中二病大戦
侍女は、長く美しい金髪で、肌の色も白く美しかった。
あんなにキレイな人を、僕は今まで見たことがなかった。
年齢はいくつなのだろう。
名前は何というのだろう。
そんな事が気になった。
しばらくして、侍女が戻ってきた。
「調整者様。お茶が用意できました」
侍女は、
お茶を机の上に置き、
入口の辺りに戻っていく。
入り口が定位置なのだろうか。
僕はお茶を飲む。
「あち」
僕は猫舌だ。
(ふふふー)
お茶を冷ます。
しかし、あの侍女の名前は何だろう?
君の名前はと聞くか?
それだと、
自分から名乗れってならない?
でも、
僕は金剛寺亜瑠麻。君の名前はって聞く?
いや……、
ちょっと恥ずかしいな。
少し待てよ。
名前を聞くのは、本当に恥ずかしいのか?
「君の名前は?」
「アルとお呼びください」
「そうか。アルか……」
アルマって、めっちゃ被ってて言いにくいじゃないか。
どうしよう。
調停者様のお名前はとか、聞かれたら?
(どっくん、どっくん、どっくん)
そんな事を考えていたら、
あっという間に、紅茶が冷めてしまった。
「アルは僕の名前が気にならないのかい?」
思わず、
声に出してしまった。
どういう、
金剛寺だ……か。
亜瑠麻だ……、君の名前と似ているな、これも運命の……か。
「私のような下賤の者が、調整者様の真名を知るなど、恐れ多い事……」
アルは言った。
真名って何?
あぁ真の名前か。
えっそれって、
真の名前を知ると支配できるって設定。
「アルは真名なのか?」
僕は冷静を取り繕い聞いた。
「まさか」
アルは冷たく笑った。
「通り名でございます。私の真名を知っているのは、王ただお一人」
「そうだな。忠義である」
僕はなんとか、取り繕う言葉を出せた。
アルは軽く会釈をした。
再び沈黙。
僕は沈黙が苦手だ。
「僕がなぜ、真名を言うと思った。通り名の可能性だってあっただろう」
しまった。
話を続けてしまった。
「それは失礼をしました。
なぜか。
あなた様は、
いえ調整者様は、
真名をおっしゃる。
そんな気がしまして……」
「そうか。
別に気にしなくても良い。
戯れよ」
「はい」
あぁ、
なんとか、
やり過ごした。
しかし、
どうしよう。
調停者様と言われるのは、しっくり来ない。
金剛寺様と呼んでもらおうかな。
金剛寺。
それが僕の通り名だ。
これにしようかな。
「金剛寺。
それが僕の通り名だ」
おぉ、ようやく言えた。
「金剛寺様が、通り名なのですね。わかりました。調停者様」
あれ、
何か違う。
「なぁ、アル」
「なんでしょうか。調停者様」
「調停者様は堅苦しいな」
僕はなんとか、調整しようとする。
「では、調停者殿。調停者君。調停者ちゃん」
おいおい。なぜ調停者から離れない。
というか、
僕なんで、名前で呼んでもらう事に固執してるの?
「調停者という言葉が、堅苦しいのだよ」
「では、ご主人様……、
しかし、あなた様は、ご主人様ではないし。
お客様で、どうでしょうか?」
「お客様は……」
「ではお客。ご客人などは?」
「金剛寺はどうだ?」
「そんな通り名で呼ぶなど、無作法ではございませんか?」
アルは不思議そうな顔をする。
えぇどうしよう。
たしかに目上の人に対して、通り名で呼ぶってのは、無作法かもしれない。
どうしよう。
君と僕との仲じゃないか……、
いやいや。今会ったばっかりだし、
そうだ。年齢を聞こう。
僕のほうがきっと年下だ。
年下だから、
通り名で呼んでくれで行こう。
「君はいくつだ」
「十五にございます」
「僕は十三歳だ」
「存じ上げております」
えっ。
なんで知ってるの?
「なぜ知っておる」
「調停者様は、皆十二歳から十三歳の方だと聞いております」
僕と同い年という事は、皆中学二年生ってこと。
世界中から中学二年生を集めて、
戦を行っているって事なのか。
しかし、
なぜ中学二年生なのだ。
「なぜ皆十二歳から十三歳なのか。アルは知ってる?」
「いえ。存じ上げません。ただ……」
「ただ……」
「賢者様が『想像の力が最も強く。魔力が最も暴走しやすい時期』だと、おっしゃっていました」
想像の力が最も強く。
魔力が最も暴走しやすい時期……、
聞いたことがある。
中二病。
もしくは厨二病。
子供と大人の狭間であり、
大人への変化を社会に矯正される時期。
僕と同じような立場の子と聞いた時点で、
覚悟はしていたが、
僕の同士じゃないか……。
中二病だよ。
と自分で揶揄しながらも、
それを良しとしていた自分がいる。
中二病だと、
レッテルを貼られようとも、
想像力のない大人になんかなりたくないと、
もがく。
その中二病同士が大戦を行い、
想像力を潰しあうなんて、
どんなに神は横暴なのか?
いや……、
横暴なのは世界のほうかもしれない。
「アル。
この戦いはどうやれば、終わらせることができる?」
「戦いに勝ち続ければ……」
「そうか……」
「あのアル」
「はい」
「僕は君の年下だ。
だから金剛寺と通り名で呼んで欲しい。
二人の時だけでも良いから」
「はい。金剛寺様」
「ありがとう」
僕は金剛寺亜瑠麻。
世界をくだらない遊戯から解放させる者。
格好よく言っているのではない。
本気でそう思うのだ。
よし、
本気でやろう。
金剛寺亜瑠麻の真骨頂を見せてやる
「傀儡を作る時の説明書とかあるかな?」
「そちらの本が説明書です」
そこには、革張りの表紙の本があった。
なんか魔導書みたいで、
そそられえる。
異世界の本とか、読めるのかな。
ドキドキしながら、僕は手に取る。
見知らぬ文字だ……。
アルファベットのようでも、ハングル文字のようでもある。
不思議だ。見知らぬ文字だが、読めるようになっている。
まぁ……、そういう設定なのだろう。
異世界ラノベにも、よくあるパターンだ。
よくよく考えると、
あの設定ってチートだよな。
あの能力だけで、通訳できるし。
異世界人と、あれだけ喋れれば、
無双で戦わなくとも、
海外との通訳だけで、十分そうとか。
思うけど、
まぁいいか。
いや。
不思議だ。
なぜ通訳をしない。
あぁそうか。
異世界の人が自分だけだから、
通訳しても意味ないんだ。
客がいないから。
いや。
でも、
その世界の全言語しゃべれる、読める設定あるよな。
あれ、
通訳だけじゃなく。
言語学者もできるし、
外交官もできるよね。
なにげに、チートすぎないか……。
まぁいいか。
僕には関係のない問題だ。




