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冥光輪廻 ― 二つの神に愛された魂 ―  作者: ミルハ


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2/21

闇に咲く薬草

遥か昔。


東の果てに連なる険しい山脈。

その麓に、周囲から忘れ去られたような小さな村があった。


山々は深い森に覆われ、昼間でさえ日の光が届かない場所が多かった。

村人たちはわずかな畑を耕し、山から採れる木の実や薬草を頼りに、慎ましく暮らしていた。


けれど、決して豊かな土地ではなかった。

雨が降らなければ作物は枯れ、冬が長引けば食料は尽きる。


そして何より、この村では昔から病が絶えなかった。

医者など、この山奥には滅多に来ない。

病に倒れれば、村に伝わる僅かな薬草と、山の神への祈りだけが頼りだった。


日が沈むと、家々の前には小さな灯がともる。

人々はその灯の前に膝をつき、東の山々へ向かって静かに手を合わせた。


――どうか、今年も冬を越せますように。

――どうか、家族を連れていかないでください。


そんな祈りが、夜ごと山の静寂へと溶けていった。


蘇 静嵐(スー・ジンラン)もまた、その村で生まれ育った娘だった。


艶やかな黒髪は夜の泉のように滑らかで、伏せた睫毛の奥には、深い湖を思わせる静かな瞳がある。

村の中では、彼女の美しさを知らない者はいなかった。


「ジンランは本当に綺麗になったね。」

そう声をかけられることもあった。


けれど本人は、その言葉に小さく笑うだけだった。


自分が美しいなどと、考えたこともない。

彼女にとって毎日は、そんなことを考える余裕すらないほど忙しかった。


朝になれば畑へ出る。

土にまみれた手で作物を育て、日が傾けば山へ入り、食べられる草や薬になる葉を探す。


そして夜になれば、病に伏せる母の枕元に座る。

火鉢にかけた小さな薬鍋から、苦い薬草の匂いが立ちのぼる。


「もう少しだからね、お母さん。」

そう言いながら、彼女は何度も薬を煎じた。


村の娘たちが祭りの日に着飾り、友人たちと笑い声を上げている頃も、ジンランは母の傍を離れなかった。


誰かに誘われても、

「ごめんなさい。今日は母の具合がよくないの。」

そう答えてきた。


やがて、誘われることもなくなった。

それでもジンランは、不満を口にしなかった。


母が生きている。

ただ、それだけでよかった。


自分が何かを諦めているという感覚さえ、彼女にはなかった。

夢を見ることも。

誰かを好きになることも。

そんなものは、自分にはまだ必要のないものだと思っていた。


目の前にいる母を、生かす。

それが、ジンランの世界のすべてだった。


――けれど。

そんな日々にも、終わりは静かに近づいていた。


その夜。


母の容態は、これまでになく悪かった。

青白い唇。

浅く、途切れそうな呼吸。

額には冷たい汗が浮かび、細く痩せた指先が、時折かすかに震えている。


「お母さん…」


ジンランは濡らした布を母の額にそっと当てた。


いつもなら、苦しそうにしながらも何か言葉を返してくれる。

けれど今夜は違った。

何度呼びかけても、母の唇は動かない。


「…お母さん?」


返事はなかった。

胸の奥が、ひどく冷たくなる。


嫌な予感を振り払うように、ジンランは母の手を握った。

驚くほど冷たい。


「お願い…」

声が震えた。

「もう少しだけ、頑張って。」


返事はない。


ジンランは唇を噛みしめた。

泣いている場合ではない。

このままではいけない。


村にある薬草では、もう足りないのかもしれない。


以前、山で薬草を採っていた老人から聞いたことがあった。

東の山深くには、滅多に見つからない薬草がある。

それはどんな病にも効く、と。


ただし、その薬草が生える場所は、人の足がほとんど入らないほど険しい山の奥だという。


昼間でさえ危険な場所。

