小さな違和感
「そうか……、それはごめんなさい」
「いいぞ。いいぞ。ただ先入観は持たないほうが良い」
「先入観……、あの火に油を塗ったら、火の剣にならないかな」
「なるんじゃないかな。あの小僧。なんで火の剣に固執する?」
「恰好良い……、じゃなくって強いと思うから?」
「強い……、火の剣がか?」
「うん」
「そうなのか……、剣が火で燃えてたら、戦う者は火傷してしまうだろ」
「えっ。そうなの?」
「やってみるか?」
「いや……いいけど、たしかに火傷してしまうかも」
そうか……、
じゃあ魔剣的な物は作れないのかな。
「なんか魔剣とか、伝説の剣的なのはないの?」
「魔剣というのは、聞いたことがないな。伝説の剣なら、王家に伝わる剣とかが」
鍛冶師は賢者を見た。
「王家に伝わる剣は、儀礼的に使われますから、実用には使えませんな」
賢者は苦笑いをした。
「小僧。つまりお前は恰好の良い剣が欲しいのか?」
「うん……。
いや、そうだ」
「それなら、お前が絵を描いて、俺が強度的に問題のない剣を作ってやろう。細かい細工とかは細工職人に任せれば良いだろう」
本当は魔剣が欲しいところだけど、
設定上無理なら、恰好の良さを追求しよう。
「わかった。絵を描いたらお願いします」
僕がそう言うと、
鍛冶師は「わかった」と出て行った。
「ワシに質問はあるかな」
賢者は言った。
「いえ」
「じゃあ、何かあれば、また呼んでくだされ」
賢者はそう言い、部屋を出て行った。
僕は再び、考えだす。
チート能力がないとすると、
この世界に神はいないのか……。
いや……、
なぜそう思った?
なぜ神がいないと……。
僕がいた世界には、
チート能力はあったか?
チートみたいな人はいても、
別にチートじゃなかった。
でも神様は信仰されているし、
僕も神様を信じている。
神様=超常的な力という訳じゃないんだ。
例えば、
農業の神様なら、作物が無事に実りますようにとか。
漁業の神様なら、大漁とか、無事に寄港できますように。
そう祈ったはず。
でも、
なんで神様=超常的な力と思っていたのだろう。
わからない。
ちょっと待て。
パラメータは、
力、体力、知力、素早さ、運の五つ。
だった。
運ってなんだ?
力、体力、知力、素早さで戦うのはわかる。
運は……。
そうか、
この世界は運を否定していないんだ。
むしろ、
力、体力、知力、素早さに並ぶ属性として重要視している。
リアルなのに、運を肯定しているのか。
しかし、何だろう。
運って……、
例えば力が拮抗した時、
運の良い方が勝つ。
そんな気はする。
運は、
きっと無視しないほうが良い。
少しは入れておくほうが良いだろう。
そうだ。
設定に……、
『傀儡はマスターに従う』
これならどうだ。
『受理』
あぁ通った。
これで傀儡への、
指示はできそうだ。
でも、
どうやる。
ゲームの場合の必勝法は……、
ヒット&アウェイかな。
戦力的に劣る相手に、
一撃を加え、離脱して、
一撃を加え、離脱してを繰り返す技。
ゲリラ戦とかも、
このヒット&アウェイだと聞いたことがある。
設定に……、
『敵の見えない所から攻撃を加え、逃げる。再び敵の見えない所から攻撃を加え、逃げる。これを繰り返す』
どうだ。
『受理』
通った。
良かった。これで少し勝ち目が見えたかもしれない。
あとは戦闘のタイプだな。
装備が兵士、格闘家、魔術師タイプの者だけ。
ヒット&アウェイなら、
どれでも、行けそうだな。
剣を使いたいな。
でも火系の魔法も使いたい。
相手が遠距離攻撃型で、こっちが近接攻撃型なら、
近寄る前にやられることを警戒しなければ、いけない。
火系の魔法を少し使い、遠距離攻撃を制した上で、
近接戦に持ち込むか。
うん……、
悪くなさそうだ。
だとすると、
近接戦に持ち込むためには、素早さが必要だろ。
火属性で20ポイント。
ややこしい。
計算していこう。
まず500
火属性で20ポイント 480ポイント
運に10ポイント 470ポイント
力に100ポイント 370ポイント
体力に100ポイント 270ポイント
素早さに100ポイント 170ポイント
知力はどうしよう。
知力を上げると、どうなるのだろうか。
魔力と連結していると考えるのが筋だな。
でも、
命令に従うのも、知力と連動しているのでは?
……
一方その頃魔界では、
「魔王様。調整者が調達できました」
宰相は言った。
「そうか……、どうだ」
魔王は尋ねた。
「暴れています」
「そうか……、威勢がいいな。いつも通りな」
「はっ」
宰相は調整者の元に向かう。
「調整者様、お待たせしました」
宰相は言った。
「なんだ、さっきから調整者、調整者って、俺の名前は佐藤五郎だよ」
佐藤は言った。
「それは失礼を……、佐藤様」
「それで何なんだよ。ココは?」
「ココは魔界、いわゆる夢の中にございます」
「夢の中?たしかに、さっきまで家で寝ていたしな。しかしリアルな夢だな」
「楽しんで頂けましたか?」
「楽しんでなんかないよ。早く目覚めさせろ。俺は忙しいんだ」
「ははは。御冗談を。
夢の中ですから、いくら時間が経ったように感じても、一瞬の出来事ですよ」
「そうか。たしかにな」
「お忙しいのでしたら、夢の中ですから、ゆっくりなさってください」
「やりたい事があるんだよ」
「なんですか?」
「ゲームの練習だよ」
「ゲーム。それはどんな?」
「格ゲー。格闘ゲームだよ」
「それは、ゲームのキャラクターを戦わせる遊びですか?」
「そうだよ」
「そういうゲームがお得意で?」
「まぁな。そういうゲームの大会で、結構いい所までいくぞ。まだ五位が最高だけどな」
「それは立派なご成績で」
「舐めてんのか?」
「そうではございません。
実はこの夢の世界でも、同じようなゲームがございまして、ぜひ佐藤様に遊んで頂きたい」
「へぇそんなのがあるの?」
佐藤は、にやりと笑った。




