インチキ
「治癒魔術は?」
「どんな魔法ですか?」
「体力を回復させる魔法」
「ございません。金剛寺様の世界には?」
「いや。僕の世界にもないのだけどね」
一応書いてみようか。
回復系アイテムは?
ダメか。
治癒魔術は?
ダメか。
このどれかが手に入れば、勝利しやすそうだけど……。
これもチート扱いなのか……。
想像以上に、チートの範囲が大きいな。
「よくよく考えると、RPGの世界も、チートすぎるよな。死人が生き返るし、怪我したって、魔法ですぐ治る。一度行った街に戻る魔法はあるし、薬も使わず、敵を眠らせることはできる。ちょっと待てよ」
『敵を眠らせる魔法が使える』
これならどうだ。
『エラーコード4649』
やっぱり無理か。
そうだ。
「アル。この世界に相手を眠らせるような物はないか?」
アルは考え込んでいる。
「ご用意いたします」
アルは、
部屋を出て行った。
十分ほどしてアルは戻った。
「こちらにございます」
目の前に、
草の匂いがするお茶のようなモノが出された。
「これは?」
「これは薬草茶にございます。心を落ち着かせる効果があり、相手を眠りに誘います」
「傀儡は飲むかな?」
「……そもそも、傀儡は飲み物など飲むのでしょうか?」
アルは不思議そうに言った。
「こういうのじゃなくって、吹き矢とかで撃って、相手を眠らせる毒みたいなの」
「あぁ、なるほど。では賢者様にお聞きしては?」
えっ、何……、
賢者とかいるの?
めっちゃ萌える。
「会わせて貰おう」
「では、お呼びします」
アルは再び出て行った。
十分ほどしてアルは戻った。
「賢者様にございます」
先ほどの老人だった。
うわ。
この人に聞くのか……、
なんか少し気分が悪いな。
「調整者様。先ほどはご無礼を」
賢者は頭を下げた。
うわ。
こんなに年上の人に頭を下げられるとか、
めっちゃ緊張する。
「気にしないで欲しい。
それより、
矢先などに塗り、相手を眠らせる毒などはないかな?」
「眠りの毒ですか……、
ありますな。
なんなら麻痺の毒とか、相手を死に追いやる毒とかもありますよ」
「そうか。じゃあそれを用意して貰おうか」
「何にお使いに?まさか我らに?」
「いや違うよ。傀儡との戦いで使うんだよ」
「傀儡との戦いで……、傀儡は、それで眠るのでしょうか?」
「眠らないの?」
「傀儡は人形です。
仮に人形に毒を使ったとして、人形は死にますか?
人形はそもそも生きてはいない」
「そうだよね。じゃあ、どうやって倒すの?」
「記録が一切残っておりませんので、わかりかねます。
ただ粉々に破壊すれば、倒した事にはなるでしょう」
「罠とか仕掛ける事はできないかな?」
「対戦場所に前もって行けるのなら、可能でしょうが、対戦場所に行けるのは、その時に限ります」
もしかすると、傀儡の素材が木とかなら、火属性が強いとかあるかもしれない。
「傀儡の素材ってわかる?」
「存じ上げません。我らは見た事すらないのです」
「傀儡を見たことがないって事?」
「傀儡はおろか、戦いもです。
厳密に言うと、調整者様を見るのも初めてです。
いや、これは正確ではありませんな。
つまり、記録も記憶もないのですよ。
仮に見ていたとしても……」
「じゃあ、眠りの毒が効くかどうかの推測すら怪しいのか」
「そうなりますね。あくまで人形に効くのかなという推測です」
「そんなの勝ち目が薄いだろ……」
「はて、調整者様は何を言われているのですか?
相手は同じ条件なのですよ。
なぜズルをなさろうとするのですか?」
「絶対に勝たないといけないから」
「それはそうでしょうが、あなたは元の世界でも、不正やズルばかり行っていたのですか?」
「そんな事はしてないよ。真面目に勉強したし」
「では何故、そのズルい能力を得ようとなさる」
「無双できないだろ」
「無双……、他に並ぶことのない強さ。そのような意味ですか?」
「そうだよ」
「あなたは、元の世界で、無双のような力を持っていたのですか?」
「持っていないよ」
「では何故持ちたがる」
「勝ちたいから」
「あなたは、元の世界の勉強で勝ちたくなかったのですか?」
「いや。勝ちたいよ。でもカンニングとかズルはしたくないし、いずれ困るのは自分だ」
「よくご理解されておられるではないですか」
僕はチートの語源を調べたことがある。
英語のcheatが語源で、
プログラム改ざんや、不正ツールを使い、本来できない有利な事をする。
という意味だった。
僕は少しショックだった。
でも、
それでもチートに憧れた。
僕は何故、
チートに憧れていたのか。
心が痛んだ。
もう考えるのは止めよう。そう思った。
だったら……、
『火属性の魔剣が使える』
これならどうだ。
『エラーコード4649』
やっぱり無理か。
「火属性の魔剣とかありませんか?」
「火属性の魔剣……、どのような物ですか?」
「剣から火が出る剣です」
「それは珍妙な……、
それでしたら、鍛冶師に言えば作って貰えるかもしれませんな」
「鍛冶師を呼んでもらえる?」
「はい。しばしお待ちくだされ」
一時間ほどして、鍛冶師が呼ばれた。
「それで小僧。なんだ、用は?」
ごつごつとした筋肉。
それに背が低い。
この人はドワーフ族か?
「あの、剣から火が出る剣を作れます?」
「剣から火が出る剣……、剣の中に細い管を入れて、そこに細かい穴を開け、その管に火属性の魔力を注ぎ込むとかなら、できそうだな」
「それ作ってください」
「ちょっと待ってくれ。お前素人だろう。この細い管を入れるのもそうだし、作る技術が難しすぎる。それにな。剣の強度も怪しい」
「あなたドワーフ族でしょ。太古の失われた技術の復興とかで」
「ドワーフ族?太古?失われた技術?何言ってるんだお前」
「あれ?そんな感じじゃないの?だっておじさん。ドワーフでしょ」
「なんだよ。ドワーフって、俺は普通の人間だ。ただ背が低いだけだ」
「だって鍛冶師はみんな背が小さくって、ドワーフなんじゃないの?」
「何を言っている。鍛冶師がみんな背が低いって誰が決めた。俺の親方なんかはものすごく大柄だぞ」