ましてや、夜明け前に一人で向かうなど無謀だった。


それでも。

ジンランは立ち上がった。


「…待ってて。」

震える声でそう呟き、母の手をもう一度強く握る。

「必ず、薬草を見つけてくるから。」


母からの返事はなかった。

けれどジンランは、返事を待たなかった。


小さな灯火を消し、粗末な外套を羽織る。

そして、まだ夜の闇が支配する家の外へと足を踏み出した。


冷たい夜気が頬を撫でる。

東の山々は、黒い影となって彼女の前にそびえていた。

村の誰もが恐れる、深い山。


それでもジンランは振り返らなかった。


母を救うためなら、どれほど険しい道でも進む。

それだけを胸に抱いて――


彼女は、夜明け前の山へと駆け出した。


山は薄靄に沈んでいた。

夜明け前の空はまだ暗く、東の空の彼方に、ようやく淡い白みが滲み始めている。


冷たい風が山肌を駆け抜ける。

草木は激しく揺れ、その葉先に残った夜露が、月明かりを受けて細かな光を散らしていた。

風は氷の刃のように肌を切る。


そんな山の中を、今にも風にさらわれそうなジンランが歩いていた。


「…どこ?」


ジンランは、震える指で草木をかき分けた。

足元には無数の草が生えている。

けれど、そのどれもが探しているものではない。


目当ての薬草――青露草。

青みを帯びた細い葉と、朝露のような白い花をつける、希少な薬草だった。


村では滅多に見つからない。

けれど、効き目は強い。

病に伏せる母を救うには、この薬草しかないかもしれなかった。


だからこそ、ジンランは一人、険しい山の奥へと足を踏み入れた。

誰も近づこうとはしない山の奥でさえ、ジンランには恐れる理由にならなかった。

彼女が何よりも恐れているのは、この山ではない。

母を失うことだった。


何度も転び、何度も枝に腕を引っかけた。

衣の裾は泥にまみれ、細い指には小さな傷がいくつも刻まれている。

冷え切った足は、もう感覚が薄れていた。


それでも――帰ることはできなかった。


籠の中には、いくつかの薬草が入っている。

けれど、青露草だけがない。


「…お願い。」


ジンランは、また草むらに手を伸ばした。


一本。

また一本。

違う。

これも違う。


探しても、探しても見つからない。


東の空が少しずつ白んでいく。

夜が終わろうとしている。

それが、かえってジンランを焦らせた。


「どうして…」

掠れた声が漏れる。


「どうして、見つからないの…」

その声は、冷たい風にさらわれて消えていった。


ジンランはその場にしゃがみ込み、両手を胸の前で強く握った。


母の顔が脳裏に浮かぶ。

青白い唇。

細く弱い呼吸。

自分の手を握り返す力さえなくなっていた、あの冷たい手。


「お母さん…」


胸が締めつけられる。


もう時間がない。

このまま何も見つけられなければ――


「…お願い。」


ジンランは、祈るように目を閉じた。


「どうか…母を助けてください。」

その声が、森の奥へ消えていく。


けれど。

そのすぐ後ろ。

深い木々の陰に、一人の男が立っていた。


沈 炎冥(シェン・イェンミン)。

彼は、先ほどから何も言わずにジンランを見つめていた。


闇に溶け込むような黒い衣。

月明かりを受けて淡く銀色に輝く長い黒髪。

白磁を思わせる肌。

そして、夜空のような青い瞳。


けれど、ジンランはまだ彼に気づいていなかった。


イェンミンは、木陰から静かに彼女を見ていた。


先ほどから何度も地面に手を伸ばし、薬草を探し続けている。

傷ついても。

疲れ果てても。

諦めようとはしない。


自分のためではない。

母を救うために。


その姿を見つめているうちに、イェンミンはふと、胸の奥に奇妙な感覚を覚えた。

何千年もの間、感じたことのない感覚だった。

不思議だった。


人間など、これまで何人も見てきた。


祈りを捧げる者もいた。

欲にまみれた願いを口にする者もいた。

誰かを憎み、誰かを呪うために山を訪れる者さえいた。


けれど、この娘は違う。


