とある屋敷の奴隷生活
「ほらっ。クロ行くぞ。」
「お……おう。」
ああ……
処刑場に向かう人はこんな気持ちなんだな。
もう何も考えられない。
只々、歩くことしか出来ない。
何かをする気力がわかない。
逃げもせず、叫びもしない。
ただ従うだけ
「おお。来たかクロ。」
「おはようございます。クロさん。」
執事のワカヤ様と副ギルド長のフルードさんと……
やはりミザさんもいる……
「おはようございます。クロさん。
いやぁ、しかしクシマ家のお屋敷は初めて訪れさせてもらいましたが、
いやはや、
想像以上に大きいですな。」
ちょっとハシャギ気味のミザさんをフルードさんが少したしなめつつ、事を進める。
「早朝で申し訳ないのですが
今日は小麦の引き取りに参りました。」
商人さんたちが深々と頭を下げる。
それを見て、執事のワカヤ様はコチラを向いた。
「クロ。」
「ハヒッ!?」
「これだけの荷馬車来る事など私は報告されていないぞ。
いったいコレはどういうことなのか説明しなさい。」
「フヘッ!?
えーーと……コレはですね。あの~……
えー……なんといいますか……」
目をまるでスロットマシンの様にグルグルと回し、全身から食洗機の如く汗を流れ出しながら見事にキョドっていると、
「ワカヤ様。実はこの訪問は急なことでして。
西方で戦争が起こり、小麦価格が高騰したので、急遽、小麦引き取りに参ったのです。
クロさんへの連絡を省略してしまった事はお詫び申し上げます。」
「そうなのか?クロ。」
「ホイ!?
ソウデアリリリマス!?」
「先日、ギルドでお話させて頂いた時には近々と仰られていたので、正式に具体的な日時を指定していただいてから報告しようと思っておりました。」
「なるほどな。」
アレッ?もしや、ごまかせそう?
「ところで、コチラの商人さんは誰かな?
当家と取引のある商人さんでは無いようだが……」
コケーーーー!!!!
コケッコケッコ!!
コケコッコーー!!
「コチラはミザ商会さんです。
ミザ商会さんも所有している小麦を西方と取り引きしたいとの事でして、
通常ですと、領外……さらに遠くの国となりますと当ギルドに委託という形をとるのですが、
ミザ商会さんがぜひとも同行したい、とのことでしたので、
こうして付いてきてもらっています。」
「ほほぅ。
小麦を積み込んだらそのまま向かう、ということですか。」
「その通りでございます。
我々商人にとって早さが何よりも優先されるべき事なのです。
その所為で皆様に御迷惑をおかけしてしまうこともございますが。」
「今この時の様に……ですかな。」
ワハハハと皆様笑ってらっしゃる。
たす……助かった……?!
こ……このまま何事もなく……
「ワカヤ様。実はクロは昨日体調をくずしていたようで、その所為で報告が遅れたのもあるかもしれません。」
「そうだったのか。
それなら今日は休みなさい。
この後の引き渡しも私がやっておこう。
証書を持ってきなさい。委託処理してしまおう。」
リヤマーーー!!
余計なことをーーー!!
ムリムリムリムリカタツムリ!!!
バレるバレるバレるぅー!
「イヤイヤイヤイヤロップイヤー!
もう治りました!元気100倍ライ麦パンです!
あとは責任持ってやっておきます!
大丈夫です!」
「そ……そうか。
まぁ、元気そうだな。
では、後は任せたよ。」
「では、倉庫はコチラになりますすすす。
………失礼、かみました。」
フルードさんとミザさんを倉庫に案内し、滞り無く引き渡し業務を終えた。
それでは。と、商人さん達をお見送りし、見えなくなると、プシューッと全身から力と空気が抜けていった。
「助かった。助かった〜。」
………こうして一連の騒動(身から出た錆)は幕を閉じた。
それからは粛々と日々をこなしている。
平和で穏やかな日常。
とは言え、ミザ商会さんに売却した分の小麦のごまかし作業は残ってるし、全て終わったわけではないけど。
ごまかしは次の収穫で上手く出来るだろう。使えない金貨もしっかり隠した。
まぁ、安心して良い。
朝起きて、仕事して、食べて、寝る。
これが素晴らしき我が奴隷生活。
まー、こんなもんだよな。
自分は普通で特別な事は出来ない。
こうして普通に生きていく。
その中で楽しみもあれば苦しみもある。
良くも悪くも普通であることに感謝して。
「クロ〜。準備できたかー。行くぞ〜。」
リヤマが呼んでる。行かなきゃ。
「おーう。今行くよ。」
さぁ、今日も元気に仕事しますか!
おしまい
あれっ?もしかして?
これを、こうして。アレを、アレすれば。
……いけんじゃね?!
天才あらわる!
これで億り人じゃー!ワハハハ!




