バスの運転手
キャンピングカーを深夜バス仕様にして走って一日、気が付いたことがある。
深夜バス仕様は、運転手が眠くならないような仕様がある。
いくら運転しても眠くならないし、足腰が痛くならない。
「これ、案外楽かも」
元々、走らせるのが好きだったので、非常に楽しい。
車内にて、四者は各々休んでいた。
「しかし、あの和室と言うのもよかったが、こういう感じもいいな。故郷を思い出す」
アリスは、談話室のソファーで本を読んでいた。
基本筋トレをしていたアリスにしては珍しい姿である。
「そうですね。この様な空間にいると、少しお洒落な気がします」
そう言って微笑むイリア。
どうやら、彼女らの故郷はこんな感じの家が多いらしい。
「う~ん。私はあんまりかな。床で寝れる和室の方が好きかも」
お前は寝る事しか考えてねぇじゃねぇか。
少しは働け。
「大吟醸を貰えないかしら」
ノリスは乗って早々日本酒を頼む。
コイツ、アル中になってないか?
そんなにぎやかだった談話室も、日が傾くにつれ、静かになっていく。
「む、もう夕方か。では私は風呂に入って寝るとしよう」
アリスの一言をきっかけに、皆部屋に戻っていった。
やがて、時間が過ぎ今は、深夜一時を超え、辺りは真っ暗である。
街を出て数時間は経つので、周りは草原と凸凹道のみだった。
先程、彼女らには、行先をかいてもらい、切符を渡した。面倒くさがっていたが、ごり押しで、これなくしたら下ろす、と言ったら喜んで受け取ってくれた。
そこで、初めて知ったのだが、彼女たちの行先はどうやら、グリンデル王国の首都、バルトと言うところらしい。バス仕様でいきなりついたナビで検索したらかなり遠いい。
と言うか、ノリス、この仕様について何も言ってなかった。と言うことは、後天的についたものなのだろうか。
それはともかく。
そのグリンデル王国自体、かなり遠かった。今は、大陸の端、その王国は反対側の端だ。
領土こそ大きいが、首都が端の方にあり、なお遠かった。
俺は真面目に運転をしつつ、少しワクワクするのだった。
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平原をただひたすら走っていると、ナビに反応が出た。
紅い点、つまり人がいることを指している。端末の端にあるので、ずいぶん先になるが、少し気になる。
既に三時を迎えた深夜に人影とは、現代感覚からしたら、ちょっと以上だ。それも、何もない平原でである。
カメラをズームにしてみると、身なりの良い女性が、顔を抑えながらへたり込んでいた。
靴は履いておらず、見るからに何かあったと分かる。
「おいおいおい、ここに来てこれって、ちょっと待ってくれよ」
この映像を見たからには、助けたくなってしまう。
どんな素性かも分からないが、こんな暗闇の、何もない草原で、一人の少女があてもなく突っ立っている。俺にはそう見えた。
やがて、少女を肉眼で確認できるところまできて、速度をゆっくりと落とす。
バスを少女の前で止め、扉を開く。
静かな談話室に、エアーの抜ける音が響く。
「特別バス、グリンデル王国行です」
扉の前に立つ少女は、明らかに同様していて、後ろに下がろうとしたとき、停留所の看板にあたる。
そこには、『ムリッツ平原前』と書いてあった。
だって、ナビにはムリッツ平原と書かれていたから、その前あたり、故にムリッツ草原前なのだ。
「御乗車になる方はいませんか?」
俺は、少女に存外に、乗れと伝える。
頭目では見えなかったが、少女の服装は汚れており、腕や足にもあざが目立った。
しかし、服はちゃんと着ているため、そのまま何かから来たのだと考えられた。
少女が立ち、ゆっくりと、数歩ずつバスに入っていく。
やがてすぐ隣まで来た少女は、中学生くらいの小さな少女だった。
「・・・・どちらまで?」
悪まで運転手と言う定で話しかける。
「・・・・・・・・・・ラッセル、首都ラッセルの聖堂」
端末で調べると、この先にグリンデル王国の前に、スパニワ王国がある、その首都がラッセル。
その聖堂と言えば、セリーヌ街の中央当たりだった。
俺は、そこを登録し、切符を発行する。
切符には、使える部屋番号までついている。
少女に切符と鍵をわたし、扉を閉める。
「・・・発車いたしまーす。お足もとにお気を付けください」
そのままは走り出すと、法所は少しバランスを崩すが、取っ手につかまる。
そのままバスを走らせていると、やがて少女が恐る恐る車内に入っていく。
さて、ここでこのバスの最も不思議且つ最も有能な機能をお教えしよう。
このバス、入れた材料や飲み物を増幅させるだけでなく、レシピや料理名を言えば、勝手に料理し、勝手に配膳してくれるという、ちょっと怖い代物なのだ。その機能を知ったのも、航海中の暇なときに、『料理したくな~い』なんて言ってたときだ。
だから、『ホットミルクを出して』と言えば、カップにホットミルクが入って出てくる。
この機能は、モンスターを丸呑みするキャンピングカーが、その素材でポーションを作ったのと同じ原理らしい。なんと、このキャンピング、人をダメにする気だろうか。
あいにくと、飲み物に関しては、前世で買い物に行かなくてもいいほど、たくさん買い込んでいたため、種類なら豊富にある。
端末を操作し、談話室の、少女の近くのテーブルに、手拭きと水、メニュー表を置く。
少女は、同様しながらも、その席に座る。
その様子を見て、まぁ、大丈夫だろう、と、俺は運転に集中することにした。
夜道は暗く、どこまでも草原が続いた。
いっそ不気味だった。
やがて日が昇る頃、一度トイレをしたくなったので、休憩所、と言う停留所看板だけだし、扉を閉めたまま、トイレに向かった。
談話室には、眠ったままの少女がいたので、先に彼女を部屋に連れて、トイレに行った。
その後、運転席から見たアサヒは、輝いて見えた。
個人の理由は知らんが、いいことってすると、きもちいいい!
追記
キャンピングカーの新機能は未知数である。
これは、ノリスが力を取り戻していくたびに進化していく。つまり、ノリスは、少しづつではあるが、力が戻ってきている。
天界に戻れるのもそれほど先ではないのかもしれない。