自分が助かりたいのではない。

ただ、母を生かしたい。

その一心で、こんな危険な山にまで入ってきている。


イェンミンの青い瞳が、わずかに細められた。

そして、そのとき。

風が吹いた。


ジンランの黒髪が大きくなびく。

月明かりがその横顔を照らした。

艶やかな黒髪。

夜の泉を思わせる、滑らかな輝き。

伏せた睫毛。

そして、ふと顔を上げたときに見えた瞳は、深い湖のように静かな光を宿していた。


泥に汚れた衣も。

傷ついた細い指も。

疲れの滲んだ顔も。

その美しさを損なうことはなかった。

むしろ、何も飾らないその姿が、ひどく清らかに見えた。


イェンミンは、思わず息を止めた。


――美しい。

そんなふうに誰かを思ったのは、初めてだった。

それは、闇の中に生きる彼にとって、あまりにも不思議な感情だった。


やがてジンランは立ち上がった。


けれど、目当ての薬草は見つからない。

焦りに唇を噛み、もう一度周囲を見回す。


そのとき。

イェンミンは、木陰から一歩だけ前へ出た。

足元の小石が、かすかに音を立てる。


ジンランが振り返った。


「…誰?」


そこに立っていたのは――

夜そのものが人の形をとったかのような男だった。


漆黒の衣が風に揺れる。

長い黒髪が月光を受け、銀の糸のように淡く輝いている。

白磁のような肌。

そして、深い青の瞳。

その瞳は、まるでジンランの魂の奥まで見透かすかのようだった。


ジンランは息を呑んだ。


美しい。

けれど――怖い。

人とは思えない。


思わず一歩後ずさった。


そんなジンランを見つめながら、イェンミンは何も言わなかった。

ただ、手にしていたものを静かに差し出す。


その手の中にあったのは――

青露草だった。

月明かりの下で、白い花が小さく揺れている。


ジンランの瞳が大きく見開かれた。


「…それ…」


イェンミンは、低く静かな声で言った。

「探しものは、これか?」


「…!」


ジンランは、夢でも見ているのかと思った。

あれほど探しても見つからなかった薬草。

それが、目の前にある。


「そ、そうです…」

震える声で答えた。

「それを…探していました。」


恐る恐る近づき、青露草を受け取る。

その瞬間、ジンランの目に涙が滲んだ。


「ありがとうございます。」


何度も頭を下げる。


「母が病気で…」

声が震える。

「この薬草があれば、助かるかもしれないんです。」


イェンミンは黙って彼女を見つめた。

その青い瞳には、何の感情も浮かんでいないように見える。

けれど、ほんのわずかに――その眼差しが柔らかくなった。


「…母を、助けてやりたいのか。」


「はい。」

ジンランは、迷うことなく頷いた。


「母を…どうしても助けたいんです…!」


その言葉を聞いた瞬間。

イェンミンの胸の奥で、何かが静かに揺れた。


先ほど聞いた祈りと同じだった。

母を助けてほしい。

ただ、それだけ。

自分の命ではなく、誰かの命を願う声。


イェンミンは、しばらく黙っていた。


やがて――

その唇が、ほんのわずかに歪んだ。


「…面白い。」


青い瞳が、静かにジンランを見つめる。


「ならば、私が助けてやろう。」


その言葉を聞いた瞬間。

ジンランは、まだ知らなかった。


目の前にいる男が、人の世から離れた闇の神であることも。

その一言が、これから先の彼女の運命を、大きく変えてしまうことも。


ただそのときは――母を救える。

その可能性だけを信じて、ジンランは深く頭を下げた。


ジンランが顔を上げたときには――

すでに、そこにイェンミンの姿はなかった。


「…え?」


慌てて辺りを見回す。

先ほどまで確かに目の前にいたはずなのに。

ただ、夜明け前の山に薄い霧が漂っているだけだった。


風が木々の間を抜け、白い霧をゆっくりと揺らしている。

まるで、最初からそこには誰もいなかったかのように。


ジンランは呆然と立ち尽くした。

――あの人は、どこへ…?


