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傭兵隊長クセノフォン  作者: 世間の果て
第十二章:規律という名の神
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前進する機械の完成

 泥の上で、三百の胃袋が完全に計算を終えた。

 兜の男の死体から流れ出た血は、泥の窪みで冷え固まり、黒いゼラチン状の膜を形成している。風がその表面を撫でる。

 一人の兵士が進み出た。

 男の指先は極度の乾燥で白く粉を吹き、爪の周りの皮膚がささくれ立っている。男は無言のまま、死体の腰に巻かれていた汚れた麻布の帯を掴んだ。引く。死体の重みで布が引っかかる。男は死体の脇腹を泥靴で容赦なく蹴り飛ばし、力任せに布を抜き取った。

 ビリッ。

 繊維の裂ける音。布の裏側には、死体が失禁して漏らした黄色い便のシミがべっとりと付着している。強烈な糞の臭い。だが男は顔色一つ変えず、その便まみれの布を自分の首に何重にも巻きつけた。防寒具だ。体温の放散を防ぐための絶対的な物理バリア。便の臭いより、首の動脈から逃げるわずかな熱量のほうが、今の彼にははるかに切実な問題だ。


「あの死体の肉はどうする」


 禿げ上がったトラキア人の軽装歩兵が、死体の太ももを指差して言った。男の指の第一関節はひどく腫れ上がり、爪の間に黒いノミの死骸が挟まっている。なぜ死んだノミを放置しているのか。爪で弾き飛ばせばいい。無意味なノミの死骸のシルエットがクセノフォンの網膜にべったりとこびりつき、彼の胃酸を猛烈に逆流させる。


「置いていけ」


 クセノフォンの声帯が勝手に振動する。


「壊れた部品の肉は腐っている。食えば腸が裏返って、下から内臓をぶちまけるぞ」


 トラキア人は舌打ちをし、黄色い痰を死体の顔面に吐き捨てた。痰は死体の開いた右目の眼球に命中し、濁った角膜の上をゆっくりと滑り落ちた。カロリーの無駄遣いだ。だがそれも、未練を断ち切るための儀式にすぎない。彼らは食肉への執着を捨てた。


 クセノフォンは右手の短剣を鞘に戻す。

 刃にこびりついた黄色い皮下脂肪の塊が、鞘の口の真鍮部分で削り取られ、泥の上にボトッと落ちた。

 脂肪の塊。

 蟻がいれば運ぶはずだ。だがこの冷え切った泥の底に蟻はいない。脂肪はただ土に吸収され、無意味な炭素へと分解されるだけだ。


「歩け」

 喉の奥の軟骨をすり減らして、クセノフォンは音を出す。命令ではない。ただの起動スイッチ。

 三百の肉の塊が、一斉に向きを変えた。

 彼らの動きに連動し、後方の窪地で待機していた九千七百の生体部品たちも、伝達された振動を受信して一斉に腰を上げる。冷え切った膝の関節が一斉に軋む。巨大な木造船が嵐の中で悲鳴を上げる不快な合唱。

 一万のサンダルが泥を踏み込む。

 ズン。

 ズズチュ。

 地鳴り。

 一定のリズム。左、右、左。

 クセノフォンの脳髄が、その振動を直接拾う。凍りついた脳のシワの間に、重低音が容赦なく叩き込まれる。靴底が泥を剥がす粘着音。

 この群れを支配するのは、もはやアテネの法でもゼウスの雷霆でもない。前へ進むという純粋な物理的強制力。

 クセノフォンは一歩を踏み出す。

 左足の親指の付け根。昨日できた水ぶくれがある。歩くたびに硬い革のサンダルの中で皮が引き伸ばされ、中の体液が移動する。その不快な摩擦が、クセノフォンの意識のすべてを占領する。

 右足。また左足。

 パチン。

 水ぶくれが破れた。熱い液体がサンダルの中で指の間に広がる。痛い。

 痛覚。

 生きている証拠ではない。ただのセンサーの誤作動だ。脳の回路が痛みを無視するよう即座に設定を書き換える。

 靴紐が緩んでいる者がいる。三列目の左から二番目。クレタ人の弓兵。紐の端が泥を引きずり、泥の重みで団子状に膨れ上がっている。なぜ結び直さない。踏んで転べばいい。転べばただの肉の塊として泥に沈むだけだ。誰も助けない。後ろの列がその顔面を青銅の脛当てで踏み潰して前進する。

 それがこの機械の仕様だ。


 完全な機械。

 クセノフォンが再起動させた、一万個の歯車を持つ巨大なムカデ。

 このムカデは、群れの内部に発生した自己崩壊のバグを、クセノフォンという冷酷な制御装置の刃によって見事に切除した。余分な感情、恐怖、道徳。すべてをあの泥の上の死体とともに置き去りにした。

 村の倉を探し、麦を食い尽くし、ただ北を目指す。

 海。

 タラッタ。

 まだ塩の気配は微塵もしない。鼻腔を満たすのは、密集した肉から発散されるアンモニアと酢の腐った臭いだけだ。

 太陽は灰色の雲の裏側に張り付いたまま、無感情に一日の光量を消費している。

 クセノフォンは右手を振る。左足を出す。

 呼吸。胃の収縮。

 前進する。

 それ以外の機能は、完全に削除された。

 どこまでも続く泥の斜面に、一万の足跡が暴力的な黒い帯を刻み込んでいく。

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