ラコニズムとの醜悪な野合
灰色の空から、ひび割れた大地へ向かって重たい冷気が沈み込んでくる。
風は止んでいる。前方を歩くケイリソポスの背中が、ただの巨大な肉の壁としてクセノフォンの視界を塞いでいた。
スパルタから派遣された将軍。彼の分厚い胸板が、すり切れた革鎧の隙間から不格好にはみ出している。左の大胸筋を斜めに走る太いミミズ腫れ。古い剣の傷跡。その傷跡の周囲だけ、皮膚の毛穴が異様に拡大し、赤黒い皮脂と埃がべったりと詰まっている。クセノフォンは歩きながら、その皮脂の黒ずんだ点列からどうしても目を逸らすことができなかった。無意味な細部への固執。見れば見るほど胃液がせり上がってくる。だが直視し続ける。
ケイリソポスは喋らない。声帯を持たない生物の振る舞い。
彼は右手をかすかに上げ、顎を前方にしゃくる。
ミリッ。
極度に発達した首の筋肉の奥で、頸椎の軟骨が軋む鈍い音が鳴った。声を使わず、骨の摩擦音だけで部下に前進のタイミングを指示する。歩く肉塊。ラコニズム。思考を極限まで削ぎ落とし、国家の命令を受信するだけのアンテナと化した完全な歯車だ。
クセノフォンは手元の槍の柄を強く握り直す。
手のひらの汗が松脂と混ざり、古い木目に張り付く。指を離そうとすると、皮膚が濡れた革に吸い付く手応えで、ネチャッという卑猥な音を立てる。不快だ。だが、この粘り気が槍を落とさないための唯一の接着剤となる。
「アテネ人は無駄口が減らない。舌で敵を刺すのか」
ケイリソポスが、口の端だけをわずかに歪めて音を出した。言葉ではない。喉の奥に溜まった乾いた痰を吐き出す前の、ひどく擦れた排気音だ。
「スパルタ人は脳髄まで筋肉に置き換えた」
クセノフォンは、自分の胃袋が冷たく収縮するのを感じながら答える。
「ちょうどいい。俺が考えるから、お前が殴れ。それなら両手両足が揃う」
ペロポネソス内戦。アテネの理性と、スパルタの沈黙。ほんの数年前まで、互いの内臓を引きずり出して野犬に食わせようと血で血を洗った憎悪の記憶。
それがなんだ。
この赤茶けた荒野では、都市の理念など、すり減ったサンダルの裏にこびりついたヤギの糞の価値すらない。
クセノフォンが計算し、進行ルートの村を特定する。ケイリソポスが顎をしゃくり、前衛の筋肉の塊どもが村の柵を蹴り破り、老人の頭を石で叩き割る。
完璧な野合だ。
アテネの知性は、スパルタの暴力を最も効率よくカロリーに変換するためのナビゲーションシステムに成り下がった。そしてスパルタの誇り高き沈黙は、アテネ人の策謀の下で他人の麦を奪うための、純粋な打撃器官に落ちぶれた。
クセノフォンの内奥で、ぞわりとした悪寒と、強烈な快感が同時に這いずり回る。
互いに軽蔑し合っている。隣で息をするだけで猛烈な吐き気がする。ケイリソポスのあの分厚い唇が動くたびに、クセノフォンはこめかみの血管が破裂する寸前の痛みを覚える。
だが、あの太い首が動き、軟骨が鳴るたびに、確実にペルシャ兵の死体が積み上がり、自分たちの胃袋に新しい肉が詰め込まれる。生存の確率が跳ね上がる。
その冷酷な事実が、クセノフォンの卑屈な自尊心を奇妙に満たしていく。俺がこの筋肉の化け物を操っている。スパルタの最高傑作を、ただ肉を叩き切る斧として振り回している。
理念の凌辱。これ以上の悪趣味な喜劇があるか。
前衛が止まった。ペルシャの斥候の影。
ケイリソポスが再び無言で顎をしゃくった。
ミリッ。
前衛が一気に駆け出す。一万のサンダルが凍った泥を踏み砕く。
クセノフォンは槍の柄の粘り気を手のひらに押し付けたまま、ケイリソポスの後ろ姿に冷たい視線を投げた。傷だらけの背中。あの筋肉の鎧のどこに短剣を突き立てれば、一番早く呼吸を停止させられるか。思ったが、すぐに忘れた。今はまだ、この便利な斧の刃こぼれを心配する段階ではない。
巨大な生体機械。二つの相反する都市の残骸が、ただ生き延びるという最低の目的のためだけに、グロテスクなキメラを形成して北を目指す。風が向きを変え、ケイリソポスの汗の饐えた臭いをクセノフォンの鼻腔の奥深くまで押し込んできた。彼はそれを肺の底まで吸い込み、胃の痙攣を強引にねじ伏せた。歩行のペースを上げる。靴底の石が削れる音が、また一つ荒野に響いた。