そのとき。

ふと、背後に気配を感じた。

振り返る。

そして、息を呑んだ。


そこに、イェンミンが立っていた。


「…!」


けれど、そこはもう山の中ではなかった。

見慣れた――自分の家の前。


ジンランは思わず言葉を失った。

「いつの間に…」


山から村までは、歩いて一時間近くの距離がある。

それを、この男はほんの一瞬で移動してしまった。

まるで空間そのものを越えたかのようだった。


神業。

いや――

人の身では決して成し得ない、異形の力。

その事実に気づいた瞬間、ジンランの胸に初めて、明確な恐れが生まれた。


けれど、イェンミンはそんな彼女の戸惑いなど意に介さず、家の方へ目を向けた。


「案内しろ。」

短い言葉だった。


ジンランは慌てて頷く。

「は、はい…!」


戸を開ける。


その先には、母がいた。

薄暗い部屋の中。


布団に横たわる母の姿は、山へ出る前と変わらず弱々しかった。

浅い呼吸。

青白い顔。

細くなった身体。


ジンランは胸が締めつけられる思いで、その傍らへ駆け寄った。


「お母さん…」


その声に反応することもなく、母は眠っている。


イェンミンは静かにその傍へ歩み寄った。

そして、母の胸元へ右手をかざす。


「下がれ。」


「…はい。」


ジンランは言われるまま、一歩後ろへ下がった。


次の瞬間。

部屋の空気が、わずかに変わった。


冷たい。

けれど、不思議と恐ろしい冷たさではない。

静かで、深い夜のような空気だった。


イェンミンの掌から、淡い黒い光が滲み出る。

それは闇のように見えた。

けれど、どこか温かく、母の身体を包み込むようにゆっくりと広がっていく。


イェンミンは目を閉じ、低く古の言葉を紡ぎ始めた。

人の言葉ではない。

長い年月の彼方に忘れ去られた、神々の言葉。


一つ。

また一つ。

静かな声が部屋に響く。


すると――

母の浅かった呼吸が、少しずつ深くなっていった。

青白かった唇に、わずかに色が戻る。

冷えきっていた指先にも、少しずつ温もりが戻っていく。


そして――


「…っ」

母の胸が大きく上下した。


それまで苦しげだった呼吸が、穏やかになっている。

まるで、長い悪夢からようやく解放されたかのように。


イェンミンはゆっくりと手を離した。


「…もう大丈夫だ。」


「…お母さん…?」


ジンランは恐る恐る母の手に触れた。

温かい。

確かに、生きている。


「…お母さん…!」


堪えていた涙が、一気に溢れた。

何度呼んでも返事のなかった母が、静かな寝息を立てている。

ジンランはその手を両手で包み込み、何度も頬を寄せた。


「よかった…」


涙が止まらない。


「よかった…本当に…」


母が助かった。

その事実だけで、胸がいっぱいだった。


しばらくして、ジンランは涙を拭い、イェンミンへ向き直った。

そして深く、深く頭を下げる。


「本当に…ありがとうございます。」

声が震えていた。


「あなたは、私の母の命を救ってくださいました。このご恩は、一生忘れません。」


「礼なら要らん。」

イェンミンは淡々と答えた。


「…え?」


「代わりに、一つ頼みがある。」


ジンランが顔を上げる。

イェンミンは、静かな青い瞳で彼女を見つめていた。


「私の弟子となれ。」


「…弟子?」


思いもよらない言葉に、ジンランは目を瞬いた。


イェンミンは続ける。

「お前には、人を癒す力が眠っている。」


「私に…?」


「まだ目覚めてはいない。だが、お前の魂には確かにその力がある。」


ジンランは自分の手を見つめた。


これまで、何か特別な力があるなどと言われたことは一度もなかった。

