僕はサラに本気を出させることも出来ない。
僕達のいた部屋は消え去る。僕が消した。魔法であれば一瞬と掛からない。魔法使いでないものか見ればはじめからそうだったとうつる。
「ニアさん、ハンナを呼んできて下さい。僕の家で妹を看てくれています。」
僕は急ぎ指示をだす。
目の前には最強と噂される魔術師が殺気を放ちたっているのだ。
恐らく狂錬金術師は魔境の外には出られない体にさなっている。巨人に変化しする。それ自体が多くの魔法使いにとって致命的な攻撃になり得るが、効かない人には効かない。サラには効かず、カトリーナさんとケロちゃん以外は死にかねない。
僕はニアさんをハンナの元に向かわせたのにはわけがある。
サラにはハンナでも勝つことは難しい。
説得や交渉ならサラと知り合いだと言っていたドナ先生に頼る手も無くはない。魔法使いであるニアさんならドナ先生の位置を探ることもできたかもしれないが、それでも僕はハンナを呼ぶようにいった。
ニアさんはハンナと交代でエリーを看てくれるだろう。それがねらいだ。
僕はサラの魔法はうちおとすことか出来た。
皆は魔法が放たれたことにも気がついていない。
ただ唖然としているだけ。エルフの国の姫で生まれながらの二次魔法使いであるカトリーナさんでさえ気づくに留まり動けない。勝ち目などない。
勝利の為の作戦ではない。僕はニアさんを逃がした。
カトリーナさんは何かをしようとしたがサラにより封じられる。
僕の肩口に剣が突き刺されている。
サラがニアさんを追うのを僕が止めた。
僕は痛みをこらえサラにつかみかかるが僕の左腕は既に切り落とされている。
逆上した忍者男くんはサラに首を砕かれ、毒舐め男くんは爆散、分身男くんは全ての分身ごと塵のように握り潰されている。
カトリーナさんはそれでも向かって行った。皆が逃げるように言う暇もなかった。彼女は心臓を剣でつらぬかれている。
ケロちゃんは優しくひとなでされるだけで眠りに落ちた。
狂錬金術師は巨人になろうとしたがサラの当て身で態勢を崩された。巨人化も失敗だ。そのまま足の腱を斬られている。古い魔法使いは自力では治せないかもしれない
僕が肩から先を切り落とされ、バランスを崩し倒れるまでの一瞬の出来事だった。
忍者男くん、毒舐め男くん、分身男くんは死んだ。
僕は迷う。僕は死ぬわけにはいかない。友の死を目の前で見せられ、僕は強烈に死を意識した。呼吸があらくなり、頭痛と吐き気が僕を襲う。ドナ先生の大悪女サラは帝国の内戦でも人を殺さなかったというのはなんだったのか。
僕はなんとか立ち上がるが腕は生えない。呪いによる強力な阻害。
「私はまだ全力ではない。剣も私のものじゃない店売りのもの、私は二次魔法と三次魔法を行き来出来るけれど。今は三次魔法として魔法を使った。それに切り札もある。あなたならどうする?」
サラは僕に問いかける。
絶対に勝てない敵は魔法で牽制しながら剣を手にゆっくりと近づいて来る。牽制の魔法さえ僕の攻撃の魔法を超えている。魔法の戦いの防御側の優位性でかろうじて撃ち落としているのだ。
僕の頭にはハンナが来る前に早く負けるという道が頭に浮かんで消える。浮かんでしまった事は皆の死の影響が大きい。
僕は恐怖で泣いていた。皆は泣く暇も無く殺され、僕には泣く暇だけはあった。
僕はニアさんと同じように「助けてウェンディ」と僕の知る中で最強の魔法使いの名を呟いた。




