僕はニアさんのお見舞いには行けない
ニアさんの姉のカナさんはドナ先生をともなって現れる。カナさんは僕が失礼を重ね続けた師匠であり、僕の最初の師匠のドナ先生の弟子、つまり同門の姉弟子、バツが悪すぎる。
それでも僕の住む家の小ささに2人は驚いたのだろう、最初部屋を見渡した後、事情を察し少しだけ同情の目を向けた。
僕は自分が死んで妹だけが生き残るという奇跡が起きた時のお金を残す為に魔法使いにしては質素な暮らしをしている。
僕の斜め後ろでエリーは笑っているわけではないが穏やかな表情で2人を見つめていた。
そしてその瞳の奥には2人が僕を責めた際にはいつでも噛み付くオオカミがひそんでいる。
オオカミは飼い慣らされない魔物、状況は判断するだろうが、より僕を困らせることになっても噛み付く魔物にいけないとしりつつも頼もしさを覚えてしまう僕だった。
もちろん僕の師匠2人がエリーを殺して解決をはかる可能性だって0ではない。
魔法使いではない者は魔法使いの戦いの流れ弾がかすれば死ぬ。
僕は魔法使いとそうでない人の差をよく知っているのだ。
僕は2人をつれ部屋をノックする。
「どうぞ。」
中からはハンナの返事があった。
ハンナは家に帰っていない、今はニアさんのもとについている。
ハンナはじっとニアさんを見つめている。
魔法使いは人を魔法の塊や、石ころ、世界そのもののように見ることが出来る。
これは元は1000年前の大勇者エリーが広めた錬金術師の技術。
石に見え、動物に見え、人に見え、精霊に見え、世界に見える。
病とはそれらのつながりと循環がうまくいかない事。
循環を妨げる呪いはなんなのか、呪いがないのにこんな状態だから危険。
だとしても体に変化が起きた以上その痕跡の痕跡を探る事は意味がある。
ハンナは先輩魔術師2人にペコリと頭を下げる。
僕との関係についても探っているのだろう。
チラリと僕をみつめ紹介を促す。
僕はドナ先生とカナさんの2人を僕の魔法使いの師匠、ハンナを事件の時に一緒にいた僕の恋人だと紹介した。
互いに頭を下げるが緊張は隠しきれていない。
ニアさんが死にかけた直後であり無理はない。
カナさんはニアさんを見つめている。
容態を探っているのだろう。年の離れた妹は苦しみもせず意識を失っているがハンナがないはずの呪いに対して必死の治療を行った痕跡を見つけまたハンナに頭を下げた。
「エリクくん、ハンナちゃん、治療をありがとう、妹は私の方で引き取るわ。命に別状はないみたいだから・・・」その続き、いつかは目を覚ますはずという言葉は続けられない。
カナさんは涙をこらえている。
ニアさんが永遠に目を覚まさない可能性は十分にありえる。
僕はドナ先生に殴られる。
「あなたがついていながら何をしているの。」
僕は倒れない。
カナさんの気をはらす事より、エリーがまたショックで発作を起こさせない為に踏ん張った。
ドナ先生には大悪女サラが出た事だって伝わっているはずだが、実力が足りないことは言い訳にはならないのだ。
僕はカナさんの方を向く。
「ニアさんのお見舞いにいってもいいですか。」
僕が尋ねるとカナさんさ静かに首を横に振った。