村では、ただの貧しい娘だった。


母の世話をして。

畑を耕して。

薬草を集めて。

誰かに褒められることも、認められることもない。

それが、自分という人間なのだと思っていた。


けれど――

目の前の男だけは違った。

この人は、自分の中にある「何か」を見つけてくれた。

自分自身でさえ、知らなかったものを。


胸の奥が、じんと熱くなる。


「…教えてください。」


ジンランは、まっすぐにイェンミンを見つめた。


「あなたのもとで、その力を学びたいです。」


イェンミンは何も言わなかった。

ただ、その瞳をほんのわずかに細めた。


そして――

闇の奥で、かすかに笑った。

「…いいだろう。」


ジンランは、ほっと息をついた。

けれど、まだ分からないことがある。

この男は、一体何者なのだろう。

これほどの力を持つ者が、なぜこんな山奥にいるのか。

なぜ自分を助けてくれたのか。


恐る恐る、ジンランは問いかけた。

「…あなたは、いったい何者なのですか?」


しばしの沈黙。

やがて、イェンミンは静かに答えた。

「我が名は――沈 炎冥(シェン・イェンミン)。」


その名が部屋に響く。

「闇を司る神。」


ジンランは息を呑んだ。

「…神…?」


「かつて、人に恐れられた存在だ。」

淡々と告げるその声には、誇りも悲しみもなかった。

ただ、長い年月を生きてきた者だけが持つ、深い静けさがあった。


ジンランの胸に、得体の知れない鼓動が走る。

恐ろしい。

けれど――

なぜだろう。

それと同時に、目の前の男から目を離すことができなかった。


畏れ。

敬意。

そして、言葉では説明できない何か。

それらが入り混じり、静かに胸の奥へ芽吹いていく。


イェンミンは、そんなジンランをしばらく見つめた。

そして、ゆっくりと右手を差し出した。


「ジンラン。」

初めて、その名を呼ぶ。

「私の名において誓え。」


差し出された手のひらには、淡い闇の光が揺らめいていた。


「お前の魂を私に預ける代わりに――」


青い瞳が、静かに彼女を見つめる。


「お前の祈りは、必ず叶える。」

その言葉は、ただの約束ではなかった。


神と人。

決して交わるはずのない二つの存在が結ぶ、古き契り。

一度結べば、簡単には解くことのできない、魂の契約。


ジンランは差し出された手を見つめた。

ほんの一瞬だけ、迷う。


けれど。

その視線は、すぐに母へ向けられた。


穏やかに眠る母。

もう苦しそうに息をすることはない。

母が生きている。

それだけで、答えは決まっていた。


ジンランはそっと手を伸ばした。

そして――

イェンミンの手に、自らの手を重ねた。


「…この命を、あなたに託します。」

小さな声だった。

けれど、その言葉に迷いはなかった。

「どうか…私を導いてください。」


その瞬間。

二人の掌の間に、淡い光が走った。


光は一瞬で二人の身体を包み込み、やがて静かに消えていく。

それと同時に、誰の目にも見えない何かが、二人の魂を結んだ。


闇と光。

神と人。

師と弟子。

異なる二つの魂が、一本の糸によって結ばれていく。


それは、まだ小さく、か細い縁だった。

けれど――

一度結ばれたその縁は、そう簡単には途切れることのないものとなっていった。


この日。

二人の運命は、静かに絡まり始めた。


そして、誰も知らなかった。

この師弟の契りが、やがて師弟という名さえ越え――

二つの魂を、逃れられぬ深き闇へと引きずり込むことになるとは。

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