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スピンオフ:兵士さん編① ―『勇者なんて柄じゃないので』より―

本作は、本編・第6話に登場する「兵士さん」のスピンオフです。

遠征クエストを通して、彼が何を見て、どう感じたのか。

普段は見せない、彼の内面に少しだけ触れる物語となっています。

スピンオフ:兵士さん編① ―『勇者なんて柄じゃないので』より―


ー遠征クエスト初日ー


遠征クエストの出発時、私の同伴者として雇っていた傭兵は、

「単独行動をする」とだけ言い残し、その場を去っていった。

……変わった傭兵もいるものだ。


拠点へ移動中に今度は"変わった冒険者"を見かけた。

"奴隷"を連れてきたようだ。

今日は変わった人によく出会う日のようだ


戦場では、またしてもその“変わった冒険者”を後方に見かけた

様々な魔法で的確に魔物を処理していた。

彼はなかなか腕の立つ冒険者のようだな。


ー3日目ー

今日までの戦闘はまだ余裕があったのだが

明日の戦闘はかなり激化する見込みだ。

既に私の身体には、はっきりと疲労の兆候が現れている。

このままでは判断を誤る恐れもある。

武器の手入れを終え次第、速やかに休息に努めなければ……。


ー4日目ー

本日の戦闘は過酷で、数人の冒険者が命を落とした。

"あの冒険者"の援護がなければ、私も負傷していた。

いずれ彼には、お礼をしようと思う。

街へ戻ったら、お礼をするかそれとも...

──今、考えるのはやめておこう。

同伴者の姿は、今日も見えなかった。

となれば、私は一人で戦わねばならない。

生きて帰れるかどうかもわからないのだから...


5日目

身体の動きが鈍ってきてしまった。

こんな時こそ、同伴者と協力して戦えたらと思うのだが……

あいにく、私の同伴者はこれまで一度も、姿を見せていない。


何とか拠点に戻ってこれた。

"あの冒険者"の援護もあってなんとか5日目を乗り切った。

しかしなぜ"あの冒険者"は周囲の冒険者を助けるのだろうか?

戦場で他人の心配をしていると、自分が命が危ういのに...


考えないようにはしていたのだが...

おそらく私の同伴者は遠征クエストには参加していない...

傭兵を雇った代金だけ盗まれたのだろう...

ここで無理をして命を落とすと元も子もない

少し休んだら彼にはお礼を伝えに行こう。

そして明日、街へ戻ってクエストを中断しよう


あの冒険者と話をした。

「初めて遠征クエストに参加した際に自分で作る飯がマズすぎて・・・」

私も初めての遠征クエストでは料理の腕の無さに絶望したものだ

それを思い出すと自然と笑ってしまった。

「料理ができる傭兵もいますが人気ですからね」

「実は説明をされてなかったせいで同伴者を連れていける事を知らなくて・・・w」

そんな失態をするようなギルドの受付なんているわけが...

いや、いる。1人だけ思い当たる人がいる

「もしかして、ギルドの"あの受付"の方じゃないですか?」

「そうそうwクエスト完了の報告の時に伝えたら上司にぶん殴られてたよw」

やっぱり"あの受付嬢"だ。私も知っている

まさかそんな大事な説明まで忘れるような人だったとは

申し訳ないけども大笑いしてしまった。

...思えば今回の遠征クエスト中に笑ったのが今日が初めてだ。


彼から他にも奴隷を連れてきた理由を教えてもらった。

彼は、フェイちゃんの料理の腕を

遠征クエスト中でも俺に役立てることで

長期的な遠征クエストでも

パフォーマンスを落とす事がなくなること。

拠点でフェイちゃんが待ってる以上

心配をかけないためにも負傷できない

だからこそ戦闘のモチベーションが高く保てること

……いろいろなことを話してくれた。

そして、隣にいたフェイちゃんは

「お役に立てるなら!」と、張り切った様子であった。

私の奴隷にも、同じように伝えたら……張り切るに違いない。


1人で戦場に向かい、拠点でも1人飯を炊く

思えば初日の戦闘自体は問題なかった。

戦場で問題が起き始めたのはパフォーマスが低下してからだ。

ならば――パフォーマンスを維持するために。

私も、奴隷を連れて来てみるのも良いのかもしれない。

……次回の遠征クエストで、試してみるのもいいだろう。


6日目

彼が挨拶しにきてくれた。

「今日も頑張りましょうね」

帰り支度をしようと思っていたのだが、

その言葉を聞いて、不思議と気力が蘇ってきた。

昨日、彼と話したおかげなのか、

戦闘中も、体の重さは感じなかった。

何より――私にも、帰りを待っている奴隷がいるのだ。

……少しだけ、彼の戦闘のモチベーションの高さが理解できた。


その夜

私と彼ととフェイちゃん

3人でフェイちゃんの作ったスープを飲みながら話をした。

「たまにはこういうのも良いものですね」と、私が言う

「せっかくの遠征クエストだから楽しくやりたいよね」と、彼が返す

「お役に立てて嬉しいです!」フェイちゃんが笑いながら言う


ー7日目 遠征クエスト最終日ー

最終日とは思えぬほど魔物の討伐は楽だった。

彼は同伴者のように戦ってくれた。

背中を任せられるというのは頼もしい限りだ。

彼は本当に腕の立つ冒険者なのだろう

私にとっては、あなたとフェイちゃんが本当の同伴者だったようだ。


無事に遠征クエストを終えることができた。

同伴者の傭兵に依頼金だけ盗まれた...

生きて帰れるか不安にもなった...

しかし良い戦友と出会えたのは何より嬉しかった。

帰ったら奴隷に遠征クエストの話をしてあげよう

ついでに、次の遠征クエストに同伴者として

同行してくれないかも聞いてみようと思う。

今回のお話は、本編第6話に登場した

「兵士さん」の心境を描かせていただきました。

登場する台詞は、すべて本編と同じものを使用しています。

そのため、スピンオフを読んだあとに

あらためて本編を見返すことで、きっと少し違った気持ちで

あの台詞たちを受け取ってもらえるのではないかと思っています。

兵士さんという“脇役”にも、小さな物語がありました。

読んでくださって、ありがとうございました。

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