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私は一年以内に呪いで死ぬらしい。けどそれ以外では死なないので肉壁になります  作者: 湯瀬木


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16/21

茶野もパーティーに加えたぞ!

翌日、いつものメンバーとの昼食を断った。正直、憔悴した様子の春日井と顔を合わせ辛かったのもある。一人で外を見ながら弁当を食べている茶野の机に椅子を持っていく。

そして向かいに座る。


「首藤さん。どうしたの?」

「茶野は一人が好きなのか?いっつも一人みたいだけど」

「んー。ただのぼっちだよ。ぼく、共感性に欠いていて、空気も読めないから、友達なんか出来るわけないんだってー」


やはりいつも通りの口調だ。悲壮感も何もない。事実をただ述べているような雰囲気。


「そんなこと誰が言ったんだ?」

「おとーさんおかーさんおにーちゃん」

「私は茶野の友達だから、外れてるな」

「そうなの?」

「連絡先教えてくれ」

「いいよー」


茶野は少し喜んでいるように見える。


「昼ごはんも一緒に取らないか。須和っちとか春日井とか」

「一緒に食べてみたいかもー!うわあ。嬉しいなあ」


行ってから、須和っちや春日井たちがどう反応するか考えていなかった。

まあでも、なんかあったらその時に考えよう。

私は彼と、朝に買っておいたパンを食べた。


「友達だから卵焼きあげるー」


茶野から箸で直接卵焼きを与えられる。


「やりい」


そうすると周りがひそひそしだした。

その時は気が付かなかったが、私と茶野が付き合っているという噂が流れだしていた。

放課後、須和っちに頼み込んで勉強を教えてもらうことにした。春日井と茶野も一緒だった。春日井は昨日の事があったせいか、いつものような陽気さは無く、やはり暗い面持ちだった。

私の部屋に折り畳みのデスクと椅子、ホワイトボードを持ち込んでやることになった。更に何故か白部先輩も来た。大所帯だ。ちょっと嬉しい。


「始まる前にだな」


須和っちがホワイトボードの前のテーブルの面に手を広げて言う。なんか盛り上げてくれるのだろうか。


「えー…首藤と茶野が付き合っているという噂が立っている。それはその、本当か?」


誰もからかわない。白部先輩も目を見開いて驚いている。「マジ」の空気だ。

茶野はへへへと笑っている。誤解されるだろう止めろ。


「まず、私がここにきて1週間も経っていないし、茶野と本格的に話したのは昨日がはじめてだし…。あと私は、このままだと1年後に死ぬ。その中で恋人を作っている余裕はない。誤解だ。茶野はへらへらしてるけど誤解だ」

「誤解でした~」

「そうか」


須和っちはそれだけ言って、授業が始まる。何だったんだよ。春日井だけがプッと笑ってそのまま笑い転げた。


須和っちの授業は分かりやすい。白部先輩の授業も分かりやすい。悪いのは私が全然追いつけていないところだ。問題の前提条件から分かっていないことが多い。

春日井も茶野も別に成績はそんなに悪いわけではないらしく、集まりが面白そうで参加したらしい。春日井と茶野は音楽の趣味が合ったらしく、それで雑談になり、須和っちに注意される。


