風
しかし、あの強さの風をファイアボールに当てると、どうなるのだろう。
「あの次、ファイアボールで着火した後に、ブレスいけますか?」
二人とも頷く。
「ちょっと待った」
賢者が止めに入る。
「向き的にこっちだとまずい。下手をすると燃え広がる。こっち側でやってくれ。それと水属性の魔法使い。万が一に備えろ」
「はっ」
魔法使いたちは賢者に従う。
なんか賢者が初めて格好良く見えた。
「なんじゃ。ワシが格好良く見えたか?」
賢者は笑った。
僕は頷く。
「そ、そうか」
賢者は照れくさそうに笑った。
「ほれ、お前もこっちに来い」
賢者は僕とアルの手を引っ張った。
(とぅんく)
心臓の鼓動が早くなる。
なんだ、この気持ちは……。
ま、いっか。
それでどうなるのだろう。
「では火属性の魔法の後、風属性の魔法を使ってもらえますか?」
二人とも頷く。
火属性の魔法使いは神妙な顔になり、
杖で空間に線を書き始める。
「火の精霊サラマンドラよ。古の契約により、我に力を与えたまえ。ファイアボール!」
火の球が近くの枯れ木に一直線に放たれる。
(ぼん)
火は一瞬にして枯れ木に燃え移った。
風属性の魔法使いは神妙な顔になり、
杖で空間に線を書き始める。
「風の精霊シルフィーユよ。古の契約により、我に力を与えたまえ。ブレス!」
突然突風が起きる。
風は火に勢いよくぶつかり、炎の力を強める。
「水属性の魔法使い。準備をしろ」
賢者は命令する。
「はっ」
風はまだ続いている。
火の勢いは収まり、
そして消えた。
あれ……、
消えちゃった。
「消えましたな」
賢者は言った。
「消えちゃいましたね」
僕は言った。
「しかし、火は一時ぐっと燃え上がりました」
火属性の魔法使いは言った。
「風の調整ができたら良いのですが……」
風属性の魔法使いは申し訳なさそうに言った。
「おや。お前さん知らないのか? 調整の仕方を」
賢者は言った。
その場にいた全ての魔法使いが首を振った。
賢者はニヤニヤとした顔をする。
「賢者様はご存じなので?」
「いや……、実はな。
大賢者アイリス様の手記を手に入れての。
そこに魔力の調整法が書いてあったのだ」
「アイリス様というと、あの救世の巫女とも言われる」
火属性の魔法使いは言った。
「そうじゃ。
詳しい事は内緒だが……、この魔法陣のここをこの文字に変えてみろ。
それでブレスを撃ってみる」
「はい」
風属性の魔法使いは神妙な顔になり、
杖で空間に線を書き始める。
「風の精霊シルフィーユよ。古の契約により、我に力を与えたまえ。ブレス!」
そよ風が起きる。
「うわ。本当に調整ができました。これは何をなされたのですか?」
「若干の調整だよ。お前ら、これは機密事項だ。口外するでないぞ」
「はっ」
魔法使いたちは頭を下げた。
「じゃあ、もう一度やってみて良い?」
僕が言うと、皆頷いた。
火属性の魔法使いは神妙な顔になり、
杖で空間に線を書き始める。
「火の精霊サラマンドラよ。古の契約により、我に力を与えたまえ。ファイアボール!」
火の球が近くの枯れ木に一直線に放たれる。
(ぼん)
火は一瞬にして枯れ木に燃え移った。
風属性の魔法使いは神妙な顔になり、
杖で空間に線を書き始める。
「風の精霊シルフィーユよ。古の契約により、我に力を与えたまえ。ブレス!」
突然そよ風が起きる。
風は火にぶつかり、炎の力を強める。
そして見る見る間に炎は強くなった。
熱さと息苦しさが強くなる。
「水魔法使い」
賢者は叫ぶ。
「はっ」
水属性の魔法使いは神妙な顔になり、
杖で空間に線を書き始める。
「水の精霊ウンディーヌよ。古の契約により、我に力を与えたまえ。ワタボール!」
水の球が炎に一直線に放たれる。
(じゅー)
水の球は、一瞬にして消え去る。
もう一発。
「水の精霊ウンディーヌよ。古の契約により、我に力を与えたまえ。ワタボール!」
水の球が炎に一直線に放たれる。
