王国騎士団と光の女
お話は、プロローグのところまで戻ることになります。
あれからなんやかんやあって、
ニゲルとエミリアは、そういうことになります。
◯登場人物
ニゲル
24歳。闇属性。
中央都市リーウルスのC区画の雑貨屋で働く。
エミリア
38歳。光属性。
ニゲルと同じく、リーウルスのC区画のマッサージ店にて働いている。
彼女は素早くバスローブを羽織って、別室に行き、そこで着替えを済まし、ドアを開けて顔だけ出して僕に言う。
「ニゲルくん、愛してるよ」
僕はベッドで寝転がったまま、手を振った。彼女が出ていったあとも、爽やかなカモミールの香りは残っていて、僕の心を穏やかにした。
「愛してる……か」
◇ ◇ ◇
ん? ん? あのあといきなりそういう関係になったの? と思うよね。
ホントはもっと詳細に、僕がエミリアさんと仲良くなっていく様子を伝えたいとは思ったんだけど。
やはり僕も色々と仕事が立て込んでいることもあってね。さっきもA区画の依頼を受けながら、追加の仕事が入りそうだったくらいだから。
まぁ人手不足ということもあるし、仕方ないんだろうけどね。
というわけで、僕とエミリアさんがこうなった経緯をかいつまんで話すと……
何度か図書館で会いながら、食事に行く。
好きな本の話もしながら、エミリアさんの魅力にどんどん惹かれていく。
できれば、直接その香りをエミリアさんの身体から嗅いでみたいという欲望にかられる。
五度目のデートで、エミリアさんを押し倒す。
え? 説明が雑すぎる? それはごめんね……でも、その間も色々と仕事をこなしながらだったこともあって、もちろん読書もきっちり挟んではいたけども。
僕が言うのもなんなんだけど……男女の関係っていうのは、初めて見た瞬間に意外とわかっているような気がする。
これはもしかしたらあと付けみたいになるかもだけど……僕はエミリアさんと図書館で初めて会った時。
そして、彼女に本を探して取ってあげた時。
その時からすでに恋は始まっていたんだ。
彼女の纏う香り、これはカモミールのせいだけでなくて、彼女自身が発するオーラというか、雰囲気自体が僕を引き寄せた。
光が差すところに影が出来るように、僕は彼女の光に恋焦がれたんだ。
ちなみに、彼女とそういう関係になってから会ったのは三度目になる。その間、例のA区画の任務は進行中だ。
そう、王国騎士団絡みの任務、だね……
C区画の一泊宿を出て、近くの露店で僕の好きなふわふわのタマゴを挟んだサンドイッチを買って食べながら店に向かう。
雑貨屋に辿り着き、中に入ると、僕は先ほどのコンタクトにかけ直す。
「さっきはごめんね、お腹が空いてたのと、体がすんごくだるくてさ」
『ニゲルさん、それいつものことですよね〜。あ、依頼なんですけども、現在進行中のA区画の依頼と関係あることみたいですよ』
ん? どういうことだろう。
「え、あれって王国騎士団絡みだったよね……? 別の関係筋ってことかな」
『ニゲルさん鋭いですね〜、騎士団が街の様子を探るためにスパイを雇っている話って知ってますか?』
ん、それは何度か聞いたことがあるな。
「うんうん、なんとなくだけどね。それがどうしたの?」
『例の騎士団の中に多少頭のキレる人物もいるようで、不穏な動きがあることに気付いているかもしれません。そして、街の平民の中にスパイがいると情報が入りました』
街の平民の中……
「まさか、前にボスが言ってた光の女、っていうのがそれって言わないよね?」
数秒、相手は黙った。
『いや、その通りです。ニゲルさんが今仲良くしている光の女がそうかはわかりませんが……気を付けたほうがいいですし、むしろそこから探れませんか?』
なるほどね……エミリアさん自身がそうってことはたぶんないと思うけども、そこから辿れる可能性はあるわけだ。
「わかったよ。無理のないように探ってはみる」
『よろしくお願いします』
コンタクトを切る。
エミリアさんがボスの言う光の女? う〜ん、それにしてはあまりにも単純過ぎる。まぁいい。
ふと、雑貨屋の中に飾ってある鏡に映る自分の顔を見て驚いた。
「楽しんでいるのか。いや、そうだね。めちゃくちゃ楽しいよ」
鏡に映る僕は、今までにないくらい飛び切りの笑顔になっていた。
エミリアとの情事に心弾むニゲルだったが、
またひとつ心を震わせる情報が入る。
今回のA区画絡みに、光の女のスパイが絡んでいる、と。
ニゲルとエミリアの恋の行方はどうなっていくのだろうか。