「すまん…。私の頭が悪いせいで…」

「いつになく気弱じゃん」

「私を弱気にさせるくらい私の頭が悪い!」

「なんかすっごく矛盾してないかなあ」


春日井と茶野は寮に帰ることになった。春日井は部屋を出る前に私に寄って来る。


「ぜってー呪いなんて解いてやろうな!」


それはいつもの春日井に見えた。


「あたぼうよ!」


へらり。春日井の表情筋は緩んで笑った。春日井はこの顔がよく似合っている。

二人は部屋から出ていく。


「呪いの事で進展があったのは聞きましたが…どんな進捗か確認してもよろしいですか?」

「あっ。はい」


プン太が呪いの化身のようなものであることと、私の呪いはもしかしたら他の効果を狙ってのものかもしれない、ということを話す。

須和っちと白部先輩は唸ったり、上を向いたりして考えている。


「…呪い、ではなくまじないのようなものなんでしょうか…」


白部先輩は呟く。教室内の空気が固まるので、別の話をする。


「須和っち、明日から白部先輩と茶野を昼メンバーに入れて良いかな?」

「茶野はともかく白部先輩も!?ええ!?そ、そんな、恐れ多い…」


白部先輩は苦笑する。


「須和っちと同じでぼっちで寂しいんだって」

「首藤さん!そこまで言わないで下さい~!」

「まじすか!?…俺みたいなもんか…。いや、その気持ち、わかります。分かりますよ白部先輩」

「須和くん…」

「須和っち、白部先輩は友達だよな」

「恐れ多いですが、首藤が来るまで、一番学校内で会話していたのは白部先輩です。…それを友達と呼んでいいのでしょうか」

「良いだろ別に。連絡先も交換してるし」


二人は頭をかきむしったり、明後日の方向をみたりと、照れていた。ちょっときもい。


「朝も私と須和っちは食堂にいることが多いので是非」

「う…うれしい…。ちょっと私今泣きそうです」

「大げさな」

「首藤!勉強に戻るぞ」


自分の中の狂乱を抑え込み、再び勉強を再開する。二人掛かりでどちらも優秀な講師なのに本当に申し訳がない。

寮の門限ギリギリまで二人は教えてくれた。私は完全に頭がパンクしていた。


「今日は早く寝てくださいね。記憶の定着と睡眠には大きな関係があるとされています」


白部先輩がそう言ったのでさっさと寝ることにする。


翌日は雨だった。緑島にランニングするか聞くと、しないとのことだったので、私もやめる。ちょっと、いや結構寂しい。

中間考査が迫っているので、昨日の勉強会の復習をする。二度寝したくなる。

一瞬寝落ちしてから気分転換のためシャワーを浴びた。

また勉強してから朝食へ向かった。

須和っちと白部先輩がいた。白部先輩は私を見つけると、ニコニコとして手を振った。


「おはようございます~」

「おはようございます。須和っちもおはよ」

「はよ」


食券を買いに行き、定食を持って二人の所へ戻る。


「何の話をしてたんだ?」

「ぼっちあるあるだな…」

「委員長ってぼっちがデフォなん?」

「紫苑くんは…どうでしょう」

「ぼっちに見えるな」

「4年の茶野さんは人望篤い方に見えましたね。活発で明るくて」

「茶野?…茶野の兄って元会長だったのか」

「はい。茶野さんのうちは私のように、代々その家がそっち系で」

「白部先輩もそっち系だったんすね」

「はい」


水を飲みながら白部先輩は言う。

やはり遺伝とそういう能力は関係があるようだ。そしたら私の実母もやはり何かあったのではないかと白米を食べながら勘繰る。


「というか、首藤のいた世界って、並行世界なんだよな。その並行世界って、例えば有名人とかも同じだったりしないのか」

「確かに。ちょっと検索してみる」


一部有名人は髪と目が鮮やかだがいた。しかしいる人もいればいない人もいる。


「どういうことだろう」


二人に聞いてみる。


「例えば…芸能界は運の要素も大きいから、並行世界のズレで売れる人、売れない人といるのかもしれません」


白部先輩は顎を触りながら言う。


「じゃあ、いないわけじゃないってことですよね!ということは並行世界の首藤もいるってことになりませんか!」


目に光を輝かせて震えながら須和っちは言う。


「須和っちナイス!この世界の私を探したら良いんだ!!」


さっそく私は私の携帯番号に電話する。しかし、出ない。須和っちから電話すると、私のケータイが鳴る。そりゃあそうか。父母の電話番号はメモリに入っているので電話すると、どちらも使われていないとアナウンスが鳴る。落ち込む。もう駄目なんじゃないかと思う。


