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私は一年以内に呪いで死ぬらしい。けどそれ以外では死なないので肉壁になります  作者: 湯瀬木


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8/21

私が優秀すぎるため後輩に演習を試みる

飯沼先生が来てホームルームが始まる。そのあと、個人的に廊下に呼び出される。


「今日の3限なのですが、1年の演習をやっていただきたくて」

「2年でもあんな騒ぎになったのにですか?」

「その、1年生は難しい試験を突破した全能感がまだある子が多くて」

「わかりました。全員の鼻っ面をへし折ります」

「そ、そこまでしなくていいんですが…。よろしくお願いします」


というわけで3限に私は演習室に来ていた。

そして阿鼻叫喚になった。パニックは瞬く間に広がり、嘔吐する人も何人かいた。ここから出してくれ!そんな悲鳴まで聞こえる。気絶する人もいる。そんな中、おかっぱで紫頭の奴だけは私を強く睨みつけていた。


飯沼先生があちゃーという顔をするが、何かを唱えると、皆ぼーっとした顔になり、席に戻る。気絶していた奴も起き上がる。

そして先生が指を鳴らすと、皆ハッとした顔になり、正気に戻る。

先生は集団パニックの話や、理解の外側にあるものの話をする。ふむふむと私も聞く。

現代社会の常識と外れたものを見ると、理解しきれずに見なかったことにしたり、パニックになるという、まあ当然の話だ。というか、ここにいる奴らが怪異対策エリートの若い芽なら、そういう経験もしてて然るべきかと思ったが違うのか。

パニックの逃し方などの話をする先生。そのあとで先ほどのより軽めの演習をお願いされたので、プン太に小さい影を全員分出させた。それは勝手に掌の上に乗ったかと思えば、皮膚に沈んで、手首の血管を黒くしていくものだ。そこから血管を上っていく。


「パニックになる前に、自分は今パニックなんだと気付いて下さいねえ~~。それから深呼吸ですよ~~~~」


「ひいあああああああ!」


誰かが叫んだ。おそらくさっき気絶していた奴だ。それを皮切りに、また集団パニックになりかける。


「落ち着け!」


ビシッと言ったのはあのおかっぱだった。


「よく見ろ!これはつまめる!」


おかっぱは掌の黒い影をつまんで私の方へ投げた。プン太がそれをたべる。

おかっぱの言う通り、これは血管を汚すようなものではなく、そう見せるだけのものだ。

みんなおかっぱの言う通りにして、何とかこの場は二度目の集団パニックを防いだ。


「さすがは紫苑委員長ですねえ~~そうなんです。怖いからと目をそらしてもダメなんです」


授業が終わる。全員疲れ切っているのが分かる。それでもチャイムが鳴る前にみんなで汚した床を掃除していた。やはり育ちは良い。


「先生。ありがとうございました」


おかっぱが授業後にそう言いに来た。私にもなにかあるだろうかと思ったら何もなく、睨みつけてくるばかりだった。


「かわいくねえな」


呟きはおかっぱの耳に届いたらしい


「化け物が」


おかっぱは私の目を見てそう言った。


「駄目ですよ」


飯沼先生がいつもとは違った声色で言う。


「首藤さんは演習に協力して下さいました。怪異がどういうものか皆さん、身をもって学べたはずです。それなのにそんなことを言うのは駄目ですよ」


子供から、大人の圧力のある声がした。


「…すみません」

「謝るんなら私の方を向いて謝れよな!」


私は鬼の首をとったように気分が良くなる。


「…すみません」

「へっ。一年坊主が生意気言いやがってよお~」

「首藤さんも挑発はやめましょう」


飯沼先生にそう言われてしまうと何も言えなくなる。しかしおかっぱは私をまだ睨みつける。私もおかっぱを睨みつける。



「ってことがあったんだけどひどくないか!?」


昼休み、いつものメンバーに伝える。もちろん感情の共有のためであり、私に同情してほしいから話題にした。


「いや、最後雑魚い下っ端みたいなこと言うなよ。首藤も」

「そうだよ1年だぜ?それに今7月だから、入学したのは1年の方が先じゃん」

「転校生の首藤の方が後輩だな」

「何その怖すぎる演習…俺も気絶してたかもな…」

「まだ1年なんだぞ。加減してやれよ」


各々好き勝手に言う。


「はあ?私が可哀想という話をしているんだが」

「可哀想には見えねえからなあ」


熊川が言う。


「てか、怪異エリートの皆さんさあ、昔から怪異が見えたりとかはしないの?」


誰から話そうかという雰囲気の中、口を開いたのは須和っちだった。


「不気味なものを感じ取ったり、一瞬みえたりするくらいの奴がほとんどだ。一部、首藤のように、いや首藤レベルはいないが、きちんと見えたり触れたりする人もいる」

「そんなもんなのか。昨日春日井もバケモン殴れなかったし」

「それは…不甲斐ない。てかあの時の絆創膏ってなんだったんだ?」

「私のズボンのポケットに入れてあって、私の気?みたいなのが移ってる」

「すげえな」

「多分」

「曖昧なのかよ」

「こういうのって誰から教わるもんでもないからな」

「まあ、そうか」


春日井は立ち上がる。


「あ、オレ、弟の様子見てくる」


そうやって各自解散となった。須和っちと二人で歩いているときに、白部先輩と出会う。


「ここにいたんですね。探しましたよ」

「あ、白部先輩。連絡先交換しましょう」

「え。ああ。もちろん良いですよ」


白部先輩も連絡先の交換に慣れていないようで、それが妙にかわいかった。


「はい。その読み取りで…はい。これで私を追加できたので…あ、須和っちも交換したら?その方がよくない?」

「そうだけど…。白部先輩、い、良いですか?」

「は、はい。もちろん。私で良ければ」


二人はあまり友達がいないのだろうと勝手な妄想をする。


「で、白部先輩は何の用だったんですか。また実習?」

「いえ、校長先生が、その、様子がおかしくて」

「私のせいっぽいやつですね。私も話したいことがあったので話してきまーす」

「俺も行く」

「まあストッパーは必要か」

「私も行きます。念のため」


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