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異世界転生した俺は資産50億円を使い切りたいのに、リターンのせいで全然0にならない  作者: 鏡まやたか
第2章 ガルドリア王国編

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第30話 非戦闘員レイ

バルガが倒れた直後、会場の空気は完全に変わっていた。


先ほどまでの熱狂は消え失せ、代わりに張り詰めた緊張と理解できないものへのざわめきが広がっている。


その中心で――国王が静かに怒りを滲ませていた。


「……馬鹿が」


低く吐き捨てる。

その視線が、次の出場者へと向けられる。


「ゼルド」

「はっ」

「――分かっているな」


とてつもない圧。

それは命令というよりも絶対の宣告に近かった。


「……もちろんです」


ゼルドは静かに頭を下げ、そのまま闘技場へと歩み出る。


「――次鋒戦」


審判の声が響く。


「レイ対――ゼルド!!」


歓声が再び巻き起こる。

だが、その熱は先ほどとは少し違っていた。


ゼルドはゆっくりとレイの前へ立つ。

不気味な笑みを浮かべながら。


「……俺の相手は、お前か」


じっと観察するような視線。


「戦えるのか?」


その問いに、レイは肩をすくめた。


「さあな」


曖昧な返答。

だが、その態度が、逆にゼルドの警戒心を刺激する。


「……はじめッ!!」


合図と同時に――

ゼルドが腕を払った。


瞬間、紫がかった液体がレイに向かって飛んでくる。


「っ!」


レイは即座に跳躍し、それを回避する。


(毒……!)


事前に聞いていた情報通りだ。


(毒使いのミレアって考えると、やっぱり怖いな……)


着地と同時に距離を取る。


だがゼルドは追撃の手を緩めない。

指先から放たれる、細く鋭い飛翔体。


「――毒針」


それが雨のように降り注ぐ。


「チッ……!」


レイはそれを紙一重で躱し続けるが、その手数に思わず表情が歪む。


(多すぎるだろ……!)


だが――踏みとどまる。


(昨日、回避の特訓しておいてよかったぜ……!)


ゼルドは、目を細めていた。

見た目はどう見ても戦闘向きではない。


だが、避け方が妙に洗練されている。


(……まだ探るか)


さらに毒を撒く。

空間を制圧しながら、じわじわと追い詰める戦法。


その時だった。

レイが――剣を構えた。


「……?」


ゼルドの眉がわずかに動く。


(剣……?)


その構え。

どこか、見覚えがある。


(……サーニャと同系統か?)

(だとすれば、侮れない)


ゼルドも構えを変える。


だが、レイの剣は――当然はったりだった。


そして次の瞬間。

レイは一歩、踏み込む。


「……それ以上動くな」


低く、静かな声。

剣先がゼルドを捉える。


「ガルムのように両断されたくなければな」


空気が変わる。

ゼルドの喉が、ごくりと鳴った。


(……ブラフか?)


だが、否定しきれない。


(情報が……足りない)


踏み込めない。

その一瞬の停滞が、場の流れを変えた。


「何やってんだ!!」

「さっさとやれ!!」


観客席から怒号が飛ぶ。

その圧に呼応するように――


「……ゼルド」


国王の声が響く。


「どうせ張ったりだ。終わらせろ」


逃げ場はない。

ゼルドの額に汗が滲む。


(……クソが)


覚悟を決める。


(どうせなら――やるしかない!)


「――毒霧(ポイズンカーテン)


瞬間、フィールド全体が毒霧に包まれた。

視界が奪われる。


そして――

ゼルドの姿が消える。


「……っ」


レイは口元を押さえながら、周囲に神経を集中させる。


(来る――)


次の瞬間。

背後から鋭い痛みが走った。


「ぐっ!!」


毒針。


反射的に振り向き、剣を振るうが――

そこにはもう、何もいない。


刺される。


逃げられる。


また刺される。


それが繰り返される。


じわじわと、確実に削られていく。


「……はっ、は……」


呼吸が乱れる。


足が重い。


やがてレイは膝をついた。


その瞬間、霧の中から、笑い声が響く。


「……終わりだ」


姿を現すゼルド。


「お前はもう、毒に侵されている」


ゆっくりと歩み寄る。


「俺に一撃も与えることなく死んでいく」


審判が手を上げる。


「勝者――」


その時だった。

レイが、立ち上がり苦笑いする。


「……効かないな」


ゼルドの目が見開かれる。


「……何?無理するな。もうすぐ動けなくなる」


だがレイは、痛みに耐えるような表情を見せながら立っている。


「レイ!!」


観客席からサーニャの声が響く。


「もういいよ!!」


レイは――笑った。


「ああ……そうだな」


肩の力が抜ける。


「お前の言う通りだ。……毒も、効いてきた」


ふーっと大きく息を吐いた。


「――降参だ」


一瞬の硬直。

そして、審判の震える声。


「……勝者、ゼルド!!」


ざわめきが爆発する。


「はあ!?なんだよそれ!!」

「最後までやれよ!!」


怒号と罵声。


だがレイは、どこ吹く風だった。


「はいはい。いいだろ、俺は負けたんだ」


軽く手を振る。


「これでイーブンだ。喜べよ」


そう言いながらレイは、自分の身体に刺さっていた毒針を一本、抜き取った。


そして、服をめくるとそこにあったのは――

金貨と銀貨で覆われた、防護層だった。


「な……!?」


ゼルドの目が見開かれる。


「なんだそれは……!」

「ああ、これか?」


お腹を軽く叩く。


「俺専用の鎧だ」


ゼルドの顔が歪む。


「じゃあな」


レイは背を向ける。

そのまま、ゆっくりと仲間の元へ戻っていく。


「……間に合ったんだな」


サーニャは小さく呟く。


「なら、あとは任せた」


次は――大将戦。

ここまで読んでくださりありがとうございます。

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