「まあ、ズレがありますから。」


白部先輩は慰めてくれる。家に直接行くしかないようだ。次の土日までが遠く感じた。


その日は昼前に呼び出された。紫苑と緑島と共に。珍しいメンバーだし、実力にも疑問が生まれる。が、私に口を出す権利はない。


職員室で私たちを呼んだのは馬橋先生だった。隣の部屋に移動する。


まとめると、とある工事現場で事故が多発しているという。


「それだけですか?怪異は?」

「確認してきてほしい」


この人選でいいのかとは聞けない。まあ緑島の実力も知らないし怪異も弱めの呪詛などだろう。それでも納得できないが、仕方ないので現場に向かう。


「私は二人と面識があるが、二人はどうだ?」


地下鉄で二人に聞く。


「二回一緒になったよね。紫苑ちゃん」

「そう呼ばないで下さいって言ってるでしょう」

「どんな実習だったんだ?」

「あるホテルの部屋で寝ると絶対に恐ろしい夢をみるってやつと、リヤカーを引くおばあさんがいるんだけど、その中身が人間ってやつ」


脚をぶらぶらしながら緑島が言う。


「どっちも時間がかかりそうな案件だな」

「うん。一晩かかった。どっちも」

「…体力勝負だな」

「今回もそういう系だと思うよ」

「緑島…助けてくれ」

「あはは」


紫苑は俯いて何か考え事をしている。


「紫苑、どうしたんだ?」

「まあ、行ってみないことにはわからないですよね」

「そうだな」


工事現場は一軒家を作ろうとしているのか、あまり大きくはなかった。でも四方をビルや住宅に囲まれており、気の流れが悪い。


「消耗戦になりそうだな」

「だね」

「ですね」


基礎工事だけ終わったそこに足を踏み入れる。

ぴき、音がしたが、中はよどんだ暗い空気が流れるだけで何もない。

ただ、怪我をした現場の人の無意識の怨念がある。プン太はそれをペロッと食べる。

緑島も紫苑もうろうろしている。


「何か来る…」


ぎゃおぎゃおぎゃおぎゃおぎゃおぎゃお


男性の低い声だ。何を言っているかはわからないが怒っていることだけは確かだ。狭い敷地の空に大きな顔が出現する。ふっとそれが消えたかと思えば、四人、細い影が襲ってくる。近づいて攻撃を受けてみると、首を絞めて、その長い手で釣り上げてくる。手首を切ってくる。痛い。苦しい。プン太がそれの首を切り離すと消える。もう一体も手裏剣を投げて切り裂くが致命傷に至らない。倒れたので、馬乗りになって切れ目を引きちぎると消えた。

狭い敷地で逃げようとして、紫苑と緑島は背中合わせになっていた。あと二体。

紫苑はトランプを投げて相手の裂け目を作る。だが小さいそれはすぐに閉じてしまう。

緑島はポケットからハサミを取り出す。息を掛けるとそれは大きくなる。そうして影を切りつける。

その間にも紫苑にじりじりと影は伸びていく。紫苑は焦りから、トランプの狙いも外してしまう。


「トランプを投げろ!紫苑!」


紫苑がトランプを投げる。それは胸に当たった。その切込みが閉じる前に私が懐へもぐりこんで無理やり割くようにこじ開けていく。敵の腕が首に刺さる。いてえ。

どうにか割き切って影は消える。


緑島の方を見ると、影は大きなものになっていた。影を切りつけ、攻撃も防ぐ緑島。

私も加勢する。プン太はすでに足などを分断させていたが、すぐに元通りになる。


「プン太!脚いけるか!」


プン太は脚を切る。私も割くのを手伝う。が、今までの影とは違い、固い。緑島が逃げようとして転ぶ。私は走って彼の上に被さる。背中が刺されている。何度も何度も。大丈夫。大丈夫。私は死なない。


紫苑がナイフを取り出す。


「手は攻撃するな!今は私に集中させておけ!」


ばしゅ、ざじゅ、そんな音が背中から聞こえる。

紫苑が戦っている。しかし、やはりすぐに戻ってしまう。集中しろ。どこを狙えばいい?

相手をよく見る。腹の一部が色がほんの少し違う。。


「腹だ!紫苑!プン太!」


紫苑とプン太は腹を攻撃する。すると影は身もだえる。私への攻撃も止まらない。

顔も刺される。


「ちょ、ちょっと、どいてよ」


緑島が言う。


「今どけるかよ!」


すみませんでした。すみませんでした。すみませんでした。すみませんでした。すみませんでした。すみませんでした。すみませんでした。すみませんでした。すみませんでした。


声がする。平坦な男性の声。ずっと謝り続けている。これはあの影の断末魔だ。

膝をついた影の腹めがけて大きい手裏剣を投げる。影は倒れて消えた。

嫌な気配も、無くなったわけではないが大分軽減した。


私は緑島の上に寝てしまう。疲れた。


「ちょ、ちょっと、首藤!!おい!!!死ぬな!!!」

「や、ちょっと疲れてるだけだから…」

「い、生きてる!?」

「生きとるわ…」


何とか起き上がって緑島から離れる。彼は私の血でぐちゃぐちゃだった。


「え…」


その惨状に緑島本人が一番驚いていた。

私はとても眠い。制服の背中は滅茶苦茶で、ほとんど布が残っていなかった。また紫苑からジャケットを借りる。眠い。


「あんだけ血、流しておいて傷もないの…?」

「そういう体質なんだ…」

「とにかくこれで実習は終わりですね。帰りましょう」


帰りの地下鉄、私はうとうとしていたが、緑島と紫苑は話をしていた。


「紫苑ちゃんは知ってたの?」

「前の実習では顔や体を溶かされてました。それでもすぐに治った」

「…なにそれ」

「僕も詳しくは知らなくて…」

「なんだそれ」

「あと…怪異は首藤先輩を狙う傾向もありそうです。今日もずっと攻撃してる僕と…プン太?より首藤先輩を狙っていましたから」

「多分、今日は想定されていた怪異よりもレベルも高かった。それも首藤と関係してるの?」

「…わかりませんが、それもあるのかも」


いろいろ話に入りたかったが疲れすぎていて駄目だった。

緑島はジャケットを脱いでいたが、その下まで血は染み込んでいた。緑島はそのまだらに染まった腕を見る。


「痛みはあるみたいです…」


紫苑は言った。


「ばかじゃねえの」


静かに緑島は呟いた。

電車内は規則正しく揺れる音が響く。

校長室に行ったとき、私は立ってられなかった。すぐに起きて、「眠っていただけです」と言ったが、その日の夜は病院で寝ることになった。


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