魔法使いの戦いは3段階あり、1、2段階目で勝っても3段階目で負けたら負けなのだ。
僕は妹のそばについている。
妹は僕が殴られた事に不満は持っているようだったがあの場でドナ先生に文句をいう事はしなかった。
魔法使いは戦闘面も当然強く、ドナ先生とは実戦形式の訓練はよくあったけれど、エリーは一般のクラス出身のため、時代的にもあまり叩かれたりはなく驚いたのだ。
だから怒らなかったと思ってあたけれど、妹はかわいい顔を精一杯残忍風に歪めている。
ドナ先生はいまから痛い目にあうけどその事が尾を引かない事を知っているのだ。
皆はもう帰った。
けれど魔法使いはその場に居なくても、周囲の状況がわかる。カナさんはニアさんを連れ先に帰った。
残ったハンナとドナ先生が対峙している。魔法使いがまともに戦えば世界がもたない。
2人の周りに結界が張られていく。
「まともに戦うのは、はじめてですね。御高名はかねがねうかがっております。」
ハンナは今日実力不足を痛感した。
サラには手も足も出ず復活出来たとはいえハンナは一度は死んだ。
他の仲間だって、最初から偽物とすり替えられていた可能性はあるが少なくとも同じ記憶と心と能力を持つ仲間達本人か本当の命を持つ完全なコピーが復活できず死んだ。
それになによりまだ勝てないが、いい勝負をできると思っていた。ウェンディには手加減されていた事をしった。
自分の強さを試さなければ前に進めない。
僕にはその気持がよくわかる。
僕が両親を殺され自暴自棄になったのだってそういう事だ。
自分はできると思う拠り所がほしい。
僕には妹が居た。妹を守ろうとする事でなんとか幼い自分の心を保った。
力が強いだけの子供は強さを発揮してようやく、安心する。
ハンナにもそんな一面があった。
いや、ハンナは現役では世界最強クラスとされるドナ先生相手だからそんな態度をとった。
「かかってきなさい」
ドナ先生は負けるとわかっていながら、余裕の笑みを浮かべる。ドナ先生が世界最強と言われるのはハンナが成人前だから。そして大悪女サラは大悪女として追われる身だからカウントされていないだけ。
僕はそう思っている。
「よろしくお願いします。」
ハンナはそういって頭をさげた。
古からの作法として、戦いは形式を変え三度行われる。まずは無手の戦い。
ハンナは数多くの武術をおさめている。ドナ先生も数多くの武術を使うがドナ先生の武術はあくまで補助。
ドナ先生は一方的に殴られ体勢を崩された後に背負投を決めらた。
次は武器、ドナ先生は魔術師では珍しく剣を使う。ハンナはマンゴーシュを選択しようとしたが最も得意な杖に変える。
これもハンナの圧勝。ドナ先生の剣撃をハンナは軽くいなし、剣をすくい上げた。
「やるわね、天才少女。でもここまではあくまで前座、魔法使いの戦いは魔法できまる。」
ドナ先生は再び剣を構える。
魔法使いにとって魔法の戦いとは、全技能を使用することを表す。武術も武器も魔術も呪術も錬金術も関係ない。全て魔法。
これからが本当の勝負、ハンナはもう一度頭をさげた。
合図は何もないハンナはドナ先生の元へかける。
移転では勢いがつかない。だからかける。狙いはナックルパート。そこに工夫を挟まない。
魔法は防御有利、ハンナは駈けながらドナ先生の魔法を全て撃ち落とす。
ハンナも魔法を放っている。ドナ先生の迎撃しそこなった魔法をあえて直撃させない。ドナ先生の剣もいなし先生の顔面を殴りつけた。
一発KOという結果だった。
KOされた事は幸いだったのかもしれない。
ハンナは世界最強を相手に完勝しながら口をへの字に曲げ不満げにしていたのだ。
これだけの強さがあってもサラには歯が立たない。
僕達は今日それを知ってしまった。