(じゅー)
水の球は、一瞬にして消え去る。
もう一発。
「水の精霊ウンディーヌよ。古の契約により、我に力を与えたまえ。ワタボール!」
水の球が炎に一直線に放たれる。
(じゅー)
水の球は、一瞬にして消え去る。
「やばいぞ。火が消えん」
賢者は叫んだ。
「あの、土魔法で、上から土をかけられませんか?」
僕は叫んだ。
「アル。お前土魔法が使えただろう。やってくれ」
賢者は叫ぶ。
「しかし、私は初級の魔法しか使えません」
アルは叫ぶ。
「初級で良いです。使えるだけ使って、土を火の上にかけてください」
僕は叫んだ。
アルは神妙な顔になり、
近くにあった棒で空間に線を書き始める。
「土の精霊ノーマよ。古の契約により、我に力を与えたまえ。アース!」
土の塊が炎に覆い重なる。
火は一瞬弱まる。
アルはこちらを見る。
僕は頷く。
「土の精霊ノーマよ。古の契約により、我に力を与えたまえ。アース!」
土の塊が炎に覆い重なる。
火はさらに弱まる。
アルはこちらを見る。
僕は頷く。
「土の精霊ノーマよ。古の契約により、我に力を与えたまえ。アース!」
土の塊が炎に覆い重なる。
火はさらに弱まった。
そして、アルはそのまま倒れてしまった。
「アル!」
僕は叫ぶ。
「大丈夫だ。魔力切れだ。それより火はまだ消えんぞ」
賢者は言った。
「では、もう一度ワタボールを!」
「はい」
水属性の魔法使いは詠唱を行う。
「水の精霊ウンディーヌよ。古の契約により、我に力を与えたまえ。ワタボール!」
水の球が炎に一直線に放たれる。
(じゅー)
ようやく炎は消え去った。
僕はアルに駆け寄り、抱きかかえる。
アルの顔は真っ青で、
今にも死んでしまいそうに思えた。
「アル。アル。大丈夫? 死なないでアル!」
僕は叫ぶ。
「こ、金剛寺様」
「アル。大丈夫。火は消したよ。アルのお陰だ。ありがとう」
「そ、そうですか……、私はも……」
アルは目を閉じる。
「ア、アルー」
僕は叫んだ。
(ぐぅー)
何かの音が聞こえた。
賢者が側にやってきた。
「やれやれ。ちょっと待て。おいアル。ほれ焼き菓子だぞ」
賢者はアルの鼻の前に焼き菓子をゆらゆらさせる。
「そんなこ……」
僕が言いかけた瞬間。
アルの口が開き、焼き菓子をパクっと咥えた。
(もぐもぐもぐ)
「あの賢者様、口がパサつくのですが……」
アルは言った。
「ちょっと待て。ほら水筒じゃ」
(うぐうぐうぐ)
アルは水を一気に飲む。
「ぷはー。生き返った」
アルは言った。
「えっアル。大丈夫なの?」
「そりゃ大丈夫だろ。魔力切れなんだから」
賢者は笑った。
気が付くと、
周りの魔法使いたちも、
水を飲み、
焼き菓子を食っていた。
ポーションなんて、
チートじゃないと思っていた。
でも現実ではポーションは、チートアイテム。
完全回復するポーションがあれば、
24時間働けるし、
怪我があっても回復する。
病院はいらないし、
睡眠もいらない。
ご飯もいらない。
でも現実では、
眠たくなるし、怪我が治るのには時間がかかる。
お腹もすくし、完全回復なんかも難しい。
でも初級の魔法でも、
重ね合わせたら、最上級魔法のような威力が出せるし、
ポーションがなくても、焼き菓子で体力は回復する。
チートがなくても、
僕は十分に戦える。
そう思った。
どんな敵が現れようと……。
やれるだけの事はやってやる。
そう思った。
僕は奇跡になんか頼らない。機械仕掛けの神様なんかに頼らない。
そう思えた。
END
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
この作品は完結していますが、
反響があれば続編を書く可能性があります。
ブックマークしておくと、もし更新された場合に追いやすくなります。
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