泊宿に入る。
その一室に入った途端、僕はエミリアさんを激しく抱きしめた。
「ニゲルくん……急にどうしたの? ん……」
その彼女の口を、自らの口で塞ぐ。
僕は口づけする時、彼女の目を直接見るのが好きだ。
たまに目を開けたり、キョロキョロしたり、ぎゅっと閉じたり、その色々な仕草を眺めているのも好き。
「ニゲルくん、今日はどうしたの? お昼ご飯先に食べてからゆっくりしよ……わっ!」
そう言っているエミリアさんをベッドに押し倒し、両手を僕の手で拘束する。
「ニゲルくん…あぁっ……」
「ご飯は後でいいよ。まずエミリアさんの体を堪能したい」
僕はそう言って、彼女の首筋にそっと顔を近づけた。




