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代理戦争

世界に問題は溢れている。

しかし解く価値のある問題は少ない。

つまり最初の問いは、その問題は解く価値のある問題かどうかである。


……

千年

戦いが始まって、

千年の月日が経った。


人族と魔族の戦争。


千年もの間。


彼らは戦い続けた。


「このまま戦い続ければ、我らは共に滅びてしまう」

人族の神は言った。


「やむなし」

魔族の神は答えた。


そこに一人の小さき者が現れ、

こう言った。

「人族の神よ、そして魔族の神よ。

このままでは、あなた達だけではなく、他の動物や植物まで滅んでしまう。

それは余りにも迷惑というもの」


「迷惑だと。捻りつぶしてやろうか?」

魔族の神は睨みつける。


「小さき者よ。なにか妙案でもあると?」

人族の神は目を細める。


「はい。

他の者に代理で戦わせれば良いのです」

小さき者は頭を垂れた。


「詳しく言ってみろ」

魔族の神は、眼をほんの微かに緩めた。


……

人族の王宮では、召喚の儀が執り行われていた。


「しかし、いまいましい。いったい、これまで何回召喚を行った?」

王は苛立ちを口にした。


「記録に残そうとしても、毎度毎度記録が消えてしまい、記録が残っておりません」

宰相は頭を下げた。


「それはわかっている。

しかし、何故記録が消える。

記録が消えるのであれば、過去の情報を活かせぬではないか」


「神官によると、神が記録を禁じたと」


「なぜ……、なぜ記録を禁じる。神は我々を勝たせたくはないのか?」

王は頭を抱えた。


「王よ。ただいま召喚の儀が完了しました」

賢者は頭を下げた。


「今回の調整者は、いかなる様子だ」


「しきりに、頬をつねっております」


「現実ではないと信じたいのだろうな」


「はい。おっしゃる通りだと」


「では、いつものように頼む」


「はっ」

賢者は頭を下げた。


……

目覚めると、

魔法使いのローブのようなものを纏った白い髭を蓄えた老人が、

僕の顔を覗き込んでいた。


僕は風邪で寝込んでいたはず……、

なのに、

どこだ。ここは?


そうか。

夢か。

僕は頬をつねってみる。

特に痛くはない。

やはり夢なのか。


「調整者様が目覚められたぞ」

老人はそう言い、

どこかに走っていった。


「あの、ここは?」

僕は、近くのよろい姿の男に尋ねる。


「ここは、王国の調整者召喚の間です」

よろい姿の男は答えた。


王国?調整者?召喚の間?


勇者じゃないのか。


もう一度、僕は頬をつねる。

やはり痛くはない。


僕は少し疑問に思った。

夢の中で、

頬をつねった経験は、今まであっただろうか?


夢を覚えていないから、はっきりとは言えないが、

ないような気がする。


それに、ふだん頬をつねっても、痛くはない時もある。


この頬をつねるというのは、果たして効果が本当にあるのか?


そんな事を考えていると、

先ほどの老人が戻ってきた。


「調整者様。これからやってもらいたい事があります」


僕は考えた。

どうせ。

魔王討伐とか、そういう話なのだろう。

この手の話はラノベで飽きるほど見た。

ただ夢で、こんなにリアルに見るのは初めてだ。

どうする。

乗るか?

無視するか?


「報酬はなんだ?」

僕は好みのダークヒーローっぽく決めてみた。


「報酬は爵位にございます」


報酬が爵位ときたか。

まぁ定番だろうな。

でも、

ここで素直に受けるのは、ダークヒーローっぽくない。


「なんで僕なんだ?」


「なぜあなただと……、そうですね。神様が選ばれたのだと思います」

老人はあまり詳しくはわかっていないようだ。


「君は神々のシステムをよく理解できていないようだな」

そう言ってみた。

どうだ。

カッコいいだろう。


「おっしゃる通り。この戦争の記録も残せません。故に神が意図的に隠されておられると」


戦争の記録。

戦争ってなんだ?

それに記録が残せないなんて、ありうるの?

なに?

通常のラノベと設定違いすぎてない。


でも、ここで混乱すると、ダークヒーローっぽくないな。


そういえば、名前を聞かれてなかった。

名前をどうしよう。

金剛寺亜瑠麻こんごうじあるま

僕が作ってたキャラの名前でいこうか。


しかし、自分から名乗るのもな。

お名前はとか、聞かれたら。

人に名前を尋ねる時は、自ら名乗るものだぞ。

と言って、相手が名乗ったら、こちらから名乗るのが、普通だな。

よし、そうしよう。

それか、相手が名乗ってきたら、答えよう。


「それで、これからどうしろと?」


「まずは、調整者様の、お部屋にご案内します」

老人はどこかに案内する。


城と言っていたが、たしかに城のようではある。

しかも寒い。

風邪の時ってやたら寒いからな。

そのせいなのだろう。

しかし、

毎日毎日、ラノベとアニメ漬けだからだろうな。

こんな夢を見るの。


数分ほどで、部屋についた。


部屋は殺風景で、飾り気はない。

外から窓の光は入るようになっているが、

逃げられるような窓はない。

見た目はキレイに整えてはいるが、

牢獄のようだった。


「なんだ。この部屋はまるで牢獄のようだな」

と僕は悪ぶれた。


「はい。出ていかれると困りますからね」

老人は何の躊躇もなく、そう答えた。


「逃げるとでも、思っているのか」

ダークヒーローっぽく答える。


「逃げるのは構いませんが、逃げても、この世界では生活できませんからね」

老人は笑った。


ちょっと待って。

なにこの設定。

調整者って勇者枠で、世界を救う的な立場じゃないの?

代替が利かないでしょ。


「ご老体。ずいぶん偉そうにいうな。

手助けしないと、世界が危機になるのではないのか?」


「この戦いでは、人族と魔族が召喚した調整者同士が代理戦争を行っていただきます。

それでどちらかが、召喚できなくなると、召喚できなくなった方が、滅びます」


なに?

言ってる事がわからない。

セオリー通りじゃない。

しかも、

僕そんなに特別じゃないの?


「調整者って、何の役割があるんだ?」


「調整者とは、傀儡くぐつという人形に能力値を配する者の名前です」


人形に能力値を配する。

つまりキャラクターメイキングって事。

なんだゲームの世界ね。


「それは、設定は色々できるのか?」


「現実的なものであれば可能です」


現実的なものであれば……、

という事はチート設定はムリってことか。


もし「続きを読んでみたい」と思っていただけたら、

ブックマークしていただけるととても励みになります。


本作はすべて完結済みで、安心して最後まで読めます。


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