生意気な後輩だ!
昨日と同じく早起きをしてランニングを始める。緑島が私の姿をみて駆け寄ってくる。
相変わらず少し前を走る。しばらく走って、息が切れる。
「もうバテてんのー?」
緑島は私を見下げて煽ってくる。
「か弱い乙女だぞ私は」
「似合わなっ」
「まあそうかもな」
持ってきた水を飲む。
「緑島は霊感?強いのか?」
「実習言ったことあるくらいには」
「じゃあ相当じゃないか」
「なーんもできなかったよ。先輩に任せきり」
「それでも学校は緑島の力をちゃんと評価してる」
「なんかさあ!首藤にそういうこと言われるとかゆくなる!」
「首藤アレルギーか?」
「そうじゃなくて!そうかもだけど!ほら、休み過ぎない!」
「はあい」
「首藤ちゃん」が「首藤」になった。私的にもこれはかゆい呼び方だったので、変わってよかった。その後緑島はテンポを乱されたらしい。ときどき私に追い抜かされていた。しめしめ。
ランニングを終え、シャワーを浴び、髪を乾かして結ぶ。私は髪を一つにまとめることしかできない。それすら覚束ないときが多い。緑島は本当にすごいなと思った。
食堂に向かう時に飯沼先生に呼び止められる。
「朝ご飯を終えたら、実習です」
「誰とですか」
「白部くんと、1年の紫苑くんとです」
「もしかしておかっぱの」
先生は頷く。
「朝食を終えたら職員室へ向かいます」
「お願いします」
朝食中、須和っちにその話をする。
「それは…急いだほうが良いんじゃないか」
「でも飯沼先生が朝食の後って言ってたし。あ、そうだ。紫苑って知ってる?どんな奴?」
「礼儀正しい真面目な後輩だよ」
「へえ」
私を睨みつけ、化け物と言っていたが、須和っちには礼儀正しい奴らしい。どういうことだ。
朝食を終え、職員室へ向かうと、白部先輩と紫苑が出てくるところだった。
「のんびり朝食なんて、事態がわかっているのか」
私と同じくらいの身長の紫苑は睨みつけてくる。
「飯沼先生の判断に文句つけるのか?」
私は言い返す。
「落ち着いて下さい二人とも。血圧があがりますよ」
焦った様子で白部先輩は言う。
「すみません!白部会長!」
紫苑はうってかわって平謝りをする。
「白部先輩って会長だったんですか」
「実はそうなんですよ」
「んなことも知らないのかよ…」
私にしか聞こえない声量で紫苑が言う。お?やんのか?
電車に乗りながら白部先輩にあらましを聞く。もちろん座席は白部先輩が真ん中だ。
「今回は大型のスーパーです。バックヤードに迷い込んだ人が消えているらしいです」
「なるほど。…そういえば、最初の歩道橋の時も人が消えてましたよね。あれって消えたままなんですか?」
「あれは無事全員穴から救出されましたよ。須和くんが大活躍でした」
あの時は攻撃のショックで死んだと思っていたのであまり覚えていなかったが、そんなことになっていたのか。やるじゃん須和っち。
「今回の対策と対応はどうしますか」
白部先輩に顔を近づけて紫苑が聞く。
「そうですね。私たちも行方不明になる可能性が高いと思いますので…なるべく固まってこうどうしましょう。怪異は…見て見ないことにはなんとも、ですね」
「はい!」
白部先輩は私にスーパーの上面図を渡してきた。それを見ると頭の中にある単語が浮かんでくる。
「蜘蛛の巣…」
私は呟く。
「何かわかりますか?首藤さん」
白部先輩は聞き逃したりしない。興味津々に私に聞いてくる。
この人はいつも穏やかな顔をしているので分かりづらいが、意外と感情豊かだ。
「いや、確定出来ないのでやめときます。混乱させるだけかもですし」
「そうですか」




