Black Thursday
どこで間違った
全身の表皮が裏返る
頭部から熱湯がプツプツと噴き出てくる
全身を冷たい血が巡り
真っ黒い沼に足からズブズブと飲み込まれていく
焦点が定まらない
周りの音がやけに遠くから聞こえる
「クロさん?……大丈夫ですか?クロさん?」
「……はっ、はい!大丈夫です。」
「それでは、仕事がありますので失礼します!お疲れ様でした!」
「クロさん?はい。お疲れ様……でした。」
セカセカと逃げ出すようにギルドを出た
なぜこうなった
いや、違う。反省会は後だ
今は今を何とかしないと
取り敢えず今日の仕事を終わらそう
こんなはずじゃ、これからなのに
仕事以外を考えるな
これからどうする、どうなる
ダメダ
集中出来ない
体の表面は火のように熱いのに、体の中は氷のように冷たい
熱に浮かされ体が浮かび上がる
何も手につかない
取り敢えず一度帰ろう
帰りの道中も焦りと後悔が頭の中をグルグルと支配していた。
帰りの記憶はない。おぼろげながら、ヒタヒタと歩いていた記憶はある。
屋敷の仲間、何人かに声をかけられた。
相当酷い顔なのだろう。皆、心配してくれていた様な気がする。
耳が遠い。皆の声がパラパラと降る雨のように感じるが気にできない。
少し体調が悪いから部屋で休む、というようなことを伝えて、部屋に引きこもった。
誰かが麦粥と水を持ってきてくれた。
腹が減らない
しかし食べねばと思うが喉を通らない
水を飲んでも乾きが止まない
何がいけなかったのか?
どうして……どうして……
違う!反省会しても意味なんて無い
何をしようとしても頭が反省会を始めてしまう
考えるべきはこの状況を乗り切る方法だ
他のことは考えるな
小麦の高騰で買いなおしは出来ない
クソッ!クソッ!ちくしょう!
こうなる事は分からなかったのか?
事前に気付けた可能性は?
反省会するな!クソッ!
何か言い訳を考えないと
荷馬車が来た時の言い訳を
世界が回る
歪んで回る
逃げたい……
逃げれない………
何か……何か……
内臓がギュッと縮まるのを感じる
その苦しさを紛らわせようと体を丸める
このまま小さく…黒く…消えていければ楽なのに……
もう一度頭をぶつけて元の世界へ帰れないだろうか……
違う!最後まで足掻け!考えろ!
オレは転生者だ!主人公なはずだろ!
「そうだよ。オレは主人公なんだ。
主人公が死ぬはず無いんだ。
漫画やアニメでも主人公は死ななかった。
どんな状況!どんな場面でも!
こんなゲームみたいな世界で死ぬわけないんだ!」
「ゲーム………そうだよ!
これはクエストなんだ!
強制イベントなんだ!
飽きが来ないように設定された適度なストレスなんだ!」
「ハハハ!
そうかそうか!
次のシーンに進むためのクエストなんだ。」
「クエストなら必ず正解があるはずだ。
そしてヒントをもらえているはず。
このクエストをこなすためのヒントが。」
「ああ……そういう事か。
あの商人は近々と言った。
まだ猶予があるという事だ。
そして、その数日の間にヒントをもらえるか、クエイベが発生するんだな。
完全理解!そういう事か。」
「いやぁ、冷や汗をかいたよ。
製作者さん、これは適度じゃないストレスだったよ。
エアプだ、エアプ。テストプレーくらいしろよな。全く……」
本当に良かった。ホッとしたよ。
つまりは明日以降にイベントが起る。
そして情報と状況が出揃ったところで行動選択するってことだな。
あ~あぁ、疲れたよ今日は。
まぁ、ゲームにはこういう事も必要だってことだね。
主人公無双だけじゃ飽きるもんな。
安心したら腹が減ってきたな。
麦粥食べて今日のところは寝るとしますか。へへへへ………
さぁ、明日から忙しくなるぞ。
お休みなさーい……
こうして、全てが分かったオレは眠りについた
ドンドン!
「オーイ!クロ!起きてるかー!開けるぞー!」
んっ?
ふぁ〜〜。もう朝か?
なにやら騒がしい。
誰か来たのか?寝起きで頭が回らん。
「クロ。起きてたか。おはよう。
体調は大丈夫か?」
「リヤマか。おはよう。
もう大丈夫だ。心配かけたね。
ところでどうしたよ、朝から?」
「そうそう。
なにやら商会ギルドの荷馬車がいっぱい来てるんだけど。
どういうことなのか説明してもらうからクロ呼んでこい、と執事のワカヤ様に言われてな。
呼びに来たんだ。」
「荷……馬車……?いっぱい……?
来てる……???」
「ああ。いっぱい。
いったいなんなんだ?アレは?
まぁ、いいや。
ほらっ!早く行くぞ。ワカヤ様待ってる。」
終わりです。お疲れ様でした。




