表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
2/7

犠牲

「傀儡に任せるという事は、調整者は死なないということか?」


デスペナがないのは、都合がいい。

何度でもやり直しが効くから。


「それは、もちろん。調整者様の身体には傷一つつきません」


身体には……、

なぜ限定したんだろうか?


「まさか、心に傷がつくとでも?」

僕はにやりと笑った。

なぜ笑ったって?

もちろん、格好いいからだ。


「今回の調整者様は、鋭いですな。その通り、死にはしませんが、元の世界に戻ります」


「はははは。じゃあ、わざと負けて死ねばいいじゃないか」


「理屈ではそうなります。しかし、死ねば心が失われます」


「元の世界に戻り、心が失われる……、いったいどういう事だ」


「いえ。心が失われると言っても、大したことではありません。勉強もできるし、笑えるし、喜ぶこともできる。恋もできます。ただ……」


「ただ……」


「その、どう言えばいいのでしょうか。

調整者様の、独特な発想や、想像力が、失われるのです。

まぁ大したことではありません。

思春期特有の感性や想像力、そういうものが消えるだけ」


ちょっと待ってくれ。

それじゃあ。

僕の色んな設定とかはどうなる。

あの積み重ねがなかった事になるのか。


僕は数日前の事を思い出した。


……


「もうたけし。この段ボールで作った剣のおもちゃ捨てなさいよ」

ママが言った。


「駄目だよ。まだ捨てちゃだめ、すごいいい出来なんだ。

SNSでもいいね!5つも貰ったんだよ」


「来年は、高校受験でしょ。いつまでも遊んでばかりいないで、現実を見なさい」


「なんだよ。現実、現実って煩いな」


「ママはあなたの事を、思って言ってるんでしょ」


「僕の事を思うなら、自由にさせてよ。

この剣だって、小学校の頃の絵の具で作ったんだし、お小遣いも貯金してるんだから」


「ママはそのエネルギーを、勉強につかいなさいって言ってるの!」


「僕の人生だ。僕の自由にしてもいいじゃないか。勉強だって、ちゃんとしてる」


「あなたね。そのエネルギーを、勉強に使えば、もっと成績をよくできるのよ。もったいないと思わないの」


「思わないよ。僕はね。ちゃんと考えているんだ」


「もう。勝手にしなさい」

ママはそう言った。

いままで何度、同じ台詞を吐かれたことだろう。

ママの勝手にしなさいは、

今回だけは見逃してやろう。

と同じ意味だと、僕は感じていた。


……


「想像力が消える。そんな事許せるはずがないじゃないか」

僕は言った。


「ははははは。何の役にも立たないでしょう」


「あなたが、それを言うのはおかしい。

あなたは、その役に立たない想像の力を利用しようとしているのだから」

僕は吐き捨てるように言った。


「黙れ!小僧。

お前に何がわかる。

お前のような小僧に頭を下げ続ける日々。

ワシはもっとまともな仕事がしたい。

でもな。

これをしなくては、国が亡びるのじゃ」


「そんな事知ったことか。

想像力が滅びるのは、それは国が亡びるに等しい」


「黙れ。黙れ。小僧。

ここには営みがある。

生きておる者たちがいる。

子もおる。孫もおる。

それを守るのが、ワシの役目じゃ」


「だったら、僕の世界にも、僕の世界の住人がいる。

それを守るのが、僕の役目だ」


「だったら守るが良い。

勝ち続ければ、お前の世界は滅びん。

でも逃げる事は許さない。

逃げても、お前の世界は滅びる」


「横暴じゃないか」


「横暴だとも、社会というのは、世界というのは、横暴なのよ。

お前の母親も、想像を奪おうとしただろう。

想像とはな。世界にとって、恵みにも、脅威にも映るのだ。

ならば、こちらの世界で、人を救う力に変えてみろ」


僕は考えた。

分岐はどうなってる。

戦う。

逃げる。

の択一だ。

戦って負けると、想像力が死ぬ。

逃げても、想像力が死ぬ。

想像力が生きるためには、

戦い勝ち続けるしかない。

一度も失敗せず、勝ち続けるしかない。

そんな事ができるのか。


「敵は誰なんだ」


「敵は魔族が用意した調整者の作る傀儡」


「もしかして、僕と同じような立場の子って事か?」


「そうだよ。その通りだ」


ちょっと待て。

それは想像力を持った者達が、想像した世界を守るために戦う。

そういう事なのか。


どこかで、見た光景だ。


あぁそうか。

小説投稿サイトか……、

想像力を持った作者同士が、自分の物語を守るために戦う。


僕は小説投稿サイトが大好きで見ていた。

面白い、面白くない、そう気軽に評価していた。

しかし、

あの世界の後ろには、自分と同じような人がいて。

そして、自分の物語を守るために、必死に戦っていたのかもしれない。


「そんな事をして、何の意味がある?」


「わからぬよ。

遠い昔、人と魔族が争い出した。

決着がつかず、このままでは、人と魔族が共倒れだと気が付いた。そしてこの代理戦争が始まった」


「僕たちには関係のない事じゃないか」


「そうだろうな。でもな、ワシにも、ワシの子たちにも関係のない話だ」


「犠牲になれと」


「そんな事は言わんよ。ほら勝ち続ければ、爵位もやろう」


「勝ち続けるなんて、不可能じゃないか」


「それはワシらの考える事じゃない。お主らは戦うだけじゃ」


「想像力を死なせたくなければ、戦い続けろという事なんだな」


「まぁそうじゃな。励めよ。小僧」

老人はそう言い、部屋から出て行った。


僕は部屋を見渡した。

広い殺風景な部屋に、ベッドが一つ。

机が一つ。

机の上には、端末のような板と一冊の本。

そしてメイドのような服装をした少女が一人。


「あの、あなたは?」


「侍女にございます。身の回りのお世話をいたします」


「なんでも、お願いしても良いのですか?」


「私にできる事でしたら」


「なにか飲み物などありますか?」


「ハーブ水、エール、お茶がご用意できます」


「エールとはなんですか?」


「お酒です」


「じゃあ、お茶で」


「しばらくお待ちください」

侍女は、扉を開け廊下に出た。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