気付き
あれ……、
僕ってネットがなくっちゃ、
何にもできないのじゃないの?
そんな虚無感に支配された。
僕は万能な気がしていた。
どんな創造でもできるような気がしていた。
でも、
それはファンタジーという文脈の中だけの話。
チートという、
創造主にとっての都合のいい虚構の中だけの話。
僕に特別な力はなかったのか……。
「あの金剛寺様。お伺いしても?」
アルは尋ねた。
「どうしたの?」
「そのネットとやらは、何故必要なのでしょうか?」
「質問するんだよ」
「ネットは賢者様のようなもので?」
「うん。そう……、気になることは、だいたいネットでわかるんだ」
「私どもの国にも賢者はおります。質問してみては?」
「ちょっと科学的な問題だからね。技術的にムリだと思う」
「そうですか……、では試してみるのは?」
「どういう事?」
「どういうのでしょうか。うまく言えませんが、金剛寺様が望まれている事を、試してみるのです」
「危ないと思うのだけど」
「周りに人がいない場所とかであれば」
「そうか……、あのね。僕は火属性の魔法を撃ったあとに、風属性の魔法を撃って、威力が大きくならないかどうか調べたいんだ」
「わかりました。賢者様に話をしてみましょう」
「ありがとう。アル」
「ところで金剛寺様。このネットはどうしましょう」
「いらな……、ちょっと使えるかもしれないから、置いといて」
「わかりました。賢者様の元に行って参ります」
アルは部屋から出ていく。
僕はベッドに寝ころんだ。
そうか……、
ネットがなければ、実験してみたらいいんだ。
単純な事になぜ気が付かなかった。
僕の生まれたころから、ネットはあった。
動画配信を見て、僕は育った。
勉強も、遊び方も、全てネットの受け売りだ。
それが最適解だと思っていたし、
最適解の遊び方、
学び方を知っている僕は、
効率のいい生き方をしている。
そう思っていた。
たしかに、そうだろう。
おばあちゃんや、
おじいちゃんの生き方は非効率だ。
そんな気がしていた。
正直馬鹿にしていたのかもしれない。
でもよくよく考えたら、
僕は空っぽだ。
スマホのように、
情報を受信することしかできない。
人が考えた何かを、
自分で考えたかのように、
表現しているだけだった。
ネットがなかった頃。
おばあちゃんは、
図書館に行ったり、
試行錯誤を繰り返して、
学んだと言っていた。
その膨大な知識の恩恵の上に、
乗っかって僕は生きていただけなんだ。
勉強だって、
誰かが研究した事を、
覚えてるだけ。
創造なんて、
なに一つしていなかったんだ。
そして今、
僕はネットの力を借りずに、
創造しようとしている。
世界にはある現象を、
魔法の力で再現できないかと、
しようとしている。
それが……、
たまらなく嬉しい。
ネットは沢山の知識を与えてくれた。
しかし、
創造する。想像する。
そういう喜びや、
機能を僕たちから奪ったのかもしれない。
いや……、
ちょっと待てよ。
ネットがきっかけで、
新しい創造だって生まれたじゃないか。
そうか……、
違う。
ネットが悪いのじゃない。
ネットがなければ、諦める。
この考え方なんだ。
アルが賢者を連れて帰ってきた。
「金剛寺様。
賢者様そして魔法使いと共に、近くの荒地に向かいましょう」
アルは言った。
「うん」
僕はついていった。
僕たちは馬車に乗った。
賢者は少し柔らかい表情をしていた。
「僕を外に出してよかったの?」
「実験ですからな」
「そっか……、この人たちが魔法使い?」
「そうです。こちらが火属性の魔法使い。こちらが風属性の魔法使い」
僕と二人の魔法使いは会釈をする。
「あの……、火と風の魔法を組み合わせるとか、したことありますか?」
二人は首を振る。
「しかし、火属性の魔法と風属性を組み合わせるというのは、どういうことですか」
火属性の魔法使いは尋ねた。
「火災旋風って知っている?」
二人は首を振る。
「天に届くような炎の柱ができる現象だよ」
「メガフレームの事ですか?」
「なにそれ?」
「火属性魔法の最高位の魔法です」
「その魔法は知らないけど、使えるの?」
「いえ。今そのメガフレームを使えるものはいません」
「そうなんだ。難しいの?」
「難しいのもありますが、危険なのですよ」
「そうなんだ」
「はい。その術者が何人も亡くなりましたから」
「えっ!そうなの……」
賢者が顔を歪める。
「そんなに危険なものなのか?」
「賢者様もご存じでしょう。メガフレームの事件を……」
火属性の魔法使いは言った。
沈黙
「あぁ……、
たしかにそんな事があったかもしれないな。
おい。
王城に引き返してくれ」
「実験は?」
僕は賢者を見た。
「水属性の魔法使いを二人連れて行く。問題が起きては困るからな」
賢者は優しい顔で、
僕の頭を撫でた。
怖い人じゃないんだ。
僕はそう感じた。
僕たちは、王城に戻り、
水属性の魔法使いを乗せ、
再び荒地に向かった。
「では……、どうしたら良いですか?」
火属性の魔法使いは言った。
僕は考える。
あれどうするの?
「あの、一度火属性の魔法を使ってもらえますか?」
「では基本のファイアボールを!」
火属性の魔法使いは言った。
「お願いします」
火属性の魔法使いは神妙な顔になり、
杖で空間に線を書き始める。
「火の精霊サラマンドラよ。古の契約により、我に力を与えたまえ。ファイアボール!」
火の球が近くの枯れ木に一直線に放たれる。
(ぼん)
火は一瞬にして枯れ木に燃え移った。
うわ。
本当に火の玉が出た。
格好良い。
「あの、一度風属性の魔法を使ってもらえますか?」
「では基本のブレスを!」
風属性の魔法使いは言った。
「お願いします」
風属性の魔法使いは神妙な顔になり、
杖で空間に線を書き始める。
「風の精霊シルフィーユよ。古の契約により、我に力を与えたまえ。ブレス!」
突然突風が起きる。
うわ。
本当に風が起きた。
すごい。




