収益
「どうかしたんですか?」
受付嬢との話を終えたルナが戻ってきた。
「なんでもない」
「お酒でも飲みました?」
「いや、酔っ払いに絡まれただけだ」
「えっ、大丈夫だったんですか?」
「ああ。悪いやつではなかった」
そう言いながらも、背後に回られた感触が頭に残っている。軽い足取り、気配の消し方。そして豊満な胸。酔っていたが、隙は無かった。
「そうですか、良かったです」
ルナはほっとしたように息を吐き、抱えていた書類を差し出してきた。
「えーと、私が受けられる最高額の依頼を三つ持ってきました。それと、RTAで倒したモンスターの素材報酬と、配信の収益も受け取ってきました」
差し出された依頼書は三枚。ざっと目を通すと、すべて二十一階層のモンスター討伐依頼だった。報酬はそれぞれ五万ギル前後。三枚すべてを達成すれば、十五万ギルになる。
「配信報酬は折半で」
「いいんですか? 私、配信を撮っていただけですよ」
「ルナがいなかったら、それもなかった。それに折半は約束だしな」
言った直後、視界の端に通知が浮かび上がった。
【ルナから《¥130,000》送られました】
数字を確認し、思わず眉が動く。
「俺が十三万ってことは、二十六万か。思ったより少ないな」
「今回の配信収益が五万ギルです。投げ銭が二十万ギル。折半でソルさんには十三万ですね」
「配信収益ってそんなに低いのか」
「配信自体が攻略情報ですので、質が求められます。でも、配信を10分つけただけで五万ギルは凄いんですよ」
ルナは少しだけ遠くを見るような目になった。
「元パーティーですけど……星月の旅団では、一日耐久配信して、配信だけの報酬が五万ギルだったと記憶しています」
「質か。どうやって上がるんだ」
「攻略情報が少ないモンスターの配信は質が高いです。簡単に言えば、階層が上がるごとに、一回の再生数と、一人あたりの同接者の単価が上がっていきます。ただ……攻略組のトップランカーが、配信市場をほぼ独占しているのが現状ですね」
「そりゃそうだ」
「星月の旅団では22階層攻略で止まっていたので……これが、私の限界です」
ルナは申し訳なさそうに視線を落とした。
「これに関してはしょうがない」
依頼書をアイテムボックスへしまう。紙の感触が消え、視界の端に収納完了の表示が一瞬だけ浮かんだ。
「あと、名前を変更しないといけません。追放を言い渡されましたし……ソルさんの名前でも入れますか?」
その言葉と同時に、半透明のウィンドウが目の前に浮かび上がる。
【ルナ《星月の旅団》】
命名権をこちらに渡したらしい。
星月の旅団の文字を消す。
一文字ずつ、ゆっくりと入力していく。
「そういえば、攻略組はどこの階層で止まっているんだ?」
「確か……50階層だったと思います」
「50か……」
指が一瞬止まる。
「ルナの体力も考えたら、一日で行くのは不可能か」
「無理ですよ。ランダンRTAで、私の体力は知れたと思います」
「結構頑張ってたな」
「はい、頑張りました」
ルナは肩を落とした。隠しきれない疲労が、その仕草に滲んでいた。
入力を終える。
「そうしたら転移で持っていくか」
「はい?」
ルナがきょとんとした顔をする。
【この名前で宜しいですか?】
【YES】【NO】
【一ヶ月変更はできません】
【YES】【NO】
迷わずYESを押していく。
【名前を決定しました】
次の瞬間、表示が切り替わる。
『【ルナ《パーティー抜けました》】に決定しました』
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